外来に来なくなる人について

外来に通わなくなる人について考える

――続けることの意味と医師と患者の約束

はじめに

はじめに

外来診療という場は、患者と医師が対等な立場で「約束」を交わし、心身の健康を支えていくための大切な時間です。しっかりと通い続けることで、医師が患者を継続的にマネジメントし、大きな症状の悪化を防ぐことができます。しかし現実には、外来に通わなくなる人も少なからず存在します。本稿では、外来に通わなくなる理由や背景、その影響、そして継続して通うことの意義について、考えてみたいと思います。

外来に通わなくなる理由とは

外来に通わなくなる理由とは

外来通院をやめる人には、さまざまなパターンがあります。

1. 「卒業」として通わなくなる場合

症状が安定し、医師から「これで治療は一区切りです」と伝えられる場合です。しかし、卒業という区切りを明確にしてしまうと、再び体調が悪化した際に受診しづらくなることがあります。そのため私は、たとえ調子が良くても「一応次の予約を取っておきましょう。体調が良ければ来なくても大丈夫、悪ければぜひ来てください」とお伝えするようにしています。これにより患者さんは安心して次の一歩を踏み出せるのです。

2. 診療に対する不満

いつの間にか通院をやめてしまう人の多くは、診療に不満を抱いています。具体的には以下のようなケースが考えられます。

医師の話し方やキャラクターが合わない

薬の副作用がつらい

通院を続けても症状が改善しないと感じる

現代の精神科薬には必ず副作用があり、そのバランスを見極めることが治療の要です。しかし、副作用のつらさを医師にうまく伝えられず、我慢の限界を迎えて通わなくなる方も少なくありません。特に気遣いの強い患者さんほど、副作用について「先生に言いにくい」と感じてしまう傾向があります。

3. 生活習慣や病気の重さによる影響

病気自体が重い場合や、生活習慣の改善が難しい場合もあります。「変わりたい」と思っても実際に行動へ移せないことはよくありますし、それは能力や性格の問題ではなく、病気の特性そのものが影響していることも多いのです。また、人の言葉を受け入れるのに時間がかかる方もいます。そのような患者さんにとって、変化は一朝一夕で得られるものではなく、長期的なサポートが欠かせません。

精神疾患と身体疾患の違い

精神疾患と身体疾患の違い

精神疾患が他の慢性疾患と異なる点の一つは、数値や画像に現れにくいことです。例えば糖尿病では、毎月の血液検査で「ヘモグロビンA1c」という指標が明確に示されます。患者は薬や食事療法、運動療法の効果を数値で実感できるため、治療行動にフィードバックが働きやすいのです。

一方、精神疾患は大脳の複雑なネットワークの乱れによって生じるため、「検査結果で一目瞭然」という形にはなりません。動物実験の成果も、そのまま人間に当てはめることは難しいのです。この「見えにくさ」が、患者にとって治療の効果を実感しにくく、通院をやめる一因になっているとも考えられます。

突然通わなくなる人の特徴

突然通わなくなる人の特徴

外来をやめる人は、診察室ではにこやかに過ごしていることが多いものです。表面上は問題なく会話を交わしていても、本音をぶつけられないまま通院を終え、ある日突然来なくなるケースがあります。その背景には、

診療に対する不満を伝えられなかった

困りごとを話せなかった

医師と患者との関係が十分に築けなかった

といった事情が隠れているのです。

場合によっては、本人は診察室では何も言わず、SNSや友人には「医者が合わなかった」と吐露していることもあります。つまり「通わなくなった」というよりも「言えない思いを抱えたまま終わってしまった」と捉えるべきでしょう。

不満を少しずつ伝えることの大切さ

不満を少しずつ伝えることの大切さ

通院を続けるうえで重要なのは、大小問わず不満をその都度伝えることです。

薬を飲んだら口が渇いた

便秘がつらい

調子が良くなったと思ったら再び落ち込んできた

こうした小さなことを「ちょっと聞いてください」と気軽に主治医に話すことで、治療の軌道修正ができます。不満を溜め込んでしまうと、ある日突然「もう行かない」となってしまいがちです。小さな不満をこまめに伝えることが、通院を続けるコツであり、結果的に大きな崩れを防ぐことにつながります。

通院を続けることの意義

外来にしっかり通うということは、常に医師が患者をマネジメントし続けている状態を意味します。この継続的なサポートがある限り、入院や急激な悪化に至る可能性は大幅に下がります。逆に言えば、途中で通院をやめてしまうことでリスクが高まるのです。

患者と医師は「対等な人間同士」として約束を交わしています。その約束を守りながらコツコツと通い続けることが、長期的な安定につながるのです。

おわりに

外来に通わなくなる人がいる背景には、病状の改善、不満の蓄積、生活習慣の困難さなど、さまざまな要素があります。しかし、通院を継続することが患者の生活を安定させ、大きな悪化を防ぐ最も確実な方法であることは間違いありません。

だからこそ、患者さんには「小さな不満もぜひ医師に伝えてください」とお伝えしたいのです。ちょっとした不快感や疑問でも構いません。それを共有することで治療はより患者さんに合ったものになります。医師はその声を受け止め、共に歩んでいく存在です。

「しっかり通う」ことは、決して義務感だけのものではありません。それは、自分自身の健康を守るための積極的な選択であり、医師と患者が交わす信頼の証でもあるのです。