兄弟姉妹の間で「自分だけ扱いが違う」「兄(姉)ばかり優遇されていた」「妹(弟)だけ可愛がられていた」といった感覚を持つ人は少なくありません。外来診療の現場でも、こうした兄弟間・姉妹間の“格差”をトラウマ的な経験として抱え、長年苦しんでいる方はしばしば見受けられます。
では、何故このような格差が生じるのでしょうか。また、親の立場や子どもの立場から、その背景をどのように理解すれば良いのでしょうか。
本稿では、兄弟間・姉妹間格差の構造を整理しながら考えていきます。

例えば、3人きょうだいの第1子として育った男性の話を取り上げてみましょう。
彼自身は現在、3人の子どもの親でもあります。子ども時代を振り返ると、弟や妹に比べて特に恵まれなかったという思いは強くありません。しかし、1つの印象として「妹の方が色々買ってもらっているように感じた」と述べています。
この背景には、親のライフステージの変化があります。彼の幼少期、両親はまだ若く、駆け出しの会社員で経済的にも余裕がなく、狭い社宅での生活を余儀なくされていました。ところが、10歳以上年の離れた妹が生まれた頃には、両親はある程度の経済的基盤を築き、一軒家に住むようになっていました。つまり、同じ親であっても、兄と妹とでは「見ている風景」が全く異なるのです。
本人は親の扱いに不公平さを強く感じたわけではありませんでしたが、親になってみて「自分の子どもたちには平等に接したい」と自然に考えるようになったと語っています。

多くの親は「子どもを平等に育てたい」と願っています。社会的にも「親は子どもを平等に扱うべきだ」という価値観が根強く存在します。そのため、親自身も「公平に接しているつもりだ」という意識を持つことが多いのです。
しかし、実際には子どもたちが「不公平だ」と感じる場面が少なくありません。
親が「同じように接している」と思っていても、子どもがどう受け止めるかは別問題だからです。また、同じ夫婦から生まれた兄弟姉妹を「同じ条件で育てている」と考える親は、成績や性格に差が出てくると「できない子はサボっているのではないか」「性格が悪いのではないか」といった誤解に陥りやすくなります。

ここで重要なのは、兄弟姉妹といえども全くの別個体であるという事実です。
つまり、「同じ親から生まれたから同じように育つはず」というのは誤った期待です。
更に、親自身の状況も年齢や職業、経済状態、精神的な余裕によって変化していきます。10年前の自分と今の自分が同じでないのと同様に、子育てのスタイルや関わり方も時間と共に変化していきます。その結果、兄弟姉妹間で育て方や経験に差が生じるのは自然なことなのです。

子ども側からすると、「自分だけ愛されていない」「兄弟姉妹と比べて冷遇されている」と感じることがあります。これが長く残ると、劣等感や被害感情、更にはトラウマに繋がることもあります。
しかし、冷静に考えれば、親が兄弟姉妹を全く同じように愛することは極めて難しい要求です。例えば、クラスに20人の子どもがいたとして、全員を同じように愛することはできません。それと同じで、兄弟姉妹であっても1人ひとりに対する愛情の形は異なるのです。
つまり、「平等に愛されたい」という願いは理解されるべきものですが、実現は難しいという現実があります。愛情の差が「不公平」として強く意識されると苦しみに繋がりますが、それは必ずしも親の怠慢や偏見だけが原因ではなく、子ども自身の特性や状況の違いが背景にあるのです。

兄弟間・姉妹間格差は、親の意図や努力だけでは完全に避けられないものです。
重要なのは、「格差はあって当然」という前提を持つことです。そのうえで、親は子ども1人ひとりの個性に合わせて関わろうとする姿勢が求められますし、子ども側も「不平等=愛されていない」ではなく、「それぞれの愛情表現が違う」と理解することが大切です。
兄弟間・姉妹間格差に悩む方にとって、この視点が少しでも心の整理や安心に繋がれば幸いです。