私たちの生活の中で「怒り」という感情は避けて通れません。
職場での人間関係、家庭でのやり取り、友人とのちょっとした行き違い…。誰でも一度は「カッとした」「思わず強い言葉をぶつけてしまった」という経験があるのではないでしょうか。
怒りそのものは悪い感情ではありません。本来は自分の身を守るためのサインでもあります。しかし、怒りに任せて行動すると、大切な人間関係を傷つけてしまうこともあります。そんな時に役立つのが「アンガーマネジメント」、つまり怒りのコントロールの方法です。
今回は、特に親子や上司部下といった立場で起きやすい「怒り」の場面を例に挙げながら、実践できるコツを考えてみたいと思います。

大人同士の関係では、怒りを感じても「言い返されたらどうしよう」「関係が悪くなったら困る」といった気持ちが働いて、ある程度の歯止めがかかります。たとえば職場で上司に腹が立っても、面と向かって強く反論することは少ないですよね。
一方で、親子関係では状況が違います。子どもは基本的に親に反撃してこないため、親の怒りがそのままぶつけられやすいのです。勉強を見ている時、生活習慣を注意する時、思わず強い言葉や態度で接してしまう…。こうした経験をお持ちの方は少なくないはずです。
怒った後に冷静になると、「言いすぎた」「やりすぎた」と反省し、子どもに謝る親御さんも多いでしょう。けれども、繰り返される強い叱責は、子どもにとっては大きな負担となります。だからこそ、親が怒りをコントロールする方法を学ぶことが大切なのです。

怒りの感情は永遠に続くものではありません。実は、多くの場合「5〜10分ほど」で気持ちは落ち着いてくると言われています。つまり、その短い時間をうまくやり過ごせるかどうかがポイントになります。
例えば、子どもが宿題をやらずにゲームをしている場面を想像してみてください。カッと頭に血がのぼる瞬間はありますが、そこで一旦席を外し、深呼吸をしたり、別の場所で気持ちを吐き出したりすれば、10分後には冷静に話し合える可能性が高まります。
「その場から離れる」ことができれば、怒りのピークをやり過ごすのに効果的です。逆に、怒りの対象である相手を目の前にしたまま冷静になろうとするのは至難の業です。感情の力は理屈を簡単に押しのけてしまうからです。

怒りはいつも同じような場面で起こります。人によって違いはありますが、実際には2〜3種類のパターンが多いものです。
たとえば…
こうした「怒りのスイッチ」が押されやすい状況を事前に整理しておくと、冷静さを保つ助けになります。
さらに、余裕があれば「練習」も効果的です。たとえば、専門家や信頼できる人に子ども役や部下役をしてもらい、わざと自分をイライラさせるようなやり取りをしてみます。実際にやってみると「こんなことで腹を立てていたのか」と気づけることもあり、怒りを客観的に見るきっかけになります。もちろん、練習したからといって完全に怒りを防げるわけではありませんが、怒りのスイッチが入りにくくなる効果は期待できます。
怒りを抑える方法はたくさん提案されていますが、シンプルで効果的なのは次の2つです。
怒りをぶつけられる側――子どもや部下――の立場にも目を向けてみましょう。怒られた経験は思っている以上に心に残ります。場合によっては「嫌な記憶を心の奥にしまい込む」「周囲の声をシャットアウトする」といった方法でやり過ごす人もいます。
こうした対処法は、一時的には自分を守る助けになりますが、繰り返されると人との関わり方に影響を及ぼしかねません。だからこそ、怒りをぶつける側の私たちが意識してコントロールすることが大切なのです。

怒りは誰にでもある自然な感情です。しかし、その感情に流されると、大切な相手との信頼関係を傷つけてしまうことがあります。特に親子や上司部下の関係では、一方的に怒りがぶつけられる構造になりやすいため、より慎重な対応が求められます。
アンガーマネジメントで大切なのは、
この2つを実践するだけでも、日常の人間関係はずっとスムーズになるでしょう。
怒りをなくすことはできません。しかし「怒りとどう付き合うか」を工夫することは誰にでも可能です。日常のちょっとした場面で実践してみることで、自分も相手も心地よく過ごせる時間が増えていくはずです。