
皆さんはクリニックに行った際に、「プラセンタ注射できます」「ビタミン注射あります」といった張り紙を目にしたことはありませんか。内科や皮膚科、整形外科、さらには精神科といった、一見美容とは関係のなさそうな診療科でも、美容にまつわる治療やサービスが提供されていることは少なくありません。
いま、美容医療は専門の美容クリニックだけでなく、街の小さなクリニックでも広がりを見せています。その理由には、人々の「もっと元気になりたい」「少しでも若々しく見られたい」「疲れを和らげたい」といった気持ちと、クリニック側の事情の両方が関係しています。
本記事では、身近なクリニックでなぜ美容医療が行われているのか、その背景や人々の心理について丁寧に考えてみたいと思います。

美容医療と聞くと、整形手術や美容皮膚科を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、もっと手軽に受けられるメニューもあります。
こうした施術は保険がきかないため、全額自己負担になります。例えばプラセンタ注射なら1回3000円前後が相場です。

一番大きな理由は、やはり「ニーズがある」ことです。
例えば精神科に通院している方が「診察のついでにお肌のケアもしたい」「疲労回復の注射を受けたい」と希望することがあります。また、薬の影響で体重が増えた方が「痩せるための注射を試してみたい」と思う場合もあります。
美しくありたい、若々しくありたい、疲れを少しでも減らしたいという気持ちは、年代や性別を問わず多くの人が持っています。そのため、クリニックが通常の診療と並行して美容メニューを取り入れるのは、患者さんの希望に応える一つの方法だといえるでしょう。

美容医療が広がる背景には、クリニックの経営的な事情もあります。
通常の診療は健康保険を利用するため、患者さんの負担は1~3割程度です。残りは国や自治体から支払われますが、この手続きは複雑で、実際にお金が入るのは数か月後になることもあります。さらに、後から審査を受けて返金を求められるケースもあります。
一方、美容医療のような自由診療は、患者さんがその場で全額支払います。後から返金を求められることもなく、監査も入りません。例えば精神科の診察料が1回5000円だとしたら、そこにプラセンタ注射を追加するだけで売り上げが1.5倍になります。
つまり、患者さんにとって「美しくなれる」「元気が出る」というメリットがあり、クリニックにとっても安定した収入源となる。双方にとって都合のよい「ウィンウィン」の関係が成り立っているのです。
ここで興味深いのは、人が「病気を治すためのお金」よりも「美しくなるためのお金」を出しやすい傾向があることです。
病気を治すためのお金は「マイナスをゼロに戻すための支出」と言えます。例えばカウンセリングや薬代などです。一方、美容医療にかけるお金は「ゼロをプラスに変えるための支出」。つまり、元気な状態からさらに良くなるための投資です。
多くの人にとって、「マイナスをゼロに戻すこと」よりも「ゼロをプラスにすること」の方が前向きで楽しい感覚があり、お金を出しやすいのかもしれません。
これは日本社会の特徴でもあり、「なぜ人は美容にはお金を惜しまないのに、心のケアにはお金を使いにくいのか」という大きな問いにもつながります。

実際に、美容医療を受けたことで気分が明るくなる人は少なくありません。
特に精神科に通う方の中には、薬の影響で太りやすくなってしまう人もいます。そうした場合に痩せるための注射を取り入れるのは、生活の質を高める一つの方法と言えるでしょう。
美容医療に対しては「ぜいたくではないか」といった否定的な意見もあります。しかし、実際には「肌がきれいになって気分も明るくなる」「体が軽くなって生活が楽しくなる」といった効果を感じる人も多くいます。
もちろん、長期的に見て体に悪影響を及ぼすものは避けるべきです。しかし、プラセンタ注射やビタミン注射、痩せ薬のように安全性が確認されている範囲であれば、前向きに活用していく価値はあるでしょう。
お金に余裕のある人であれば、自分への投資として取り入れるのも一つの選択肢です。

いまや美容医療は特別なものではなく、街のクリニックでも受けられる身近な存在になっています。その背景には、人々の「もっと美しくなりたい」「元気になりたい」という強い願望と、クリニックの経営上の理由がありました。
美容医療は、単なる見た目の改善にとどまらず、心の健康や生活の質にも良い影響を与えることがあります。病気を治すことと同じくらい、あるいはそれ以上に「自分をより良くしたい」という思いは強く、多くの人がお金をかけるのです。
今後も、美容医療がどのように広がり、どのように私たちの生活に影響を与えていくのか。その動向を見守ることは、医療の未来を考える上で大切な視点になるのではないでしょうか。