精神科の入院には、本人の希望で行われるものから、本人の意思に反して行われるものまで、いくつかの種類があります。なかでも「強制入院」は、本人の自由を制限するため非常にデリケートな問題です。しかし同時に、本人や社会の安全を守るために欠かせない制度でもあります。ここでは、制度の仕組みと現場での実際、そして課題について、できるだけわかりやすく解説します。

まず、精神科の入院は大きく3つに分けられます。
この3つに加えて、短期間だけ入院させる「緊急措置入院」「応急入院」もあります。

強制入院が認められるのは、次の条件がそろったときです。

例えば、肺炎を患っているのに「入院は絶対しない」と拒否しているケース。
採血データに異常が出ていたり、体重が急激に減っているといった医学的証拠があれば、入院の必要性ははっきりしています。
こちらは少し判断が難しい部分です。
このように、地域で普通に生活するのが困難な状態であることが条件となります。
重要なのは、「一人の人が訴えているだけでは不十分」という点です。
例えば、家族が「もう手に負えないから入院させてほしい」と言っても、それだけでは強制入院はできません。
なぜなら、もし家族や近隣住民が悪意を持って「この人はおかしい」と嘘をついた場合、無実の人が強制的に入院させられる危険があるからです。
そのため、判断には必ず 複数の立場からの証言や記録 が必要です。
こうした情報を組み合わせて「誰が見ても地域生活が難しい」と認められる状況が整って、はじめて強制入院の根拠になります。
また、その状態が「昨日今日のこと」ではなく、数か月以上続いていること も重要です。
強制入院の決定には、書類が欠かせません。
と呼ばれる書類が使われます。そこには「なぜ入院が必要なのか」という理由を詳しく書き込まなければなりません。
このとき、医師は必ずしも現場(例えばゴミ屋敷)を直接見に行けるわけではありません。
そのため、警察や保健師の報告がとても重要な役割を果たします。
強制入院は、本人にとっては「自分の意思に反して自由を奪われる体験」です。
場合によっては、暴れてしまう人を安全に入院させるため、注射で眠らせることもあります。
その一方で、もし入院させなければ、本人の命が危険にさらされたり、地域社会に深刻な被害が及ぶこともあります。
つまり強制入院は、「人権」と「安全」のバランスをとるための、最後の手段なのです。
・ゴミ屋敷問題
本人には病気の自覚がなく、片付けを拒否。
近隣が耐えられない臭いや害虫被害に苦しみ、何度も苦情や通報が寄せられる。
・警察沙汰の繰り返し
夜中に奇声を上げ、近所が通報。
警察が来ると一時的におとなしくなるが、また繰り返す。
・身体の異常を放置
肺炎や糖尿病の悪化が明らかでも、「自分は大丈夫」と入院を拒否する。
これらはどれも、医療保護入院や措置入院の対象になりやすいケースです。

精神科の強制入院は、決して軽い判断で行えるものではありません。
これらがそろって、初めて強制入院は認められます。
そして、その背景には「本人の命を守ること」と「地域の安全を守ること」という二つの目的があります。
自由を制限するという厳しい側面がある一方で、本人や社会を守るために必要な制度でもあるのです。