開業医と勤務医の違いについて

開業医と勤務医の違いについて

開業医と勤務医の違いを知る ― それぞれの役割と実情

医師にかかる際、病院で診療を受けることもあれば、地域のクリニックを利用することもあります。その際に診てくださるのが「勤務医」と「開業医」です。しかし、患者の立場からすると、どちらも「お医者さん」であり、大きな違いを感じることは少ないかもしれません。では、両者の違いとは一体どのようなものなのでしょうか。本稿では、患者からの視点と医師の視点の両面から、開業医と勤務医の違いについて考えていきたいと思います。

患者から見た違い

患者から見た違い

クリニックでは、基本的に同じ医師に継続して診てもらえることが多いのが特徴です。地域に根ざした医療を提供しており、患者にとっては「かかりつけ医」として安心感がある存在です。ただし、中には複数の医師が交代で診療を行っているクリニックや、非常勤医師を中心に回しているクリニックもあります。

一方、病院では診療にあたる医師が頻繁に変わることも珍しくありません。病院は規模が大きく医師の数も多いため、どうしても主治医が異動したり交代したりするケースが生じます。しかしその分、入院施設が備わっていたり、検査機器や手術設備が整っていたりと、高度で包括的な医療を受けられる安心感があります。

患者側からすると、診療を受ける場としての利便性や安心感に違いはあるものの、「開業医」「勤務医」という区分を強く意識することはあまりないかもしれません。

医師から見た違い

医師から見た違い

ところが、医師自身の立場から見ると、開業医と勤務医はまったく異なる職種といっても過言ではありません。

医師のキャリアは、まず医学部に入学し、6年間の学びを経て卒業するところから始まります。その後、保険診療を行うためには2年間の初期臨床研修が必須です。この期間には、内科、外科、麻酔科、救急科など複数の診療科を数か月ごとにローテーションし、幅広い経験を積みます。風邪や肺炎、心不全、がんといった一般的な疾患から、手術の補助まで、一通りの臨床を体験するわけです。

この研修を終えると、勤務医として病院で働きながら専門医資格の取得を目指します。多くの診療科では、専門医を取得するために少なくとも5年以上の勤務経験が必要です。つまり、医師になってから少なくとも7年ほどは勤務医として研鑽を積むのが一般的な流れといえます。

専門医資格を取得した後、勤務を続けるのか、それとも独立して開業するのかを選択することになります。

開業には大きなリスクと責任

開業するとなると、まず大きな初期投資が必要です。精神科であれば大掛かりな機材は不要ですが、内科であればレントゲン設備を整えるために鉛で遮蔽した部屋を作る必要があり、開業費用は4000万円程度かかることもあります。耳鼻咽喉科で手術設備を備える場合には1億円近くかかることも珍しくありません。

このように、開業には数千万円単位の資金が必要となるため、多くの医師は銀行から借入をしてスタートします。そのため、常に経営リスクを背負いながら診療を行わざるを得ません。

例えば新型コロナウイルスが流行した2020年には、多くの患者が受診を控え、クリニックの経営は大きな打撃を受けました。患者が減っても、スタッフの人件費や家賃などの固定費は変わらず発生します。開業医は経営者でもあるため、こうしたリスクを常に意識せざるを得ないのです。

勤務医の安定と開業医の高収入

では、報酬面ではどうでしょうか。勤務医の場合、年収はおおむね1000万〜2000万円の範囲に収まります。これは日本全体で見れば十分に高収入であり、安定した生活を送るには十分といえるでしょう。

一方で、開業医は収入が大きく異なります。最低でも2000万円、平均すると5000万円程度、場合によっては1億円近く稼ぐ医師も存在します。もちろんスタッフの人件費や諸経費を差し引く必要がありますが、それでも勤務医と比べると収入は倍以上というのが実情です。

ただし、この高収入はあくまで経営リスクと引き換えです。うまく経営できなければ、勤務医とほとんど変わらない収入にとどまることもありますし、借金を抱えて苦労することもあります。

それぞれの医師が求めるもの

それぞれの医師が求めるもの

開業医と勤務医の違いは、単に収入やリスクの有無だけではありません。勤務医の多くは、安定した生活を送りつつ、学術的な活動や後輩医師の育成、高度な医療技術の研鑽などにやりがいを見出しています。

一方で、開業医は地域の患者に寄り添い、経営者として自らの裁量で診療を進めることに魅力を感じています。収入面でのゆとりから、旅行や趣味など私生活を充実させる医師も多い一方、経営に伴うストレスや孤独を抱えるケースも少なくありません。

精神科における違い

特に精神科の場合、患者にとって勤務医か開業医かの違いは診療内容に大きく影響しません。外来での診察や薬物療法、カウンセリングといった基本的な治療は共通しており、患者からすると「同じように診てもらえる」という印象が強いでしょう。

しかし一歩踏み込めば、勤務医は大規模病院でのチーム医療や入院管理を担い、開業医は地域に密着して継続的なサポートを行う、といった違いがあります。

まとめ

まとめ

開業医と勤務医は、患者から見れば似た存在に映るかもしれませんが、実際には大きく異なる役割と生活を送っています。

勤務医は安定した環境で専門性を高め、教育や研究にも携わる。

開業医は経営リスクを背負いながらも、高収入を得て地域医療に貢献する。

どちらが優れているというわけではなく、それぞれの医師が自らの価値観や目標に合わせて選ぶ道です。患者としては、勤務医であれ開業医であれ、信頼できる専門医にかかることが最も大切であるといえるでしょう。