私たちはそれぞれに「人となり」や「キャラクター」を持っています。性格や価値観、振る舞い方などが組み合わさって、その人らしさを形作っています。これを精神医学的には「人格(パーソナリティ)」と呼びます。人格は思春期から青年期にかけて徐々に形成され、18歳頃を目安に完成すると考えられています。そのため、中高生の段階では人格が発達途上であり、精神科において「パーソナリティ症(パーソナリティ障害)」の診断は行いません。
人格が完成する18歳以降になると、一部の人においてその特徴が極端に偏り、本人や周囲の社会生活に支障をきたすことがあります。その状態が「パーソナリティ症」と呼ばれるものです。今回はその中でも「演技性パーソナリティ症」について取り上げ、特徴や生じやすい問題、支援の方法について解説していきます。

演技性パーソナリティ症の大きな特徴は、「自分自身の内面や存在に対する自信の乏しさ」を背景に、周囲からの注目や承認を強く求めることです。そのため、言動がしばしば誇張的になり、外部の刺激にも過敏に反応してしまいます。
具体的な特徴は以下のように整理されます。
これらの特徴をまとめると、「誇張的な言動を通じて注目を集めようとする姿勢」が演技性パーソナリティ症の本質であるといえます。

このような特徴を持つ人は、初対面では「明るくて面白い人」「華やかな人」と好印象を持たれることも多いものです。しかし、付き合いが長くなると「大げさすぎる」「自己中心的」「うるさい」と感じられ、次第に周囲から距離を置かれてしまうことがあります。
その結果、孤立感や人間関係の失敗が積み重なり、抑うつ・不安・不眠といった二次的な症状が現れることも少なくありません。つまり、演技性パーソナリティ症そのものが問題というよりも、それに伴う人間関係の不調や二次障害が生活に大きな影響を及ぼすのです。

演技性パーソナリティ症の支援では、「自分の言動を客観的に理解する」ことが重要なポイントになります。
有効な方法のひとつに、カウンセリングの場面をビデオに撮影し、本人とカウンセラーが一緒に振り返るという手法があります。自分の振る舞いを客観的に見ることで、「思った以上に大げさに表現していた」「相手にこう受け取られているのか」と気づくことができます。これは「メタ認知」と呼ばれる、自分を外側から捉える力を育てる取り組みです。
ただし、知的な理解力や洞察力の影響もあり、すぐに身につくものではありません。少しずつ繰り返し練習することが大切です。
ビデオを見直した際に、「この場面ではどう振る舞えばよかったのか」をフィードバックすることも重要です。そうすることで、自分の本心や状況に即した適切な表現方法を学ぶことができます。
不眠や不安、抑うつが強い場合には、薬物療法を併用することもあります。抗不安薬や抗うつ薬などを用いながら、心理的支援を組み合わせていくのが一般的です。

演技性パーソナリティ症は、内面的な不安定さや自信のなさを背景に、誇張的な言動で注目を得ようとする特徴を持ちます。
その結果、対人関係でトラブルを抱えやすく、孤立や二次障害につながることもあります。
治療や支援の中心はカウンセリングであり、自分の言動を客観視し、適切な表現方法を学ぶことが大切です。また、必要に応じて薬物療法を組み合わせながら、長期的な支援が行われます。
演技性パーソナリティ症を持つ人は「注目を浴びたいからそうしている」と単純に捉えられがちですが、実際には「自分に自信が持てないからこそ誇張してしまう」という心理が隠れています。本人にとっては苦しい状態であり、周囲が理解と支援の姿勢を持つこともまた重要です。