
精神科で治療を受けている患者さんにとって、採血検査は非常に大切な役割を果たします。採血は単なる健康診断の一部ではなく、服薬による副作用の有無を確認したり、体調不良の原因を特定したりするための重要な手がかりとなります。本記事では、精神科の患者さんが特に知っておきたい採血結果の基本的な見方について、できるだけ分かりやすく解説していきます。

まず、精神科で採血が必要とされる理由を整理してみましょう。
薬の副作用を確認するため
抗精神病薬や抗うつ薬、気分安定薬などは、肝臓や腎臓に負担をかけたり、血液を作る骨髄の働きを抑えたりする場合があります。採血によってこれらの副作用を早期に見つけることができます。
代謝の低下をチェックするため
精神疾患を抱えると、気分の落ち込みや意欲の低下から活動量が減り、代謝も下がりがちです。特にうつ病や統合失調症の陰性症状、依存症、パニック障害などでは引きこもりがちになり、運動不足から代謝が低下します。これが生活習慣病や肥満、糖尿病などにつながることもあります。
急な体調不良の原因を探るため
「お腹が痛い」「体がだるい」といった症状の原因は、便秘のような軽いものから、虫垂炎や肺炎といった重い病気までさまざまです。見た目や自覚症状だけでは区別が難しいため、採血で炎症や臓器の状態を確認することが重要になります。

採血には非常に多くの項目がありますが、ここでは精神科の患者さんが特に意識しておくとよい主要な値を取り上げます。
1. 炎症の有無を知る数値
白血球数(WBC)
白血球は体の中で炎症や感染と戦う細胞です。数値が急に増えると、体のどこかで炎症が起きている可能性があります。通常は2000~8000程度ですが、1万を超えると炎症を疑います。ただし重症度を細かく判定するには限界があります。
CRP(C反応性タンパク質)
炎症の程度を反映する非常に重要な数値です。通常は0.05以下ですが、1を超えると何らかの炎症が起きていると考えます。肺炎や膀胱炎、胆嚢炎などの感染症では特に高値を示します。10を超えると入院を検討する必要があり、30に達すると重症と判断されます。
2. 血液の状態
ヘモグロビン(Hb)
血液中の酸素を運ぶ赤血球の量を反映します。10g/dlを下回ると貧血症状が出やすくなります。多くの場合は鉄分不足が原因ですが、精密検査が必要なこともあります。
血小板
出血を止める役割を持ちます。10万を下回ると血液の病気が隠れている可能性があり、追加検査が必要です。
3. 肝臓の働き
AST・ALT・LDH
肝細胞が壊れると血液中に出てくる酵素です。基準はおおむね50以下。薬の副作用やウイルス性肝炎で高くなることがあります。
総ビリルビン(T-Bil)
肝臓が胆汁をしっかり排泄できているかを見る値です。1.0を超えると胆石や肝機能障害の可能性があります。
4. 腎臓の働き
クレアチニン(Cre)
腎臓が老廃物を排泄できているかを示します。1を超えると腎機能低下の可能性があります。早めに対応することが大切です。
BUN(尿素窒素)
腎機能の参考となる値ですが、クレアチニンほど鋭敏ではありません。
5. 体のバランスや栄養状態
ナトリウム(Na)
体内の水分や塩分のバランスを示します。130未満では脱力感、140以上では脱水が疑われます。
アルブミン(Alb)
血液中のタンパク質で、栄養状態を反映します。3未満では低栄養のサインです。食欲低下や摂食障害の方では特に重要な項目です。
6. 代謝・生活習慣病関連
血糖値・HbA1c
糖尿病の有無を判断します。HbA1cは過去1~2か月の平均血糖を反映し、7%を超えると糖尿病と診断されます。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
150を超えると薬による治療が検討されます。
尿酸
8を超えると痛風のリスクがあります。

精神科に通院している患者さんは、服薬や生活習慣の影響で体の代謝や内臓機能に変化が起こりやすいとされています。そのため、定期的な採血はとても重要です。
特に次の点を意識していただくとよいでしょう。
採血結果は「異常か正常か」だけでなく「どの程度なのか」を見る
数値の変化を「前回と比べて」確認することが大切
異常値があった場合は、主治医とよく相談して生活習慣の改善や追加検査を検討する
採血検査は、精神科の患者さんにとって薬の副作用チェックや生活習慣病の予防、急な体調不良の原因究明に欠かせないものです。白血球やCRPで炎症の有無を確認し、ヘモグロビンや血小板で血液の状態を知り、肝臓・腎臓の数値で内臓の健康をチェックします。さらに栄養状態や糖尿病、脂質異常症の兆候も採血から読み取ることができます。
「数字が難しくてよく分からない」と感じる方も多いと思いますが、ポイントを押さえて見ていけばご自身の健康状態を把握する手助けになります。ぜひ過去の健康診断や通院時の採血結果を見返して、主治医と一緒に健康管理に役立ててください。