
皆さんには「自分の居場所だ」と感じられる場所はありますか?
家庭、学校、職場、趣味の集まり…。人によってさまざまですが、どこかに所属して安心できる空間を持つことは、心の健康や生きる喜びに大きくつながります。私は仕事を通じて多くの人と関わる中で、「コミュニティの力」について深く考えるようになりました。
特に印象的だったのは、キャバクラやラウンジ、クラブといったお店で働く人や、そこに通う人の話を聞いたときのことです。正直なところ、私は男性ですが、お金を払って女性とお酒を飲むという行為に、昔からあまり理解を示せませんでした。自分から積極的に行った経験もなく、いざ足を運んでみても、相手は仕事として会話を合わせてくれる。私もその場を和やかにするために無理に話題を振ったり、相手を持ち上げたりします。そうすると、心の中ではどっと疲れてしまい、「なぜこんなことにお金を払うのだろう?」と疑問ばかりが残るのです。
ところがある日、お店のスタッフや店長さんとじっくり話す機会がありました。そこで出てきたキーワードが「コミュニティ」。その瞬間に、私の中で大きな気づきがありました。実は、こうしたお店に通う人たちは「女性とお酒を飲む」こと以上に、「自分の居場所=コミュニティ」を求めているのではないか、と。

お店の種類によっても「居場所」の意味合いは異なります。
キャバクラは、特定の「推しの女の子」に会うために通うケースが多いそうです。そこには「その子と話したい」「もっと距離を縮めたい」という気持ちが強く働きます。
一方、クラブやラウンジは少し性質が違います。もちろんお気に入りのスタッフを応援する気持ちもあるのですが、それ以上に「お店全体を応援したい」「この箱(場所)そのものが好きだ」という感覚が強いのです。クラブやラウンジでは、スタッフもお客さんの顔を覚えていて、来店すると「お久しぶりです」「また来てくださってありがとうございます」と温かく迎えてくれる。そこには「自分が受け入れられている」という安心感が生まれます。
お客さんはお金を払いますが、それは単に飲食の代金というよりも、コミュニティを維持するための「会費」に近い感覚です。お店はそのお金で運営を続け、スタッフに給与を支払い、空間を守っていく。そしてお客さんはそのコミュニティに参加することで、「自分には居場所がある」という満足感を得る。まさに相互に支え合う関係です。
では、なぜ人はそこまで「居場所」を欲しがるのでしょうか。
人間は生きていくうえで、まずは食べる・眠るといった基本的な欲求を満たします。次に、安心して暮らせる環境を求めます。そのうえで出てくるのが「誰かとつながりたい」「どこかに所属していたい」という気持ちです。これが「所属欲求」です。
所属欲求は、家庭や職場だけでなく、複数の場所で満たされるのが理想的です。家だけでなく趣味の仲間や地域のつながりなど、いくつもの「居場所」を持つことで、人はより強く、安心して生きられるのです。

私はよく「サードプレイス」という言葉を使います。家庭でも職場でもない、第三の居場所のことです。カフェでも、スポーツクラブでも、ボランティアでも構いません。自分が「ここにいていいんだ」と思える場所を持つことが、とても大切なのです。
私自身もいくつかのサードプレイスを持っています。例えば「メンタルケアに関心を持つ人たちの集まり」にオンラインで参加しています。ただ、私の世代はまだオンラインだけでは少し物足りなさを感じることも多いので、実際に顔を合わせて会話をする「オフ会」がとても心地よいのです。若い世代の方々はデジタルネイティブで、オンライン上のつながりだけでも十分に満足できる方も多いでしょう。どちらもそれぞれの良さがあります。
私が一番強く「居場所だ」と感じるのは、地元でボランティアとして参加しているミニバスケットボールチームです。小学生にバスケットを教え、週に数回練習に顔を出す。その時間が、自分の所属欲求を大きく満たしてくれるのです。練習後に保護者や仲間とおしゃべりをしたり、試合で子どもたちの活躍を一緒に喜んだりする。そうした経験は何ものにも代えがたいものです。もちろん、無償で続けることに疲れる時もあります。それでも、「ここに自分の居場所がある」という感覚が、それを上回る大きな力になっています。
サードプレイスを探すときにお勧めなのは、「昔の経験」を活かすことです。例えば、学生時代に水泳をやっていた人なら、地域の子どもたちに水泳を教えるボランティアに参加する。昔のスキルや経験は、思った以上に人の役に立ちます。そして自分自身も「誰かのために動いている」という充実感と所属感を得られるのです。これはお互いにとってプラスであり、まさに「win-win」の関係です。

現代はSNSの普及によって、所属欲求を満たしやすい時代になっています。特に「マイクロインフルエンサー」と呼ばれる、フォロワー数は多くないけれど熱心なファンを持つ人たちの存在が大きいです。フォロワーが100人程度でも、オフ会に数人が集まれば、そこには濃いつながりが生まれます。小さな集まりだからこそ、一人ひとりが大切にされ、強いコミュニティになるのです。
大規模な人気グループのファンクラブでは「広く浅く」所属欲求が満たされますが、マイクロインフルエンサーの集まりでは「狭く深く」満たされる。どちらを選ぶかは人それぞれですが、今の時代はその選択肢がとても豊富になっているのです。

「人は一人では生きられない」とよく言われます。これは単に支え合うという意味だけでなく、「自分の居場所を持ちたい」という深い欲求があるからです。家庭や職場に加えて、クラブやラウンジのような空間でも、地域のスポーツ活動でも、オンラインコミュニティでも構いません。自分の所属欲求を満たせる場所を持つことが、より豊かな人生につながります。
衣食住や安全が整ったら、次は「つながり」を求めてみる。そのつながりの中で、自分自身の心が充たされ、さらに高い幸せへと近づいていくのです。