人と関わることは、私たちの生活に欠かせないものです。学校や仕事、友達付き合いや家族との団らんなど、日常は人との関係で成り立っています。けれども、その「人と会うこと」「話すこと」自体が大きな不安や恐怖になってしまう人がいます。
それが「社交不安症」と呼ばれる心の病気です。昔は「社交不安障害」と呼ばれていて、ほかにも「社会恐怖」や「対人恐怖」といった言葉で説明されることもあります。「ちょっと人見知り」とは違い、生活そのものに影響を与えてしまう病気なのです。

社交不安症の人が一番つらいのは「人からどう見られるか」が強い不安になってしまうことです。たとえばこんな気持ちや症状があります。
軽いうちは「人前で話すと緊張する」程度で済みますが、重くなると外出そのものが難しくなります。買い物や食事はもちろん、ネットスーパーやデリバリーを頼むことすら「配達の人と会うのが怖い」と感じてしまうことがあります。ここまでいくと日常生活は大きく制限され、孤立感も強まってしまいます。
世界的には、およそ10人に1人が社交不安症を経験すると言われています。日本では公式な数字は少ないのですが、数%の人が悩んでいると考えられています。つまり決して珍しい病気ではありません。
社交不安症の背景には、大きく分けて「経験」と「体質(遺伝)」の2つが関わっています。

たとえば、小学生のときに発表でうまく話せず笑われた…。そんな経験が強い心の傷になり、大人になっても「また同じように失敗するのでは」と不安がよみがえってしまうことがあります。このような体験は心の奥に残り、自己肯定感を下げ、社交不安のきっかけになることがあります。
家族に社交不安症の人がいると、自分も発症する確率が4~5倍高くなると言われています。双子の研究でも、片方が発症するともう一方も3~4割の確率で同じ症状が出ることが分かっています。つまり「不安を感じやすい体質」が遺伝的に受け継がれることもあるのです。
社交不安症は「性格の問題」や「気合が足りない」せいではありません。医学的に理解され、治療ができる病気です。主な治療法は「薬」と「カウンセリング」です。

ただし、副作用が出ることもあるので、医師と相談しながらバランスを見て調整します。
薬だけではなく、考え方や行動のパターンを見直す心理的なアプローチも効果的です。
社交不安症の人は「人に傷つけられるかもしれない」という思い込みを持ちやすいのですが、実際にはそうしたことはまれです。そのギャップを一緒に整理していくのがカウンセリングです。
認知行動療法という方法では、「人前で話したら笑われる」という考えが本当に正しいのかを客観的に見直します。そして「どうすればもっと現実的に考えられるか」「行動をどう変えてみるか」を練習します。体験型のワークショップのように、実際に人と接する場面を少しずつ練習することもあります。
薬で不安をやわらげながら、心理療法で考え方を変えていく。この二つを組み合わせることで、症状は少しずつ改善していきます。

社交不安症は「性格の弱さ」ではなく、誰にでも起こりうる病気です。早めに専門家に相談し、適切なサポートを受ければ、少しずつ日常生活を取り戻すことができます。
「人と会うのが怖い」という気持ちは、とてもつらく孤独に感じやすいものです。しかし、同じように悩んでいる人は世界中にたくさんいます。あなたの不安は特別なものではなく、治療や支援によって和らげることができるのです。
社交不安症は、人前での強い不安や恐怖によって生活に支障が出る病気です。
もし「自分もそうかもしれない」と思ったら、まずは信頼できる医師やカウンセラーに相談してみてください。少しずつ不安を和らげて、また人とのつながりを安心して楽しめるようになることは十分可能です。
社交不安症と向き合うことは、決して一人で抱え込む必要のないこと。支えてくれる人や方法はたくさんあります。小さな一歩を踏み出すことが、回復への大きなスタートになるのです。