
健康診断を受ける際、多くの方が一度は経験する検査に「レントゲン撮影」があります。さらに、病院で詳しく調べる必要があると判断された場合には「CT検査」が行われることもあります。
しかし患者さんからは、「レントゲンやCTで何が分かるのですか?」「被ばくは危なくないのですか?」といった質問をいただくことが多いです。特に精神疾患をお持ちの方にとっては、検査そのものが大きな不安材料になることもあります。
そこで本記事では、レントゲンとCTの違い、分かること・分からないこと、被ばくのリスクとメリットのバランスについて丁寧に解説していきたいと思います。

「レントゲン」とはX線を用いた画像検査のことを指します。胸部X線撮影が最も一般的で、健康診断の必須項目にも含まれています。
レントゲンは、体の内部にX線を通し、その透過の程度を画像化する検査です。空気を多く含む臓器はX線を通しやすく、逆に骨や密度の高い臓器は白く写ります。肺は空気を多く含むため、レントゲン検査との相性が良く、異常があれば影として映し出されます。
胸部レントゲンで分かる代表的な異常は以下の通りです。
健康診断では、特に肺や心臓の病気を早期に発見する目的で用いられています。
一方で、お腹のレントゲンはあまり情報量が多くありません。ただし以下のようなものは確認できます。
これらは確認できるものの、腹部全体の病気を調べるには不十分なため、健康診断には通常含まれていません。

CTもレントゲンと同じX線を利用しますが、決定的な違いがあります。
レントゲンが1方向から撮影した「一枚の平面写真」であるのに対し、CTは体を輪切りにするように何十枚もの画像を撮影し、立体的に評価できる点です。
例えば胸部CTを撮影すると、20~40枚程度の断面画像が得られます。レントゲンの1枚に比べて20倍、30倍、あるいは40倍もの情報量が得られるため、病変を見逃すリスクが大幅に減ります。
医師にとっては、レントゲンよりもCTの方が圧倒的に診断しやすく、特に腫瘍や血管の異常を見極める際に有効です。

健康診断の胸部レントゲンでは、健常者の約1%に異常が見つかるとされています。
リスクの高い方、たとえば喫煙歴がある人や高齢者では、異常が見つかる確率は最大で10%程度に上がるといわれています。
この数字をどう捉えるかは人それぞれですが、100人に1人の割合で重大な異常が早期に見つかるというのは、検査の価値を裏付けるものと言えるでしょう。
患者さんが最も心配されるのが「被ばく」ではないでしょうか。
放射線の影響は「シーベルト(Sv)」という単位で表されます。実際の検査で使われるのはその1000分の1の「ミリシーベルト(mSv)」です。
胸部レントゲン1枚 → 約0.1mSv
胸部CT1回 → 約4mSv
つまりCTはレントゲンの約40倍の被ばく量があります。しかし、その分得られる情報量も40倍程度に増えます。
被ばくによる健康リスクを数値で表すと、1mSvあたり10万人に1人が発がんする可能性があるとされています。胸部レントゲン1枚は0.1mSvなので、100万人に1人が影響を受ける計算になります。
一方で、胸部レントゲンは100人に1人の割合で異常を発見できる検査です。100万人に1人がリスクを負う代わりに、100人に1人は命に関わる病気を早期に見つけられる。この数字のバランスを考えると、医学的には非常に「お得」な検査と考えられているのです。

もちろん「自分の行動によって被ばくし、そのせいで健康被害を受けるかもしれない」と感じ、不安になる方もいらっしゃいます。これは自然な感情です。
しかし、国の健康診断に胸部レントゲンが組み込まれているのは、メリットがデメリットを大きく上回ると考えられているからです。税金を使ってまで実施されているのは、社会全体として見ても利益がある検査だからです。
レントゲンやCTは非常に有用ですが、完璧ではないということも知っておく必要があります。
医師が2人体制で読影しても、どうしてもヒューマンエラーによる見落としはゼロにはなりません。特にレントゲンは情報量が少ないため、後からCTで異常が判明し、振り返ってみると確かに影があった、ということも起こり得ます。
そのため大切なのは、毎年必ず健康診断を受けることです。1度の検査で安心するのではなく、継続的にチェックしていくことが病気の早期発見につながります。

本記事では、レントゲンとCTについて以下の点を解説しました。
精神科の外来では、体の検査は軽視されがちですが、心と体の健康は切り離せません。ぜひレントゲンやCTの仕組みを理解し、不安を減らしながら安心して検査を受けていただければと思います。