相手の立場になって考えるということが大事

― 人類皆兄弟の視点から ―

私たちは日々の生活の中で、さまざまな人間関係に向き合いながら生きています。家族、友人、同僚、上司、地域の人々…。人とのつながりなくして、社会生活は成り立ちません。しかしその一方で、人間関係には時に摩擦や対立、誤解や嫌がらせといった問題が生じるのも事実です。そうした時に大切なのが「相手の立場になって考える」という姿勢です。本稿では、その重要性について、職場での例や日常の出来事を交えながら考えてみたいと思います。

職場に潜む「いじめ」や「嫌がらせ」

職場に潜む「いじめ」や「嫌がらせ」

社会生活の中でも、特に長い時間を過ごす場所の一つが職場です。そこでは多様な価値観を持つ人々が集まり、共に目標に向かって働きます。しかし理想と現実は異なり、職場には往々にしていじめや嫌がらせといった問題が存在します。

実際に「仕事が楽しくて仕方がない」と心から感じている人は、意外に少ないのではないでしょうか。むしろ「給料が少ない」「仕事量が多すぎる」といった不満を抱えている人の方が圧倒的に多いのが現状です。その不満やストレスは、時に人に向けられます。能力の有無にかかわらず「できない人」と見なされた同僚が攻撃の対象になることもあります。

嫌がらせをする側にとっては、ほんのわずかに「スカッとする」程度の気晴らしになるかもしれません。しかし受ける側にとっては、その何倍もの苦痛や不快感を味わうことになります。わずかなプラスの感情の裏で、相手に大きなマイナスを与えているのです。

人は「楽な状態」に慣れる生き物

人は「楽な状態」に慣れる生き物

人間は本来、環境に慣れる生き物です。たとえば毎日9時から17時まで勤務する職場で、仕事が落ち着いている時期には15時頃には業務が終わってしまうことがあります。そんな日が続くと、「15時まで働けば十分だ」という感覚が自分の中の基準になっていきます。

ところが繁忙期になり、夜7時、8時、場合によっては9時まで残業しなければならない状況に直面するとどうでしょうか。通常の労働時間内であるにもかかわらず、猛烈に「忙しい」「苦しい」と感じてしまうのです。これは、楽な状態に慣れてしまったからこそ生じる心理的なギャップです。

このように、私たちはどうしても「楽な方」に慣れていく性質を持っています。その結果として、自分が忙しくストレスを抱えている時に、そのはけ口を他人に求めてしまうのです。

人を攻撃することの「損得勘定」

人を攻撃することの「損得勘定」

ここで一度「損得勘定」の観点から考えてみましょう。

  • 何もしない状態を「ゼロ」とします。
  • 同僚に嫌がらせをしてスカッとした場合、加害者側は「プラス1」程度の小さな満足を得られるかもしれません。
  • しかし被害者は「マイナス10」にも「マイナス100」にも感じるほどの苦痛を味わいます。

つまり、人を攻撃するという行為は、社会全体で見れば「大きな損失」なのです。もし人類をみな兄弟姉妹と捉えるならば、誰かを傷つける行為は結局「自分自身を傷つけること」にも等しいと言えるでしょう。

逆に、誰かに親切をした時はどうでしょうか。例えばちょっとした挨拶や手助けをしただけでも、相手は嬉しい気持ちになり、その笑顔を見た自分も嬉しくなります。つまり「プラス」と「プラス」が重なり合う。ここには「ウィンウィン」の関係が成立します。

愛し愛される関係の価値

愛し愛される関係の価値

さらに人間関係の最たるものは「愛し愛される関係」でしょう。恋人や配偶者、家族との間にある愛情は、双方にとっての幸福を育みます。自分が幸せを感じるだけでなく、相手も幸せを感じる。お互いの心が満たされるからこそ、人生は豊かになっていきます。

この構図を職場や社会生活にも応用できるのです。愛情ほど大きな感情ではなくても、日常の中で「思いやり」を持って行動するだけで、相手も自分も心地よさを感じることができます。

「人類皆兄弟」という考え方

「人類皆兄弟」という考え方

もちろん、「人類皆兄弟」という考え方は、すべての人が簡単に受け入れられるものではありません。特に過去に繰り返し嫌がらせやいじめを受けた経験を持つ人にとっては、「他人を兄弟のように思う」ことは容易ではないでしょう。むしろ「なぜ自分ばかりが」と感じるかもしれません。

しかし、それでもこの考え方を少しでも取り入れることができれば、視野が広がり、相手の立場に立って物事を考えるきっかけになります。

例えば、朝道ですれ違った人に「おはようございます」と声をかけてみる。たったこれだけのことでも、挨拶された相手は嬉しい気持ちになり、自分も清々しい気分を味わえます。小さな積み重ねが、社会全体を温かい雰囲気に変えていくのです。

相手の立場になって考える第一歩

私がここでお伝えしたいのは、特定の宗教や思想を推奨することではありません。ただ一つ、「相手の立場に立って考えてみよう」という姿勢が、私たちの日常をより良いものにするということです。

  • 嫌がらせやいじめによる一瞬の快感は、長い目で見れば大きな損失につながる。
  • 逆に、小さな親切や思いやりは、双方の心に幸福をもたらし、社会全体を豊かにする。
  • 「人類皆兄弟」という考え方を少しでも心に取り入れることで、相手の立場に立った行動が取りやすくなる。

こうした積み重ねこそが、人と人とが共に生きる社会の基盤となります。

おわりに

私たちは、つい自分の感情や都合を優先してしまうものです。しかし一呼吸おいて「相手はどう感じるだろう」と考えてみるだけで、人間関係は大きく変わります。職場の人間関係に悩んでいる人も、日常の中で心がささくれ立ってしまう人も、ぜひ一度「相手の立場になって考える」という視点を持ってみてください。

人は一人では生きられません。人と人とが支え合い、愛し愛されることで、人生は豊かになります。だからこそ、「人類皆兄弟」という視点を少しでも意識することが、私たちの未来をより明るいものにしてくれるのではないでしょうか。