「双極症」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。以前は「躁うつ病」と呼ばれていたものです。言葉の変化には、差別や偏見をなくし、より正しく理解してもらうという大きな意味が込められています。この記事では、表には出にくく気づかれにくい「隠れ双極症」について、できるだけ分かりやすく解説していきます。

双極症とは、気分が大きく上下する特徴を持つ心の不調のことです。気持ちがとても落ち込む時期(うつ状態)と、逆に少し気分が高揚して元気がありすぎる時期(躁状態または軽い躁状態)が波のように現れます。多くの方が「元気すぎる時期」と「落ち込みの時期」が半々で訪れるとイメージしますが、実際には落ち込みの期間の方がずっと長く、元気すぎる時期は短く、しかも軽い場合が多いのです。
人口のおよそ1%、つまり100人に1人がこの特徴を持っているといわれています。決して珍しいものではありませんが、正しく気づかれることが少なく、誤解されたまま過ごしている人も少なくありません。
双極症は、しばしば「うつ」と間違えられます。というのも、多くの時間を「落ち込みの状態」で過ごすからです。病院を訪れるきっかけも、「気分の落ち込み」や「やる気のなさ」であることが多いため、うつと診断されやすいのです。
特に「軽い躁状態」が見逃されがちです。これは、本人にとっては「調子がいい時期」に感じられるからです。仕事や家事がいつもよりはかどり、人と話すのが楽しくなり、睡眠時間が短くても平気に思えたりします。むしろ「うつが良くなった」と思ってしまい、その状態を不調として伝えない人が多いのです。そのため、周囲や専門家が気づかず、うつとだけ判断してしまうのです。
うつと双極症は見た目がよく似ていますが、いくつかの違いがあります。たとえば、双極症は10代後半から20代にかけて始まることが多いのに対し、うつは30代前後で現れることが比較的多いとされています。また、家族に同じような気分の波を持つ人がいる場合、双極症の可能性は高くなります。
もう一つの違いは、症状の経過です。うつの場合は気持ちの落ち込みが中心ですが、双極症では時折「元気すぎる時期」が混ざります。その「少しのハイテンション」に気づけるかどうかが、大きな分かれ目になります。

では、自分や身近な人が「隠れ双極症」かもしれないと気づくためにはどうしたらよいでしょうか。以下のような点に注目してみると参考になります。
こうした変化は本人にとって「元気になった」と感じられるため、不調だと気づきにくいのが特徴です。周りの人の視点がとても大切になってきます。

双極症を「ただのうつ」と考えてしまうと、対応の方法が合わず、かえって気分の波を大きくしてしまうことがあります。その結果、気持ちの落ち込みがさらに深くなり、立ち直りにくくなることもあります。
また、本人が「自分は感情のコントロールが下手なだけ」と責めてしまうこともあります。しかし実際には性格の問題ではなく、心の仕組みの問題であることが多いのです。誤解を解き、正しい理解を持つことは、本人を守ることにつながります。

隠れ双極症は、うつの中に紛れ込んで見えにくくなっていることが多いものです。気づくための鍵は、「ちょっとしたハイテンションの時期」に注目することです。本人は「調子がいい」と思いがちですが、実はその時期が双極症を示す大事なサインである場合があります。
正しく気づくことができれば、より合った方法で向き合うことができます。気分の波に悩まされている人や、その周囲の人たちが、この視点を持つことで少しでも安心して過ごせるようになることを願っています。