実行機能を活かして課題達成を目指す:4つの階段
実行機能は、課題を達成するための段取り力、つまり計画を立て、実行し、結果を柔軟に修正する一連の能力を指します。この能力は、日常生活から仕事に至るまで、あらゆる場面で必要とされています。しかし、この実行機能が上手く働かない場合、生きづらさや課題への苦手意識を感じることがあるのです。本記事では、実行機能の重要性を4つの段階に分け、発達障害の特性を交えながら解説します。

意思決定は、自分の意志で課題を決め、取り組むための重要な第一歩です。
例えば、ある日、伊藤さん(仮名)は上司から社内広報誌の制作を任されました。
彼はまず「どんなテーマが適切か」を考え、情報を整理して最終的にA案を採用する決断をしました。
この段階では、過去の経験や新しい情報を収集し、それを分析して自分が納得できる結論を導き出す力が求められます。
しかし、情報整理が苦手な場合や、過去の失敗経験が影響して新しい挑戦に抵抗感を感じる場合、意思決定に時間がかかることがあります。発達障害の方では、この段階でつまずくケースがしばしば見られます。
意思決定の次に必要なのがプランニング、つまり計画を立てる段階です。
伊藤さんはA案に基づいて社内広報誌の制作計画を立てました。ここでは、必要な業務を洗い出し、工数を見積もり、無理のないスケジュールを作成するなど、具体的な段取りを整えていきます。
特にASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ人には、完璧主義が顕著に表れる場合があります。
この完璧主義が計画の精度を高める一方で、効率性を欠く結果を招くこともあります。
例えば、折り紙を切る際に、直線を引く道具としてカッターを使うほうが効率的なのに、ハサミにこだわり続けるような行動です。
プランニングにおいては、効率を意識し、柔軟に道具や方法を選ぶ視点が重要です。

計画を立てた後は、実際に行動に移す課題処理の段階です。
ここでは、逐次処理(物事を順番に進める力)と同時処理(複数のタスクを並行して進める力)の2つの能力が求められます。
伊藤さんは、この段階でADHD(注意欠陥・多動性障害)の特性である不注意が影響し、作業が遅れました。しかし、同時に彼のこだわりの強さが高い完成度を実現する助けとなったのです。
特性ごとに得意・不得意が異なるため、この段階では自分の特性を理解し、それに合った取り組み方をすることが大切です。
最後の段階は柔軟性です。不測の事態が起きたときに計画や行動を見直し、適応する能力が求められます。伊藤さんは、計画が遅れていることに気付き、同僚の明日香さんに相談しました。
彼女のアドバイスを受け入れ、計画を修正することで、最終的に広報誌を完成させることができました。
柔軟性が不足すると、自分のやり方に固執してしまい、課題を達成できないリスクがあります。
このような場合、他者の助言を受け入れる姿勢や、変化に対応する勇気が鍵となります。
実行機能を鍛えるには、経験の積み重ねが欠かせません。
主体的に新しい業務に取り組み、試行錯誤を繰り返しながら達成感を得ることが、動機づけやモチベーションの向上につながります。
「やって見せ、言って聞かせ、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」という山本五十六の言葉は、経験を通じて学ぶ大切さを象徴しています。
皆さんもぜひ、日常生活や仕事での「実行機能」に意識を向けてみてください。
意思決定、計画、課題処理、柔軟性という4つの階段を上手に活用することで、より充実した毎日を送る手助けになるはずです。