今回は、パーソナリティ障害の一つである「シゾイドパーソナリティ症」について解説します。パーソナリティ障害は、個々の性格傾向が極端に偏ることで社会生活に困難が生じる状態を指し、9つのタイプに分類されます。その中でも「人との関わりを避ける」傾向が強いのがシゾイドパーソナリティ症です。本記事では、その特徴や他の障害との違い、支援の在り方について詳しくお伝えしていきます。
シゾイドパーソナリティ症は、人口の約5%に見られるとされ、小学校の1クラスに1~2人はいるほど珍しくない存在です。統合失調症よりも多い頻度で存在するとも言われています。主な特徴は「社会的孤立」「感情表現の乏しさ」「対人関係への無関心」であり、まるで仙人のように一人で過ごすことを好む傾向があります。
パーソナリティ障害の診断は原則として18歳以降につけられますが、子どもの頃から「集団の中で孤立している」「友達がいない」といった姿が見られることも多く、周囲は戸惑うことがあります。

シゾイドパーソナリティ症の人には、いくつか共通した特徴が挙げられます。
こうした特徴から、周囲は「冷たい人」「何を考えているか分からない人」と感じることも少なくありません。
似た特徴を持つ障害に「回避性パーソナリティ症」があります。両者は混同されやすいのですが、根本的な違いがあります。
つまり、回避性パーソナリティ症の人は「人と関わりたいけれど怖い」と感じているのに対し、シゾイドパーソナリティ症の人は「そもそも関わりたいと思わない」という違いがあります。

シゾイドパーソナリティ症の人は、自らの意思で孤立しているため、引きこもり状態にあっても精神的な苦痛を伴わない場合が多いです。例えば、一人で趣味に没頭したり動画を楽しんだりしながら満足して暮らしています。
しかし、周囲からは「うつ病ではないか」「統合失調症の症状では?」と誤解されることもあります。実際、一人で笑っている様子を見て「幻覚や妄想によるものでは」と疑われることも少なくありません。そのため、引きこもり支援の現場では「本人が本当に困っているのか、それとも一人を楽しんでいるのか」を見極めることが重要です。

シゾイドパーソナリティ症の人は、回避性パーソナリティ症に比べて二次的にうつ病や統合失調症を発症するリスクは低いとされます。そのため、精神医療に繋がるケースは比較的少なく、治療の対象になることは多くありません。
しかし、家族や支援者が戸惑う場面はあります。特に引きこもり支援において「本人を無理に外に出そうとする」ことは逆効果になりかねません。大切なのは、その人の特性を理解し、「人と関わらない生き方もある」という前提を尊重することです。
もちろん、もし二次的にうつ病などを併発した場合には、その病気の治療が必要です。しかし、シゾイドパーソナリティ症そのものを「矯正」しようとすることは必ずしも適切ではありません。
シゾイドパーソナリティ症の人は目立たず、周囲から「いない存在」として忘れられがちです。そのため診断に至る機会は少なく、引きこもり支援の現場で初めて疑われることもあります。
また、本人が困っていない場合は、無理に診断や治療を行う必要もないでしょう。支援者としては「本人が生きやすい状態をどう守るか」に目を向けることが大切です。

シゾイドパーソナリティ症は、人口の約5%に存在する決して珍しくないパーソナリティ障害です。社会的孤立や感情表現の乏しさ、対人関係への無関心といった特徴があり、引きこもりと混同されやすい側面があります。しかし、本人は孤立を苦痛と感じていないことも多く、周囲が過度に「治さなければ」と思う必要はありません。
大切なのは、シゾイドパーソナリティ症を理解し、本人の特性を尊重した関わり方をすることです。家族や支援者は「孤立していても、それがその人にとって自然な生き方であれば問題はない」という視点を持つことが求められます。誤解や不必要な介入を避け、安心できる環境を整えることが、本人にとって最も有益な支援となるでしょう。