精神疾患と向き合う上で自己理解はすごく大切です。

精神疾患と向き合う上で自己理解はすごく大切です。

自己理解の大切さ ~性格・発達特性・病気の三本柱から考える~

私たちが日々を生きていくうえで、もっとも身近で、そしてもっとも深く付き合わなければならない存在は「自分自身」です。ところが、意外にも自分のことを正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。今回は「自己理解の大切さ」について、特に精神疾患やメンタルの不調と関連させながらお話をしていきたいと思います。

自己理解とは何か

自己理解とは何か

自己理解とは、簡単にいえば「自分を知ること」です。性格、考え方の傾向、強みや弱み、好き嫌い、さらには病気になりやすい傾向など、幅広い意味での「自分の特性」を理解していくことを指します。

精神疾患をお持ちの方や、そのご家族、またはメンタルの分野に関心のある方にとって、この自己理解はとても重要です。なぜなら、自分の特徴を正しく捉えることが、病気の予防や治療、さらにはよりよい生活習慣を築くうえで大きな助けとなるからです。

「病前性格」という考え方

「病前性格」という考え方

精神医学の分野には「病前性格」という言葉があります。これは、病気を発症する前から持っている性格や気質のことを意味します。たとえば、几帳面で真面目な人はうつ病になりやすい傾向がある、不安が強い人は不安障害に陥りやすい、といった特徴が知られています。

もちろん、性格そのものが「悪い」わけではありません。しかし、持っている特性が強く出すぎたり、環境と噛み合わなかったりすると、病気の引き金になってしまうことがあるのです。だからこそ「自分にはこういう傾向がある」と理解しておくことが、病気の予防にもつながります。

発達障害やパーソナリティの特性と自己理解

発達障害は、病気というよりも「もともと持っている特性」と考える方が正確です。注意が散りやすい、感覚が敏感すぎる、コミュニケーションが独特など、生まれつきの特徴が社会生活に影響を及ぼしてしまうのです。

また、パーソナリティ障害(人格障害)と呼ばれる状態もあります。これは、その人自身の考え方や感じ方、人間関係のスタイルが日常生活に大きな支障を与えてしまうものです。

いずれにせよ、「自分がどんな人間なのか」を理解すること自体が、そのまま病気の理解や生活の安定につながるのです。

流行する性格診断と自己理解の役割

流行する性格診断と自己理解の役割

近年は「MBTI診断」が若い世代を中心に大流行しています。これは人の性格を16種類に分類し、「自分はどのタイプか」を知ることで仕事や人間関係に役立てるという考え方です。韓国から始まり、日本でもSNSなどを通じて広まりました。

MBTIに限らず、昔から「人を分類して理解する」試みは数多く存在します。代表的なものとして、日本で開発された「東大式エゴグラム(TEG)」があります。こちらは約30のパターンに分けて性格傾向を把握する方法で、臨床の場でも使われています。

こうした診断は遊び感覚で広まる一方で、自己理解のきっかけとして非常に役立ちます。社交的か内向的か、計画的か行き当たりばったりか、感情的か理性的か――。こうした単純な分類を積み重ねることで、人はおおよそ8~16のパターンに整理することができます。そして、この「分類作業」こそが自己理解の出発点になるのです。

主観と客観をすり合わせる重要性

自己理解を深めるうえで大切なのは、主観的な理解と客観的な理解をすり合わせることです。

多くの人は、自分の性格について「自分は人見知りだ」「自分は几帳面だ」とある程度は分かっていると思います。しかし、それはあくまで自己評価です。他者から見たときの印象や、心理検査で数値化された結果とは異なることも少なくありません。

臨床現場では、心理検査を用いて「客観的な指標」を取り入れ、患者さん自身の主観と照らし合わせながら共通言語をつくっていきます。この作業自体が治療の一部となり、患者さんの生活改善に大きく役立ちます。

外来での実践例

私の外来では「キャップ100」という心理検査を取り入れています。これは発達障害の有無や性格傾向を数値化できるもので、患者さんと共有しながら治療を進める際に非常に役立ちます。

例えば、ある患者さんが「自分は行き当たりばったりな性格だ」と思っていても、検査結果ではむしろ計画性が高いと示されることがあります。すると「自分の思い込みと実際は違うんだ」と気づき、生活の工夫に結びつくのです。

このように、主治医と患者さんが共通言語を持つことで、生活計画を一緒に立てやすくなります。「次の1週間はこう過ごしてみよう」「今月はこの点に気をつけよう」といった具体的な行動計画が立てやすくなるのです。

カウンセリングやネット診断の活用方法

カウンセリングやネット診断の活用方法

しかし現実には、外来でこうした検査や話し合いに十分な時間を割けない場合もあります。そんなときは、民間のカウンセリングオフィスを利用するのも有効です。そこでは、性格診断や発達障害の傾向チェック、疾病学習などを行ってくれるところが多く、結果を主治医に共有することもできます。

また、費用や時間の都合で難しい場合には、インターネット上の性格診断を利用するのもひとつの手です。ただし、ネットの診断は精度や信頼性に限界があるため、あくまで「参考資料」として捉えることが重要です。

理想をいえば、

1.主治医のクリニックで心理検査を受ける

2.それが難しければカウンセリングオフィスを利用する

3.最低限、ネット診断を活用して主治医と共有する

という順番で取り組むのがおすすめです。

自己理解の三本柱

自己理解を深める際に大切なのは、次の三つの柱を意識することです。

1.性格診断:自分の人となりを知る

2.発達障害の傾向:生まれ持った特性を知る

3.疾病理解:自分が抱えている病気やなりやすい病気を知る

この三本柱を組み合わせることで、自分の全体像がより明確になります。そして、それを主治医や支援者と共有することで、治療や生活改善の具体的な道筋を立てやすくなるのです。

まとめ

自己理解とは単なる自己分析にとどまらず、精神的な健康を支える大切な土台です。性格、発達特性、病気の三本柱を整理し、主観と客観をすり合わせながら理解を深めていくことが、よりよい生活や治療につながります。

もし「自分のことがよく分からない」と感じる方がいたら、ぜひ一度立ち止まり、自分の性格や特性に向き合ってみてください。診断や心理検査を通じて得られる客観的なデータを活用しながら、医師やカウンセラーと共有する。そのプロセス自体が、自己理解を深め、人生を歩みやすくしてくれる大きな一歩になるはずです。