メンタルが不安定な状態

メンタルが不安定な状態

メンタル(気力)が不安定な人について考える

はじめに

「最近、気分が安定しない」「自分の感情をコントロールできなくて困っている」「身近な人が情緒不安定でどう接していいか分からない」――こうした悩みを抱える方は少なくありません。日常会話の中でも「うちの彼女はメンタルが不安定なんだ」「自分自身が不安定で苦しい」といった表現を耳にすることは多いと思います。

ただし、「メンタルが不安定」という言葉は医学的な病名ではなく、あくまで「症状」や「状態」を示す表現です。泣きやすい、感情が爆発してしまう、気持ちの浮き沈みが激しい、自分を信じられない――こうした特徴がある方を指して「メンタルが不安定」と呼ぶことが多いのです。では、この状態の背景にはどのような原因があり、どう対応していけばよいのでしょうか。本記事では、その点を丁寧に整理してみたいと思います。

メンタル不安定さの2つのタイプ

メンタル不安定さの2つのタイプ

メンタルが不安定な状態には、大きく分けて二つのパターンがあります。

① 周囲の出来事に敏感に反応するタイプ

こちらが最も多いとされるタイプです。人からちょっとしたことを言われただけで、過剰に反応してしまう。客観的に見れば大したことではないのに、心が大きく揺さぶられ、強い悲しみや怒り、あるいは過度な喜びにつながることがあります。

背景には「自分の軸」が弱いことや「自己肯定感の低さ」が関わっていると考えられています。例えば、親から十分な無条件の愛情を受けられなかった、もともと敏感な性格を持って生まれた――そうした要素が重なり、心が不安定になりやすいのです。

また、過去のトラウマが大きな影響を与えている場合もあります。特定の出来事が記憶に強く残り、繰り返し頭の中で再生されてしまう。その結果、日常の些細な刺激にも過剰に反応してしまうのです。

② 周囲の状況に関係なく波が生じるタイプ

もう一つは、特別な出来事がなくても気分の波が自然に現れるタイプです。この場合、脳の働きに関わる疾患である「双極性障害(躁うつ病)」などの可能性があります。

双極性障害では、気分が高揚し活動的になる「躁状態」と、意欲が低下し落ち込む「うつ状態」が繰り返し現れます。これは環境要因よりも遺伝的・体質的な影響が大きいとされており、家族に同様の病気を持つ人がいるケースも少なくありません。

このタイプでは、自己努力や環境調整だけで改善するのは難しく、医学的な治療、特に薬物療法が重要になります。

自己肯定感と体質の関係

自己肯定感と体質の関係

メンタルの安定に深く関わるものの一つが「自己肯定感」です。「ありのままの自分を尊いと思える感覚」と言い換えることもできます。

興味深いのは、この自己肯定感が「生まれつきの体質」と「育ちの環境」の両方に影響されるという点です。イメージとしては以下のように考えられます。

・生まれた瞬間に自己肯定感の“基礎点”が50点分ほど決まる

・その後、0歳から25歳までの成長過程でさらに50点分が積み上げられ、最大100点に到達する

つまり、生まれつき自己肯定感の基礎点が低い人は、育ちの中でどれだけ愛情を受けても、ある程度までしか伸ばせない可能性があるのです。逆に、生まれつき高い人は、育ちで苦労があっても一定の安定を保つことができます。

この事実は一見すると悲観的に思えるかもしれませんが、自分の「体質的な限界」を理解することは大切です。無理に完璧を目指すよりも、「自分は50点の安定感を持っている」と受け止め、その中で生活を整えていくことが現実的な対処になります。

薬物療法の役割

薬物療法の役割

特に双極性障害のように、環境に関わらず気分の波が現れるタイプでは、薬物療法が有効です。代表的な気分安定薬には以下のようなものがあります。

・バルプロ酸(デパケン)

・ラモトリギン(ラミクタール)

・カルバマゼピン(テグレトール)

・炭酸リチウム(リーマス)

これらの薬は脳内の神経伝達を安定させ、気分の波を抑える効果があります。もちろん副作用もあるため医師の管理が必要ですが、環境調整だけでは対応できない場合には大きな助けとなります。

薬物療法のメリットは「服用すれば作用が得られる」という手軽さです。生活習慣の改善やカウンセリングのように時間や努力を要するものと比べ、比較的即効性が期待できます。

カウンセリングと生活習慣の大切さ

一方、周囲の出来事に敏感に反応するタイプの方には、カウンセリングや生活習慣の改善が大きな効果をもたらします。

カウンセリング

信頼できるカウンセラーと対話することで、自分の心の動きを整理できたり、過去の出来事に対する新しい視点を得られたりします。たとえ継続して受けなくても、心に残る言葉が支えとなり、長期的に安定につながることもあります。

生活習慣

実は心身に良い生活習慣は、心臓病や糖尿病など身体疾患に良い習慣とほとんど共通しています。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、規則正しい生活――こうした基本を整えることは、メンタルの安定にも欠かせません。

メンタル不安定と社会的な目線

メンタル不安定と社会的な目線

メンタルが不安定な人は、自分自身が苦しむだけでなく、周囲の人からも「信用できない」「面倒な人」と見られてしまうことがあります。そうした視線は本人をさらに傷つけ、落ち込みを深め、結果的に不安定さを悪化させるという悪循環に陥りやすいのです。

この負のスパイラルを断ち切るためには、本人が適切な支援を受けることはもちろん、周囲が理解を示し、偏見を持たずに接する姿勢も重要です。

まとめ

本記事では「メンタルが不安定な人」というテーマについて、主に二つのタイプに分けて整理しました。

1.周囲の出来事に過敏に反応するタイプ

・自己肯定感の低さや自分の軸の弱さが背景

・カウンセリングや生活習慣改善が有効

2.周囲の状況に関係なく気分の波が現れるタイプ

・双極性障害など脳の病気が背景

・薬物療法による改善が期待できる

いずれの場合も、「薬物療法・カウンセリング・生活習慣」という三本柱が基本となります。自分がどのタイプに当てはまるのかを冷静に見極め、必要に応じて専門家の助けを借りながら取り組んでいくことが大切です。

メンタルが不安定であることは決して珍しいことではありません。しかし、その背景や対処法を理解し、適切な支援を受けることで、より安定した日々を送ることは十分に可能です。