今回も前回に引き続き、「療育・発達支援」について説明していきます。
「ADLが自立しなければ、人は自立できないのか」
第二次世界大戦直後に提案された「日常生活動作(ADL)」を改善し、自立を目指すリハビリテーションは、「ADLが自立しなければ人は自立できないのか」という批判を受け、1980年のリハビリテーション世界大会で豊かな人生(QOL)を支援する方向へと転換しました。歩行や会話、読み書きや計算などの能力は成長に重要ですが、これらができなくても生活できますし、できるからといって生活が成り立つわけでもありません。
■発達支援におけるQOL
・安心できる親子関係の形成
・地域での豊かな育ち
発達支援におけるQOLとは、安心できる親子関係の形成と地域での豊かな育ちを指します。育つ上での自信や意欲、発語に限らないコミュニケーション能力、地域生活を楽しむための生活技術(ソーシャル&ライフスキル)、自己決定・自己選択の能力などが求められます。発達支援は生活を目標とした支援でなければなりません。昭和40年代後半から、脳性麻痺の早期発見と早期療育の重要性が認識され、乳幼児健康検査の充実や障害児通園施設の設置など療育は技術的・システム的に発展しました。また、知的障害や自閉症の子どもたちにも対象が広がっています。しかし、早期療育を受けた成人たちが地域で暮らす能力に疑問を感じることが多くあります。成人施設に通う障害の軽い人たちや、運動機能は改善しているが周囲とうまく付き合えない子どもたちなど、地域で生活しにくい例が少なくありません。原因は日本の福祉制度や教育体制にもあります。
医学的な観点から

医学的に、知的発達に問題がないように見える脳性麻痺児にも視覚認知障害を中心とする認知障害が高確率で見られます。言語発達や知的発達に問題がないからといって、対人関係や社会性の発達を無視して運動機能の向上に重点を置く支援を続けるべきではありません。療育が育児支援の視点を持たず指導という形で提供されたため、専門家の指導なしでは進まない育児や親子関係が歪められた可能性があります。また、早期訓練は親が避けて通れない「障害の理解と受容」という過程を阻害しがちで、課題設定された育児のために子どもたちの自信や意欲が育ちにくくなったかもしれません。
障害の理解と受容

理学療法士は姿勢や粗大運動、作業療法士は認知や上肢機能、言語聴覚士は言語機能など、専門家によるパーツ化された療育は社会的発達を支援するという最重要目標を達成できません。チームアプローチには治療者同士の密な連携と子どもを社会的存在として見るトータリティが必要です。
【発達期の子どもへの支援】
療育は乳幼児期や学齢期の訓練というイメージがありますが、成人期の障害者にとっても地域生活を円滑に進めるために専門技術は不可欠です。作業環境の調整、楽な作業姿勢の考案、変形や拘縮を最小限にし活動能力を維持し痛みの発現を抑えることなどが必要です。
【自閉症スペクトラムの人】
自閉症スペクトラムの人には作業環境の調整や理解しやすいコミュニケーション方法(PECS、VOCAなど)を考え、問題行動を防ぐことが求められます。障害がある人が地域生活を楽に、有意義に過ごせるようにするためには医療技術を生活の支えとして位置づける必要があります。
発達支援や障害児教育の基盤とは

療育や障害児教育の歴史は「親の負担」と「家族の犠牲」の上に築かれてきました。母親が仕事を失い、兄弟姉妹から温かい家族を奪い、夫婦の時間や近所付き合いも犠牲にしてきました。家族が幸せであり、家庭の機能が保たれていることが発達支援や障害児教育の基盤となります。
以上、前回に続いて「療育と発達支援」についての説明でした。