境界性パーソナリティー障害について

境界性パーソナリティー障害について

境界線上で揺れ動く心 ― ボーダー気質について考える

「ボーダー」と呼ばれる気質を持つ人について耳にしたことがあるでしょうか。正式には「境界性パーソナリティ」と言われることがありますが、難しい言葉を並べるよりも、「人との関係や自分自身との向き合い方がとても揺れやすい人」と表現した方が、イメージしやすいかもしれません。今回は、このボーダー気質について、できるだけ分かりやすくお話ししていこうと思います。

人格ってなんだろう?

人格ってなんだろう?

まず前提として、「人格」という言葉を考えてみます。人格というと少し堅苦しく聞こえるかもしれませんが、平たく言えば「その人らしさ」のことです。
性格や考え方、ものの感じ方、行動の癖など、私たちが「〇〇さんってこういう人だよね」と自然に思う、その人を形づくる全体像が人格です。

人格は、生まれながらの性質と、育つ環境の両方によって作られていきます。たとえば小さい頃の親との関わり、友達との遊び方、学校での経験などが積み重なって、その人の「自分像」や「他人との関わり方」が形づくられていきます。一般的には、高校を卒業する頃までにはある程度固まるといわれています。

社会と「その人らしさ」の相性

社会と「その人らしさ」の相性

人格にはさまざまなタイプがあります。穏やかな人、厳しい人、打算的な人、優しさにあふれる人…。多様性があるからこそ社会は面白いのですが、一方で「その場に合わない」ことで本人も周りも苦労することがあります。

たとえば都会のスピード感に合う人もいれば、田舎のゆったりした環境に合う人もいます。ある国や文化では「普通」とされる気質が、別の文化では「変わっている」とみなされることもあります。
つまり、「この人格は絶対に問題だ」というよりは、「その人が生きている社会や人間関係と合っているかどうか」で、困難さが変わってくるのです。

ボーダーの特徴 ― 激しさと揺れ

ボーダーの特徴 ― 激しさと揺れ

では、「ボーダー気質」とはどんな特徴があるのでしょうか。
一言で表すなら、「とても激しい人」です。

感情も、行動も、言葉も、すごく揺れ動きやすいのです。
しかもその揺れは日単位ではなく、時には数時間ごとに大きく変化することもあります。

ある時は誰よりも優しく、自己犠牲的なまでに相手のために尽くす。
かと思えば次の瞬間には、自己中心的で相手を傷つけるような態度をとってしまう。

その変化の振れ幅があまりに大きいため、周囲の人は「ついていけない」と疲れ果ててしまうことがあります。

なぜそんなに揺れるのか?

ボーダー気質の根っこにあるのは、「自分という存在が安定していない」という感覚です。

普通は「自分はこんな人間だ」というある程度しっかりした自己像を持っています。たとえ落ち込んだり怒ったりしても、その揺れ幅は自分の中の「軸」の範囲に収まります。

ところがボーダー気質の人は、この軸がとても細く、揺れやすいのです。だからこそ、周りの出来事や人の反応に大きく左右されてしまい、行動や気持ちが一気に変わってしまうのです。

まるで神様のように慈愛に満ちた態度をとったかと思えば、次の瞬間には悪魔のように攻撃的になる――そのような極端な変化が特徴的です。

周りから見た「ボーダー」

周りから見た「ボーダー」

付き合う人にとって、ボーダー気質の人はまさにジェットコースターのようです。
最初は魅力的に見えることもあります。情熱的で、刺激があって、一緒にいると退屈しない。そんなふうに惹かれる人もいるでしょう。

しかし、多くの場合、その激しさはやがて「疲れる」「一緒にいるのがしんどい」という気持ちを生んでしまいます。相手の行動を理解しようとしても、あまりに揺れが激しくて整理が追いつかないからです。

本人が一番つらい

ただし忘れてはいけないのは、周りを振り回しているように見えるボーダー気質の人自身が、実は一番疲れているということです。

他人の言動に大きく揺さぶられ、そのたびに自分の気持ちが変わり、安定できない。
その不安定さの中で、「見捨てられるくらいなら死んでやる」「リストカットしてやる」といった極端な言動をしてしまうこともあります。

周りの人は一定の距離を取ることもできますが、本人は自分から逃げることができません。だからこそ、誰よりも消耗し、苦しい思いをしているのです。

揺れを少しでも小さくする工夫

それでは、この激しい揺れにどう向き合えばよいのでしょうか。
「人格そのものを変える」というのは難しいことです。人格は幼少期から積み重ねられたものであり、土台をゼロから作り直すことはできません。

そこで現実的な方法としては、「枠組み」を作ることが役立ちます。

例えば――

  • 毎週決まった曜日と時間に通う場所を持つ
  • 決まった人と定期的に会う時間を作る
  • 夜はなるべく早く休むように生活リズムを整える

こうした「行動の枠組み」があると、その範囲から大きく逸脱することが少なくなり、突飛な行動も和らいでいきます。枠組みを一つひとつ積み重ねることで、揺れ動く感情や行動を少しずつ収めていくのです。

まとめ

ボーダー気質を持つ人は、決して「ただの厄介な人」ではありません。
その背景には、自分自身をしっかりと保てない苦しさがあります。

周囲の人にとっては確かに大変な存在かもしれません。けれど、最も疲れているのは本人です。そのことを理解したうえで、無理のない距離感で関わり、少しでも安定できるような「枠組み」を一緒に作っていくことが大切です。

揺れ動く心を抱えて生きるのは、想像以上に大変なことです。だからこそ、本人も周囲もお互いに「どうすれば安心して過ごせるか」を考えながら関わっていけたらと思います。