精神科領域では、双極性障害(双極症)と境界性パーソナリティ障害(BPD)の診断が混同されやすいという課題があります。実際に、「医師によって診断が異なる」「自分は双極性障害なのかパーソナリティ障害なのか分からない」といった声が少なくありません。両者は気分の浮き沈みが大きい点で共通していますが、その背景や治療の方向性には大きな違いがあります。本記事では、この2つの疾患の特徴と関連性を整理し、正しい理解の一助となることを目指します。

双極性障害は、気分の波が極端に大きくなる病気です。
「躁状態」と「うつ状態」が繰り返されるのが大きな特徴で、波の幅が日常生活に支障をきたすほど病的に大きい場合に診断されます。
このように、双極性障害では「内因性の気分の波」が特徴であり、周囲の環境や出来事に左右されなくても症状が現れる点が重要です。治療の中心は薬物療法であり、気分安定薬を用いて生物学的な気分の波を安定させることが基本となります。

一方、境界性パーソナリティ障害(BPD)は「環境や人間関係に強く影響を受ける気分の波」が特徴です。本人の自己肯定感の低さや自信のなさから、周囲の評価や態度に過敏に反応し、感情が大きく揺れ動きます。
つまり、BPDの気分変動は「内因性」ではなく「外因性」であり、環境に大きく依存します。そのため、治療の中心は薬ではなくカウンセリングであり、自己理解や人間関係のパターンに向き合う心理的支援が不可欠です。
双極性障害と境界性パーソナリティ障害は、どちらも「気分の波が大きい」という点で共通しています。そのため、傍から見れば同じように映ることがあり、診断が混乱しやすいのです。しかし、原因や病態は明確に異なります。
診断が異なれば、治療の主軸も大きく変わります。双極性障害は薬物療法が中心であり、BPDはカウンセリングが中心となります。したがって、正確な診断を受けることが極めて重要です。
両方の診断が同時に見られる場合もあり、その際は「どちらの要素が強いのか」を見極めて治療の方向性を定める必要があります。

もうひとつ大切なのは、「病名の受け入れやすさ」です。
「境界性パーソナリティ障害」という診断名は「人格に問題がある」と受け取られやすく、患者本人や家族に強い抵抗感を与えることがあります。一方で「双極性障害」は「誰にでも気分の波はある」という説明が可能であり、比較的受け入れやすい側面があります。そのため、医療者が診断名をあえて曖昧に表現する場合もあります。

最終的に重要なのは、双極性障害か境界性パーソナリティ障害かを明確に区別することです。
なぜなら、治療の主軸が根本的に異なるからです。
両者を混同したままでは、治療が的を外してしまい、回復が難しくなることもあります。主治医とよく相談し、自分の症状の特徴を丁寧に振り返ることが大切です。
双極性障害と境界性パーソナリティ障害は、表面的には似た症状を示しますが、背景にある原因と治療の方向性は大きく異なります。
「どちらなのか分からない」と悩む方も多いですが、自分の気分の変動が「内因性」か「外因性」かを見極めることが、治療の第一歩となります。診断名の受け入れには抵抗を感じることもあるでしょう。しかし、正しい理解を持ち、適切な治療法を選ぶことが、長期的な安定につながります。
本記事が、双極症とパーソナリティ障害の違いを理解するための一助となれば幸いです。