自分の意見を伝えることの苦手意識に向き合うために

皆さんには次のような経験はないでしょうか。会社の会議で意見を求められたものの、うまく自分の考えを伝えることができない。または、レポートや読書感想文の作成が苦手で、時間ばかりが過ぎてしまう。これらの状況に陥ると、「どうしていいのかわからない」と感じることが多くなるかもしれません。
こうした状態が続くと、人間関係や仕事上のやりとりがスムーズにいかなくなることもあります。それによって、自分に対して不安やストレスを感じる場面も増えてしまうでしょう。しかし、このような「意見を伝えることが苦手」という悩みにも、しっかり向き合うための方法があります。
苦手な理由を理解する
「自分の意見をうまく伝えられない」と感じる方に必要なのは、まずその苦手意識が生まれる理由を整理することです。そして、その理由を踏まえた工夫を実践することが大切です。中でも、発達障害の特性が関わっているケースでは、「中枢性統合」という情報処理機能に関する理解が鍵になります。
中枢性統合とは、個々の情報を結びつけ、全体として意味を持たせる能力のことです。これが弱い特性を持つ方は、例えば、「猫」という概念を形成するのに苦労する場合があります。猫の種類ごとの特徴を覚えることは得意でも、それらを統合して「猫とはこういうもの」と抽象的にまとめるのが難しいという特性です。この特性が「意見を伝える」という行為にどう関係するのでしょうか。
例えば、映画を見た後に感想を求められたとき、映画全体の感想を抽象的に言語化するのが難しい。あるいは、職場で同僚や上司から具体的な意見を求められたときに、何をどう答えれば良いのか分からず言葉が出てこない、といった状況に繋がります。このようなケースでは、抽象的な情報を整理して言語化するプロセスに苦手意識が生まれやすくなります。
意見を言えない理由:3つの観点から
次に、発達障害を持つ方が意見を伝えることが難しい背景について、以下の3つの理由から整理してみます。
1. 中枢性統合の弱さ
中枢性統合の弱さは、情報を結び付け、全体の意味を見出す能力が低いことを指します。具体的には、事実を正確に伝えることは得意であっても、気持ちや感想といった抽象的なことを言語化するのが難しいという特徴です。これにより、会社で意見を求められたり、日常的に感想を言う場面で「うまく表現できない」という状態に繋がります。
2. 興味の偏り
発達障害の方には特定の分野への興味が深い一方、関心が薄い分野に対しての興味を持ちにくい特性があります。この結果、体験の幅が狭くなりやすく、意見を伝える際に必要な材料や経験が不足しがちです。例えば、旅行に興味がない人が「どこへ行きたいか」と問われても、判断材料が少なく意見を言いにくい、というようなケースです。
3. 過去の経験
過去の経験も、自分の意見を言うことへの苦手意識に影響します。特に、叱られた経験や自分の意見が否定された経験が多いと、「どうせ伝えても理解されない」という感覚が強くなります。また、自己肯定感が低下することで、発言そのものに対して消極的になることもあります。このような場合、職場や人間関係といった環境の影響が大きいこともあるため、環境が適切でない場合には負担が増大します。
「なんとなく」の感覚も正解
意見や感想を言語化することは大切ですが、言葉にできない「なんとなく」感じたことを大切にすることも重要です。例えば、講演会に参加してスピーチを聞いた後、「なんとなく良い話だった」と感じるだけでも十分です。言語化することで気づきや整理が生まれることもありますが、無理に言葉にしようとせず、自分の感覚を肯定することが大切です。
意見を伝えるための工夫

最後に、自分の意見を伝えるためにできる工夫についてお話します。
1. 日常的な経験を増やす
友人や家族とその日あった出来事について話したり、普段行かない場所を散歩やドライブしてみるなど、自分の中での経験値を積みましょう。これにより、意見を考える上での材料が増え、言語化する練習にも繋がります。
2. 自分のペースで取り組む
発達障害を持つ方の中には、人との交流が特性上疲れる方もいます。そのため、無理のない範囲で自分のペースで経験を増やし、少しずつ言語化の練習を進めることが重要です。
3. 自分を責めない
意見を伝えることが難しいと感じても、それは個人の性格や努力不足ではありません。むしろ、自分の特性や環境の影響を理解し、それに合った工夫を取り入れることが大切です。
まとめ
「意見を伝えることが苦手」という悩みは、多くの人が抱える課題ですが、その背景には中枢性統合の弱さや興味の偏り、過去の経験といった要因が絡んでいる場合があります。これらを理解し、自分に合った工夫を取り入れることで、少しずつ改善することができます。そして、「なんとなく」の感覚も大切にしながら、自分らしい表現方法を見つけていきましょう。