双極性障害について‪

双極性障害について‪

双極性障害(躁うつ病)について

双極性障害という名前は耳にしたことがある方も多いと思いますが、実際にどのような病気なのか、うつ病や統合失調症との違い、治療のポイント、予後(病気の経過)などを理解している方は少ないかもしれません。今回は「双極性障害(躁うつ病)」について、丁寧に解説していきます。

双極性障害とはどのような病気か

双極性障害とはどのような病気か

双極性障害は、その名の通り「気分が二つの極(躁と鬱)」を行き来する病気です。気分が沈み込む抑うつ状態と、気分が高揚し過活動になる躁状態を繰り返す特徴があります。ただし実際の経過を見てみると、患者さんのほとんどは「鬱状態で過ごす期間」が圧倒的に長く、全体の9割以上を占めるといわれています。

つまり、双極性障害は「ほとんどが鬱状態だが、時に躁状態が現れる病気」と考えると理解しやすいでしょう。鬱状態だけが続くうつ病と比べて、躁のエピソードが加わる点が最大の違いです。

また、躁状態の時は本人は気持ちが良く、エネルギーに満ちあふれていることが多いため、自分自身では病気だと認識しにくいことがあります。しかし周囲からすると行動が過剰で危険だったり、金銭トラブルや人間関係の衝突を招いたりするため、大きな問題となることも少なくありません。

一方で、躁状態そのものは一生のうちで1割にも満たないことが多く、実際には「ほとんどうつ病」と言っても差し支えない病気なのです。

うつ病との違い

うつ病との違い

双極性障害とうつ病の違いは、症状の波だけでなく治療薬の選び方にも表れます。

・うつ病の第一選択薬:抗うつ薬

・双極性障害の第一選択薬:気分安定薬

双極性障害の治療で最も代表的な気分安定薬は「炭酸リチウム」です。リチウムは血中濃度を一定に保つことで、気分の波を安定させる効果が非常に強く、適切に使用すれば副作用も比較的少ない薬です。ただし血中濃度が高すぎると小脳障害など重い副作用が起こる可能性があるため、定期的な採血が必須になります。

このため、採血体制が整っていないクリニックでのリチウム投与は避けるべきです。逆に言えば、しっかりと血中濃度をモニタリングしながら使用すれば「最強の気分安定薬」と言える存在です。

リチウム以外にも、バルプロ酸(デパケン)、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)など、もともとてんかん治療薬として使われてきた薬も気分安定薬として有効です。リチウムほどの強力さはないものの、長年の実績があり、実臨床で広く使用されています。

抗うつ薬との関係

抗うつ薬との関係

双極性障害の治療で最も注意が必要なのは「抗うつ薬の使い方」です。

双極性障害の患者さんは9割が鬱状態で過ごすため、気分を持ち上げる目的で抗うつ薬を処方されることがあります。しかし、抗うつ薬を単独で使用するのは絶対に避けるべきとされています。なぜなら、抗うつ薬によって気分が急激に躁状態へと切り替わる「躁転」が起こりやすく、その際には自傷や自殺のリスクが格段に高まるからです。

したがって、双極性障害では必ず気分安定薬を基本とし、その上で必要に応じて抗うつ薬を補助的に加えるというのが原則になります。これはうつ病と大きく異なる治療戦略です。

また、患者さん自身が誤解しやすい点として「薬を飲むから鬱状態が続くのでは?」という疑問があります。実際には、気分のエネルギーの総量はある程度一定であり、躁状態を抑えることで結果的に鬱の底も浅くなります。つまり、薬は躁を抑えるだけでなく、鬱を軽くする効果も持っているのです。この仕組みを理解してもらうことが、服薬継続の大切さを伝える上でとても重要になります。

双極性障害の予後(病気の見通し)

双極性障害の経過は「波がある」という点でうつ病と異なります。

・うつ病:普通 → うつ → 普通 → うつ … 平均すると「半分はうつ状態」

・双極性障害:ハイテンション(躁)とローテンション(鬱) … 平均すると「エネルギーは通常レベル」

つまり、双極性障害は気分の波は激しいものの、エネルギーの総量としては保たれていることが多いのです。適切な治療と生活習慣の工夫を続ければ、日常生活に支障をきたしにくくなる可能性も高いと考えられています。

一方で、双極性障害は体質や遺伝の影響が大きいため、薬物療法を長期的に続ける必要があるケースがほとんどです。うつ病のように思考の癖を修正することで薬を卒業できるケースは比較的少なく、双極性障害では「付き合い続ける病気」としての側面が強いといえるでしょう。

まとめ

まとめ

双極性障害(躁うつ病)は、うつ病と統合失調症の要素を一部併せ持つ病気であり、理解する際には「ほとんどうつ病、時に躁状態が現れる」というイメージが適切です。

・鬱状態が9割以上を占める

・躁状態は本人にとっては気持ちが良いが、周囲には迷惑となることが多い

・治療の第一選択は気分安定薬(特にリチウム)

・抗うつ薬は必ず気分安定薬と併用し、単独使用は避ける

・薬物療法は長期にわたり必要になるケースが多い

適切に治療を続けることで、エネルギーの総量を保ちながら安定した生活を送ることは十分可能です。重要なのは「薬を続ける意味」を理解し、医師と相談しながら治療を継続していくことです。

双極性障害は決して治らない病気ではありません。むしろ正しく向き合えば、うつ病よりも日常生活を取り戻しやすい面もあります。波のある気分と上手に付き合いながら、自分らしい生活を築いていくことが、双極性障害と共に生きるための大切なポイントです。