ODとは、普段出されている薬を決められた量より多く飲んでしまうことを指します。具体的には、普段の数倍や数十倍の量を一度に飲んでしまうケースや、いつも処方されている薬を貯めておいてある程度まとめて飲んでしまう場合などがあります。周囲では「意識がなくなって救急で運ばれる」というイメージが強いですが、実際はそれだけではありません。背景には本人の深い苦しみや助けを求める気持ちが隠れていることが多く、表面的な行為だけを見るのではなく、その背景にある心の状態や生活環境に目を向けることが大切です。

ODで最初に気をつけるべきことは、本人の呼吸の状態です。薬の影響で非常に眠たくなり、声をかけても反応が鈍くなることがあります。呼吸が浅くなったり、速くなったり、あるいは途切れがちになったりする場合は危険です。もしそうした状態が見られたら、すぐに救急に連絡して助けを求める必要があります。自宅で対応する際には、うつぶせや顔を下に向けたままになっていないか確認し、可能であれば横向きにして気道が確保されるよう配慮してください。冷静に、しかし迅速に行動することが重要です。

ODは単なる行動ではなく、多くの場合「助けて」という合図です。言葉で「つらい」と伝えられない、あるいは伝えても適切な反応がもらえないと感じたとき、人は行動で存在を示そうとします。周囲から見ると「またか」「かまってほしいだけ」と受け流されがちですが、本人は本気で追い詰められた苦しさを抱えています。繰り返すうちに周囲の反応が冷たくなると、本人の孤独や絶望はさらに深まり、より危険な行為に踏み切るリスクが高くなります。だからこそ、初期の段階から真剣に受け止め、適切な支えや治療につなげることが大切です。
ODを何度も繰り返すと、周囲は「様子見」で済ませがちになり、本人は助けを求めても届かないと感じます。これが続くと、SOSの出し方がエスカレートし、例えば高い場所から飛び降りるなど、命に関わる行動に移ることもあり得ます。繰り返しを「悪い癖」と片づけず、どんな小さなサインでも見逃さないことが、危険の連鎖を断つ第一歩です。

外から見ただけではわからないことが多く、入院することで得られる利点は少なくありません。入院中は安全が確保されますし、日中や夜間の変化を専門家が継続して観察できます。これにより、薬の調整や生活の見直しがスムーズに進み、回復までの時間を短くできることがあります。また、入院は医師だけでなく看護師やカウンセラーと出会う機会にもなり、これまで話せなかった悩みを整理するきっかけになります。家での外来に比べて、さまざまな支援を同時に受けられるのが入院の大きな強みです。
薬の調整だけでなく、話を聞いてもらうことも回復には重要です。カウンセリングでは、自分の思いを言葉にしていくことで、「なぜそうなったのか」「次はどうすればいいのか」を一緒に考えていけます。入院中にカウンセリングにつながる人は、退院後も継続して相談を続けられる場合があります。費用が自己負担になるケースもありますが、継続的な支えが回復につながることは多いです。

ODをした人は「迷惑をかけてしまった」と強く思いがちで、退院を急ぐことがあります。しかし、そこで安易に帰してしまうと再発のリスクが高まります。周囲の人は責めるのではなく、「つらいね」「一緒に治療を受けよう」といった受け止めの言葉を持ち、専門家や相談窓口と連携する姿勢が必要です。たとえ繰り返しがあっても、その一つひとつが大事なサインであることを忘れないでください。
アルコールや外出中の事故など、他の要因と重なると危険性は高まります。単に眠ってしまうだけで命を失うケースは多くないとはいえ、放置は決して安全ではありません。
日常から支えを作ることが予防につながります。信頼できる人に今の気持ちを話せる関係づくり、定期的に相談できる窓口の確認、薬を管理しやすくする工夫(家族と一緒に保管する、薬の量を適切に保つなど)があります。また、周囲の人が本人の言葉を軽く受け流さず、小さな変化にも気づいて声をかけることが重要です。
ODは決して本人の「わがまま」や「かまってほしいだけ」ではありません。深い苦しみの表れであり、適切な対応と支えがあれば回復の道はあります。もしあなた自身や身近な人がそのような状態にあるなら、まずは話を聞くこと、そして専門の窓口や医療機関に相談することを考えてください。小さな一歩が、その人の命と暮らしを大きく変えることがあります。どんなに辛くても、助けを求めることは恥ずかしいことではありません。あなたの声は、誰かの救いになります。