
その特徴と生きづらさについて
ASD(自閉スペクトラム症)の特性は、多様性に富んでおり、人によって現れ方が異なります。
その中でも「受動型タイプ」と呼ばれる特性をご存じでしょうか。
自分から積極的に他者に関わることは少ないものの、他人を拒絶することなく、受け身の姿勢で対人関係を築くタイプを指します。
受動型は日本人に最も多くみられるタイプといわれていて特に男性よりも女性に多いともいわれています。
この記事では、受動型タイプの特徴を3つに分けて解説し、その生きづらさや注意すべきポイントを具体的なエピソードを交えながらお伝えします。
受動型タイプに心当たりのある方や、周囲に当てはまる方がいる場合の理解を深める一助になれば幸いです。
1.周りに合わせる傾向が強い
受動型タイプの特徴の一つは、周囲に合わせることを重視する点です。
この傾向は対人関係において一見「協調的」「トラブルを起こさない性格」として捉えられることがあります。
<エピソード:佐藤さんの場合>
例えば、ASDで受動型の佐藤さんという方のエピソードがあります。彼女は基本的に自分から積極的に他人に関わることはありませんが、相手からの誘いや要望を拒絶することもありません。友人たちと夕食に出かける際、行き先やメニューの選定に関して特に意見を述べることはなく、周囲が決めた内容に従います。「焼肉」と決まれば焼肉に、「お寿司」と決まればお寿司に、といった具合です。
職場でも同様で、会議や業務分担について決定事項に異を唱えることはなく、指示された仕事に対して素直に取り組むため、上司や同僚から「大人しい」「素直」と評価されることが多かったといいます。
<生きづらさと注意点>
しかし、この「周りに合わせる」姿勢が、必ずしも本人にとって良い結果をもたらすわけではありません。例えば、頼まれた仕事を断れずに抱え込みすぎる、自分が苦手なことでも一生懸命取り組もうとするあまり、気づかぬうちにストレスが溜まってしまうことがあります。加えて、他人に合わせることで緊張状態が続き、心理的な負荷を蓄積させてしまうケースも少なくありません。
佐藤さん自身も「幼い頃から周囲に溶け込むことで安心感を得ていた」と振り返っており、周りに合わせることが自分を守る手段だったと語っています。
2.自分の意見を言うことが苦手
受動型タイプのもう一つの特徴は、「自分の意見や感想を言うのが苦手」という点です。
感情や考えを言語化することに難しさを感じるため、他者に自分の気持ちを伝える場面で戸惑うことがあります。
<エピソード:映画鑑賞後の会話>
例えば、友人と映画を観た後に感想を求められた際、「楽しかった」の一言で終わってしまうことがあります。実際に楽しい気持ちを抱いているのですが、それを具体的に言語化するのが難しいため、他者からは「本当に楽しいと思ったのか」「あまり気に入らなかったのか」と誤解されることもあります。
この言語化の苦手さには、ASDの特性が関係していると考えられます。例えば、記憶や体験が個別のファイルのように独立して保存されており、それを引き出して結びつけることが難しい、といった認知の仕組みが背景にある場合があります。
<生きづらさと注意点>
こうした特性から、受動型タイプの人は会議や討論の場で意見を求められることに苦痛を感じやすくなります。特に「どう感じた?」といったオープンクエスチョンに苦手意識を持ちやすく、結果的に「話してくれないとわからない」と言われて傷つくこともあるのです。
また、意見を言えないことが原因で他者の考えに流されやすくなり、結果的に自分の意志を押し殺してしまうこともあります。
3.表に出さない「こだわり」を持つ
最後に挙げる特徴は、「表には出さないが、内心では強いこだわりを持っている」という点です。
受動型ASDの人はおとなしくて周りに合わせる傾向があるため、強いこだわりがあるようには思えないのですが、実はASDの特性であるこだわりの強さは持っているのです。
ただ、そのこだわりを相手には見せていないだけなのです。何か自分のこだわりに反することに触れたときはあえて何も反応せずに過ごすこともあるのです。
<エピソード:佐藤さんの対処法>
佐藤さんの場合、こだわりに反することが起きた際、場の空気を乱さないために何も反応しないことが多いといいます。しかし、心の中ではモヤモヤが募り、処理しきれなくなると突然感情が爆発することもあるそうです。
<生きづらさと注意点>
このような内心のこだわりを抱え込む傾向が、ストレスを増幅させる一因となることがあります。また、自分のこだわりを言語化して伝えられないことで、周囲との間に溝が生まれることもあるため、適切な支援や自己理解が必要です。

受動型タイプのASDを持つ人が生きやすくなるために、次の2点を意識することが大切です。
1.ストレスや疲れを見逃さない
受動型タイプの人は、ストレスや疲労を抱えやすい一方で、それに気づきにくい傾向があります。うつ、不安障害、睡眠障害などといった二次障害にも気を付ける必要があります。
大切なことは自分の力を適切に発揮できる環境選びと自分の疲れのサイン、疲れの状態について知る工夫です。
自分の疲れについては数字を使って整理してみることをお勧めします。そこに季節やイベントなども加えて整理してみると疲れやすい時期の把握などに役立つかもしれません。
自分の疲労や限界を理解するために、日常的に心身の状態をチェックし、記録する習慣をつけると良いでしょう。
2.人間関係の違いを理解する
人付き合いの考え方には個人差があります。
受動型タイプの人は「安心感」を大切にする傾向が強い一方で、定型発達の人は安心感を大切にはするもののそこに加えて楽しさを求める傾向も強くあります。
ですので、定型発達の人は相手のことを知ろうとたくさんの雑談などで会話を振って楽しもうともするのですが、自分の意見などを伝えることに苦手感がある受動型タイプの人にはこういった会話にどこか息苦しさを感じたりします。
これはどちらかの考えが正しいということではなく、それぞれに人間関係の築き方の考えがあって求めるものが違うということです。
この違いを理解し、お互いの考えを尊重することで、より良い人間関係を築ける可能性が高まります。
ASDの受動型タイプには以下の3つの特徴があります。
いかがでしたでしょうか?自分や周囲の人の理解を深め、より良いコミュニケーションを築く参考にしていただければ幸いです。