うつ病は現代社会において多くの人が経験し得る病気であり、その背景には脳内物質の働きが関係していると考えられています。特に有名なのが「セロトニン仮説」で、大脳の神経細胞間で働くセロトニンが不足することで、抑うつ気分や意欲の低下といった症状が現れるというものです。気持ちの落ち込み、やる気が出ない、外出できず引きこもってしまう――こうした状態は、うつ病における二大中核症状と呼ばれています。
では、うつ病の回復に役立つ生活習慣とはどのようなものでしょうか。本記事では、休職を余儀なくされた方の回復過程をモデルケースにしながら、うつ病に良い生活習慣と避けたい習慣について整理していきます。
うつ病で休職した場合、その期間は人によって異なりますが、よく取り上げられるのが「3か月コース」です。もちろん全員に当てはまるわけではありませんが、ひとつの参考として回復の流れをみてみましょう。
重要なのは、うつ病の回復が「やる気に満ちあふれる状態」に直結するわけではないという点です。むしろ「何もしない退屈さを避けるために、少し活動してみようか」と感じられる程度が自然な回復のプロセスです。誤解されがちですが、元気いっぱいになるのは躁状態に近く、双極性障害の可能性もあります。うつ病の回復とは、地味ながらも少しずつ生活の幅を取り戻す過程なのです。

うつ病の回復を促すには、「暇にすること」が大切だといわれます。ここでの「暇にする」とは、日常生活の中で「やらなければならないこと」を極限まで減らすことを意味します。
食事
毎日の手料理が負担であれば、思い切ってレトルト食品や冷凍食品を活用しましょう。現代の食品は栄養面でも工夫されており、最低限の健康を維持するには十分です。食事を「作る」ことよりも「摂る」ことを優先することが回復につながります。
入浴
入浴についても毎日が理想ですが、最低限は週2回でも問題ありません。老人ホームや刑務所でも週2回は入浴が保証されています。それを一つの目安に、無理なく継続できる頻度を守ればよいのです。
このように生活をシンプルにしていくと、「暇」が生まれます。その退屈さが「何かしてみようかな」という自然な意欲の芽生えにつながっていくのです。

一方で、うつ病を長引かせてしまう生活習慣もあります。特に注意すべきなのは「昼夜逆転」と「アルコール摂取」です。
昼夜逆転
昼間眠り、夜に活動する生活は、意欲の低下を固定化させてしまいます。人間は太陽の光を浴び、昼間に活動することで自然と気持ちが前向きになりやすい仕組みを持っています。逆に夜型の生活を続けると、引きこもりや抑うつ状態が慢性化するリスクが高まります。理想は「午前0時までに寝て、朝9時までに起きる」こと。太陽とともに生活リズムを整えることが、回復への第一歩となります。
アルコール摂取
もうひとつ大きな妨げになるのがアルコールです。特に連続飲酒、すなわち朝から晩まで飲み続ける生活は、酔った状態を利用して「何も感じない」時間を作ってしまいます。その結果、抑うつ状態が固定化され、回復を著しく遅らせます。うつ病からの回復を目指すなら、アルコールはできる限り避けるべきです。

では、うつ病の回復にプラスとなる生活習慣にはどのようなものがあるでしょうか。
うつ病の回復には「劇的な改善」よりも「小さな習慣の積み重ね」が大切です。昼夜逆転とアルコール摂取という二大悪習慣を避け、生活を最小限にシンプル化して暇をつくる。そのうえで、規則正しい生活リズム、適度な運動、最低限の身の回りのケアを続けることが、自然な回復を後押しします。
回復の道のりは人それぞれですが、「何もしないより、ちょっとやってみようかな」という小さな気持ちの変化こそが、うつ病から立ち直るための確かな一歩になるのです。