コンプレックスについて

コンプレックスについて

コンプレックスとの向き合い方 ― 受容と対策の視点から

私たちが生きていくなかで、多かれ少なかれ「コンプレックス」に悩むことは避けられません。外見や体質、性格や能力、さらには病気や障害に至るまで、人によってその内容はさまざまです。時にそれは人生を重くし、日々の生活に大きな影響を与えることもあります。

では、そうしたコンプレックスに私たちはどのように向き合い、どう受け止めていけばよいのでしょうか。本記事では「コンプレックスを肯定的にとらえる視点」と「現実的に対策を立てていく視点」という二つの考え方を軸に、いくつかの例を交えながら考えていきたいと思います。

1. コンプレックスを肯定的にとらえるという考え方

1. コンプレックスを肯定的にとらえるという考え方

まず一つのアプローチは「ネガティブに見える特徴のなかにもポジティブな側面を見出す」方法です。

発達障害の例

たとえば、自閉スペクトラム症(ASD)は「空気が読めない」という点が大きな困難として挙げられます。対人関係で誤解を受けやすく、孤立感を覚えることも少なくありません。しかし見方を変えれば、「他人の目を過剰に気にしない」ことで、自分の興味や関心に集中しやすいという長所にもなり得ます。

また、注意欠如・多動症(ADHD)も同様です。注意力が散漫で落ち着きがないことは日常生活での支障となりますが、一方で「多様なものに興味を持てる」「好奇心が旺盛で行動力がある」といった側面もあります。そのため、さまざまな分野を探求し、自分の可能性を広げていく力につながる場合もあるのです。

このように「欠点」とされる部分を別の角度から見ることで、その人自身を少しずつ受け入れていく助けになります。

2. どうしても「良い面」が見つからない場合

2. どうしても「良い面」が見つからない場合

しかしながら、すべてのコンプレックスを肯定的にとらえるのは難しいのも事実です。

例えば、アトピー性皮膚炎に長年悩まされていらっしゃる方がいるとします。食事に気をつけなければならず、卵を口にすると肌が荒れ、重症化すればただれてしまうこともあります。保湿やスキンケアを怠れば症状は悪化し、日常生活に大きな支障をきたします。

さらに、日光アレルギーや多汗症も抱えており、これらに「良かったこと」は一つも見いだせません。日差しを避け、常に日焼け止めや長袖を身につけ、汗への対処のためタオルや着替えを持ち歩く。こうした工夫を欠かさなければ生活が成り立たないのです。

このように、どう考えても「ポジティブな解釈」が難しいコンプレックスも確かに存在します。

3. 少しずつ受け入れていくという姿勢

3. 少しずつ受け入れていくという姿勢

では、否定的にしか思えないコンプレックスとどう向き合うべきか。ここで重要になるのが「段階的な受容」です。

いきなり100%受け入れることは到底できません。そこで、例えば100の嫌なことがあったら、まずは10だけを「仕方ない」と受け入れてみる。そして少しずつ、その範囲を広げていく。この積み重ねが、最終的に現実を受容する力となっていきます。

ASDやADHDの方が自分の特性を肯定的に解釈するのも、この「受容のプロセス」を進める一助となります。直接的には不便であっても、「自分には集中力がある」「多彩な興味を持てる」と感じることで、少しずつ自分自身を肯定的に見つめられるようになるのです。

4. 精神的な疾患とコンプレックス

身体的な特徴や発達障害だけでなく、精神疾患もまた大きなコンプレックスとなり得ます。

うつ病の場合

うつ病の方は「自分の限界を越えると壊れてしまう」という現実を身をもって知っています。そのため、常に精神的な負荷を意識し、無理をしないよう調整しながら生きなければなりません。

多くの人はイベントや仕事で多少無理をしても「あとで休めばいい」と考えますが、うつ病の方にはその余裕がありません。だからこそ「負荷のコントロール」を日常的に意識せざるを得ないのです。これは苦しいことではありますが、裏を返せば「自分を大切にしながら生きる力」を得ているとも言えるでしょう。

統合失調症の場合

統合失調症の方もまた、薬の服用や生活習慣の管理を徹底しなければ生活が崩れてしまいます。健常者に比べれば不自由ですが、ストレスのコントロールや規則正しい生活を意識することは、実は誰にとっても大切なことです。

また、筆者の印象では、統合失調症の方は素直でひねくれのない性格の方が多いように思います。他人を激しく非難する、攻撃的になる方は少なく、むしろ温和で柔らかい人柄を感じることが多いのです。もちろん「統合失調症で良かった」とは言えませんが、それでも人間的な魅力を持っていることは確かです。

5. コンプレックスとともに生きる

5. コンプレックスとともに生きる

結局のところ、コンプレックスは「ないに越したことはない」ものです。しかし誰もが何かしら抱えているのも事実です。だからこそ大切なのは、

  • 完全に良い方向に考えようと無理をしすぎないこと
  • 少しずつ受け入れ、現実に即した対策を積み重ねていくこと

この二つではないでしょうか。

アトピー性皮膚炎であれば保湿や食事制限、日光アレルギーであれば紫外線対策、うつ病や統合失調症であれば負荷コントロールや服薬・生活習慣の徹底。そうした具体的な対策を行うことで、コンプレックスは「生きていけないもの」から「うまく付き合っていけるもの」へと変わっていきます。

おわりに

コンプレックスは、私たちの人生から消し去ることはできません。ですが、それを完全に否定するのではなく、時には肯定的にとらえ、時には現実的な対策を講じながら、少しずつ受け入れていくことが大切です。

誰もが何かしらの弱点や悩みを抱えています。それを一つひとつ認め、対策を立てていく過程こそが、自分らしく生きる力につながっていくのではないでしょうか。