「頑張りすぎちゃだめだよ」「ちょっと手を抜いたっていいんじゃない?」「たまには頑張らないでいこうよ」
こうした言葉を耳にしたことがある方は多いと思います。アドバイスとしてはとても優しい言葉に聞こえますが、いざ自分が言われると「じゃあどうしたら頑張らないでいられるんだろう?」と戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、「頑張らないで」と言われてすぐに力を抜ける人はほとんどいません。むしろ真面目な人ほど「頑張らないこと」がいちばん難しい課題になります。今回は、「頑張らない」とはどういうことなのか、どうすれば少しずつ取り入れられるのかを、ゆっくり考えていきたいと思います。

まず最初に誤解を解いておきたいのですが、「頑張らない」というのは決して「何もしない」「手を抜いてだらける」ということではありません。
人は誰でも、頑張りすぎると心も体も疲れ果ててしまいます。特に「自分に自信がない」「人からどう見られるかが気になって仕方ない」という人ほど、周囲の期待に応えようとして無理をしがちです。褒められたい、認められたいという気持ちは誰にでもありますが、それが強すぎると、自分を犠牲にしてでも頑張り続けてしまうのです。
そうした頑張りは、ある時まではうまくいくかもしれません。しかし、限界を越えると一気に心も体も壊れてしまいます。だからこそ「頑張らない」とは、怠けることではなく、自分を守るために“ほどよく力を抜くこと”だと理解してほしいのです。

「頑張らなきゃ落ち着かない」という人がいます。これは、自分を認める気持ちが弱く、常に「もっとやらなきゃ」「まだ足りない」と思ってしまう人に多い特徴です。
また、周囲の人が頑張っている姿ばかり目に入ってしまうのも理由のひとつです。職場や学校では、人の目があるところでは誰でも一生懸命やっているように見えます。でも、実際には見えないところで休んだり、上手に手を抜いている人がほとんどです。ところが、自分だけは「みんなが頑張っているんだから、ずっと頑張らなきゃ」と思い込んでしまい、どんどん無理を重ねてしまうのです。
さらに、日本の文化的な背景も関係しています。日本では「結果」よりも「過程」を重視する傾向が強く、「一生懸命やっている姿」が美徳とされがちです。上司から見ても、要領よく成果を出す部下より、夜遅くまで残って苦労している部下のほうが“頑張っている”と評価されやすいのです。そうした空気が、「頑張り続けなければならない」という思い込みを生みやすくしているのです。

では、どうすれば頑張りすぎを防ぎ、ほどよく力を抜けるのでしょうか。ポイントは「いきなり全部やめようとしない」ことです。頑張らないことも一種の技術であり、練習が必要です。
「終わらないから帰れない」と思うかもしれませんが、一度思い切って途中で切り上げて帰ってみることが大切です。実際に帰ってみても、意外と大きな問題は起きないことが多いものです。その経験が「早く帰っても大丈夫なんだ」という安心感につながります。
毎日手作りの食事を用意している人も、たまにはお惣菜や宅配を利用してみましょう。手を抜いたからといって家族の絆が壊れることはありません。むしろ自分が元気でいることのほうが大切です。
頼まれたことを断れず、つい引き受けてしまう人も多いでしょう。でも、時には「今はできません」と伝えることも必要です。もちろん毎回ではなくても、少しずつ言えるようになれば、気持ちがぐっと楽になります。
調子が出て「もっとやりたい!」と思うときほど、あえて途中でやめてみるのも練習です。気持ちは物足りないかもしれませんが、無理に続けるよりも自分を守ることができます。
夏休みの宿題を思い出してください。すぐに取りかかる人もいれば、ぎりぎりまで引き延ばす人もいます。前者の人は「早めにやらないと不安だから」と頑張りすぎる傾向があるので、あえてギリギリまで待つ練習をすると、ほどよいブレーキになります。

「頑張らない」は、ただ怠けることではなく、自分の心と体を守るために必要な技術です。最初は難しく、失敗もあるかもしれません。ですが、少しずつ実践しながら「これくらい手を抜いても大丈夫なんだ」と体験していくことが大切です。
社会で生きている以上、すべてを投げ出すことはできません。でも、常に全力で走り続ける必要もありません。むしろ、力を抜くことを覚えることで、長く元気に走り続けることができるのです。
「頑張らない」は勇気のいる選択です。けれども、その勇気があなたを守り、日々をもっと心地よくしてくれるはずです。
どうか皆さんも、少しずつ「頑張らない勇気」を試してみてください。