不安への対処法

不安と向き合うために ~心を落ち着ける準備と実践の工夫~

不安とは何か

不安とは何か

私たちは日常のなかで「心配」や「不安」という言葉をよく使います。両者は似ているように思えますが、実は意味が少し異なります。たとえば「試験に合格できるかどうか」「家族が無事に帰ってくるか」といった、はっきりと対象のあるものに心を乱されるとき、それは「心配」と表現されます。

一方で、不安には明確な対象がありません。何が原因かわからないけれど、胸の奥がざわつき、落ち着かず、安心できない――その漠然とした感覚を「不安」と呼びます。

不安への備えは「平穏なとき」に

不安が高まったとき、人は冷静な判断が難しくなります。そのため大切なのは、不安が強まる前、つまり比較的心が安定しているときに「不安への備え」をしておくことです。これはちょうど自動車保険の仕組みに似ています。事故が起きてから慌てて保険に入るのではなく、平常時から毎月保険料を払い続けることで、いざというときに助けてもらえる――不安への対応も同じように、あらかじめ準備しておくことが重要なのです。

薬による対処

薬による対処

最も身近な準備の一つが、頓服薬の利用です。頓服薬とは「症状が強まったときにその都度服用する薬」のこと。不安が高まったときに飲むことで心を落ち着ける助けとなります。

よく使われる抗不安薬には、ロラゼパム(ワイパックス)、アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)などがあります。また、場合によっては抗精神病薬のリスペリドン(リスパダール)やクエチアピン(セロクエル)が処方されることもあります。これらの薬は、不安が最高潮に達してから新しく手に入れるものではなく、不安が比較的落ち着いているときに医師から処方を受け、必要なときに備えておくことが前提です。

薬は即効性が期待できる方法ですが、副作用や依存のリスクもあるため、必ず医師の指示に従って使用することが大切です。

瞑想という方法

瞑想という方法

薬に加えて、不安に効果的なセルフケアとして「瞑想」があります。不安が強まっているとき、人の心は未来や過去にとらわれ、否定的な思考に支配されがちです。そんなとき、あえて「今、この瞬間」に意識を集中するのが瞑想です。

瞑想では、静かな場所で目を閉じ、心臓の鼓動や呼吸、指先の感覚など「必ず存在している身体の感覚」に注意を向けます。指と指が触れている感触、胸が上下するリズム、息を吸ったり吐いたりする流れ――これら一つひとつに意識を向け続けるのです。

最初は集中が難しく「できない」と感じることもあるでしょう。しかし、練習を重ねることで少しずつ上手になります。大切なのは、不安が強くないときから練習しておくこと。不安に飲み込まれそうなときに初めて挑戦するのは難しいため、普段から「心の筋トレ」として続けておくことがポイントです。

内因性ドパミンを活かす

内因性ドパミンを活かす

不安への対処には「内因性のドパミン」を活用する方法もあります。ドパミンは脳内の神経伝達物質で、快感ややる気に関わるものです。精神医学では、統合失調症やアルコール依存症などの文脈で「過剰なドパミン」が悪影響を及ぼすと語られることが多いですが、自分の体から自然に分泌される適度なドパミンは、不安や抑うつを和らげる力を持っています。

では、どのようなときにドパミンが分泌されるのでしょうか。代表的なのは運動や発汗です。ジョギングやウォーキング、半身浴などでしっかり汗をかき、心拍数を少し上げると、爽快感が得られることがあります。これは内因性のドパミンが働いている証拠です。

また、辛い食べ物を食べて汗をかいたり、カラオケで大声を出したりするのも有効です。自分に合った方法を見つければ、不安な気分を切り替える助けとなるでしょう。

ただし、人によって好みや体質はさまざまです。運動が苦手な方に無理に走ることを勧める必要はありませんし、お風呂嫌いの方が半身浴をしてもリラックスできないかもしれません。自分に合った方法を探すことが大切です。

不安計画を立てる

不安計画を立てる

最後におすすめしたいのが「不安計画」を立てることです。これは、不安が強まったときにどう対応するかを、あらかじめ具体的に決めておくという方法です。

例えば、

  • 不安が出てきたらまず深呼吸をする
  • それでも落ち着かなければ頓服薬を飲む
  • 薬を飲んだ後は10分間、心臓や呼吸に意識を向けて瞑想する
  • まだ辛ければウォーキングをして汗をかく

このように手順を決めておくと、不安に押し流されるのを防げます。医師や心理士、看護師と一緒に計画を立てれば、安心感も増すでしょう。「備えがある」と思えるだけで、不安の発生そのものを軽減する効果も期待できます。

まとめ

まとめ

不安は対象のない漠然とした不快感であり、誰にでも起こり得るものです。けれども、あらかじめ備えをしておくことで、不安に振り回されずに済む可能性が高まります。薬を適切に使う、瞑想で心を落ち着ける、運動や半身浴でドパミンを引き出す、そして「不安計画」を立てておく。

不安を完全になくすことは難しくても、こうした工夫を重ねることで「不安と共に生きる」道は必ず開けます。大切なのは「不安に襲われたその瞬間」ではなく、「不安がないときにどう準備するか」。その積み重ねが、安心に近づくための第一歩となるのです。