統合失調症と双極症、両者の違いと、共通点について

統合失調症と双極症、両者の違いと、共通点について

はじめに

精神疾患のなかでも「統合失調症」と「双極症」はしばしば比較され、また混同されることがあります。両者はともに「精神病」に分類されますが、特徴や症状、治療法には明確な違いが存在します。一方で、妄想や気分の波といった共通点もあり、診断の際に見分けるのが難しい場合も少なくありません。本記事では、それぞれの特徴を整理しながら、両者の違いと共通点について解説していきます。

精神病という共通の枠組み

精神病という共通の枠組み

統合失調症も双極症も、精神医学的には「精神病」のカテゴリーに含まれます。精神病とは、脳内の神経伝達物質、特にドパミンが過剰に働くことで感覚が過敏になり、最終的には幻覚や妄想に至る状態を指します。統合失調症や双極症のほか、アルコール精神病や覚醒剤精神病もこの枠組みに入ります。

つまり両者は出発点として「脳内の働きの異常により現実感が揺らぐ病気」であるという共通点を持っています。そのため、妄想が見られたり、社会生活に影響が出るなどの類似点があるのです。

統合失調症の特徴

統合失調症の中心は、幻覚や妄想といった「陽性症状」です。たとえば「誰かに監視されている」と感じる被害妄想や、実際には存在しない声が聞こえる幻聴などが代表的です。

一方で、症状が落ち着くと「陰性症状」が目立つようになります。これは無気力、虚無感、感情の乏しさなど、エネルギーが枯渇したような状態です。周囲から見ると、躁状態やうつ状態のように見えることもあり、双極症と区別がつきにくい点があります。

双極症の特徴

双極症は「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す病気です。

  • 躁状態では、活動性が過剰になり、睡眠を取らなくても平気に感じたり、金銭や対人関係で無謀な行動を取ったりします。重症化すると「自分は神だ」「何でもできる」といった誇大妄想に囚われることもあります。
  • うつ状態では、反対に気分が極端に沈み、自分を過小評価する「微小妄想」が現れることがあります。「自分は罪深い人間だ」「病気で長く生きられない」「お金がなく破滅する」といった罪業妄想や心気妄想、貧困妄想に悩まされることもあります。

このように、双極症もまた妄想を伴うため、精神病の一種といえます。

妄想の種類の違い

妄想の種類の違い

妄想の内容は病気ごとに特徴があります。

  • 統合失調症:被害妄想、注察妄想(誰かに見られていると感じる)などが中心
  • 双極症:躁状態では誇大妄想、うつ状態では微小妄想が中心

この違いが診断の大きな手がかりとなりますが、「妄想がある」という点では共通しているため、誤診や診断の難しさにもつながります。

患者数と社会的イメージの違い

統合失調症は人口の約1%が罹患するとされ、双極症よりも患者数ははるかに多いといわれています。しかし、ネット上の体験談や社会での自己申告を見ていると、双極症とされる人の方が目立つ場面もあります。これは「双極症」という診断が比較的受け入れやすく、また医師も説明しやすいという背景があると考えられます。

気分の浮き沈みは誰にでも起こりうるため、双極症は「普通の人の延長線上にある病気」として捉えられやすい一方、統合失調症は「幻覚や妄想」という理解しにくい症状が前面に出るため、恐怖感を伴い受け入れられにくいという現実があります。

病名の変遷と社会的受容

双極症は以前「躁うつ病」と呼ばれていましたが、差別的なニュアンスを避けるため「双極性障害」、さらに近年では「双極症」という名称に変わってきました。

病名が柔らかくなったことで社会的に受け入れられやすくなりましたが、その一方で軽く扱われる危険性もあります。本当に重症の双極症は、躁状態で社会的信用を大きく失ったり、うつ状態で深刻な自殺リスクを抱えたりするなど、極めて重い病気です。「気分の波が少し大きいだけ」と軽視されるのは問題だといえるでしょう。

一方で、統合失調症は昔から「得体の知れない怖い病気」とのイメージが強く、診断を受け入れるのが難しい病名とされています。アルコール依存や発達障害など、別の理由にして説明されるケースも少なくありません。

治療法の違いと共通点

治療法の違いと共通点

治療の柱は両者ともに「薬物療法」「生活習慣の改善」「カウンセリング」の三本柱です。ただし、中心となる薬は異なります。

  • 統合失調症:抗精神病薬が必須。これがないと幻覚や妄想は改善しにくい。
  • 双極症:気分安定薬が主軸。リチウムやバルプロ酸などが代表的で、症状に応じて抗精神病薬を併用する場合もある。

両者とも薬物療法が最も重要である点は共通していますが、どの薬を主に使うかには明確な違いがあります。

おわりに

おわりに

統合失調症と双極症は、いずれも脳の機能に関わる重大な精神疾患です。両者には妄想や気分の変化といった共通点があり、診断の難しさを伴います。しかし、妄想の内容や気分の波の現れ方、そして治療に用いる薬の種類など、重要な違いも存在します。

社会的なイメージや病名の受け入れやすさは病気の認識に影響を与えますが、どちらも軽視できない深刻な病であることに変わりはありません。正しい理解を持ち、差別や誤解のない社会であることが望まれます。そして、病名にとらわれるのではなく、適切な診断と治療を受け、安心して生活できる環境が整うことが何より大切です。