統合失調症って治療しないとどうなるの?

統合失調症を治療しないとどうなるのか

統合失調症を治療しないとどうなるのか

統合失調症について、「治療を受けなければどうなってしまうのか」というご質問をしばしばいただきます。実際のところ、治療の重要性は多くの医療従事者や支援者から繰り返し語られていますが、「具体的に治療しなかった場合にどのような経過をたどるのか」について、体系的に論じられた情報は意外に少ないように感じます。そこで本稿では、統合失調症を治療しない場合に起こり得ることについて整理し、あわせて治療継続の大切さを考えてみたいと思います。

統合失調症とはどのような病気か

統合失調症とはどのような病気か

統合失調症は、主に幻覚や妄想といった症状を特徴とする精神疾患です。医学的には「精神病」に分類され、その中でも体質的な要因が関与していると考えられています。脳内の神経伝達物質であるドーパミンが過剰に分泌されることで、神経が過敏になり、現実と空想の境界があいまいになることが発症の背景にあるとされています。

一般的には「幻覚や妄想を伴う病気」として知られていますが、実際にはより本質的な症状は「場にそぐわないドーパミンが放出されることによる違和感」であるともいわれています。この違和感が積み重なることで、思考や感情のバランスが崩れていきます。

治療をしない場合に起こり得ること

治療をしない場合に起こり得ること

統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」と「陰性症状」に分けられます。

陽性症状

幻覚や妄想が強く現れる状態を「陽性症状」と呼びます。症状が激しいと、叫んだり、暴れたりといった行動に発展することもあり、周囲の人に強い印象を与えがちです。街中で警察に保護されたり、家庭内で騒いで入院に至るケースは、まさにこの陽性症状によるものです。ただし、こうした「派手な」症状が強く出る人は、全体の2〜3割に過ぎません。

陰性症状

残りの7〜8割の方は、むしろ「陰性症状」が主体となります。陰性症状とは、意欲や感情が低下し、自宅に引きこもるような状態を指します。これを「無為自閉」と表現することもあります。表面的には他人に危害を加えることも少なく、警察や医療機関の介入を必要としない場合も多いのですが、生活の質は著しく低下してしまいます。

この状態が長引くと、次第に日常生活のリズムが崩れ、入浴や身だしなみなどの基本的な生活習慣すら保てなくなります。周囲から見ると「大きなトラブルはないが、確実に生活が崩れていく」状態です。

発症年齢とその影響

統合失調症の発症年齢によっても影響は異なります。例えば20歳で発症した場合と、40歳で発症した場合とでは大きな違いがあります。

40歳まで社会人として仕事や生活を営んでいた人が発症した場合、それまでに築かれた人格や社会性(これを「人格水準」と呼びます)はある程度保たれます。しかし、治療を受けずに長期にわたり陰性症状が続くと、その人格水準は徐々に低下していきます。そして一度低下した人格水準は、治療を始めても元に戻すのが非常に難しいのです。

例えば、30歳で発症しても治療を受けず、40歳まで10年間を自宅で引きこもって過ごしたとします。その後に治療を開始しても、20代の頃のように会社勤めをするレベルに戻るのは困難です。これは「未治療期間が長いほど、回復の可能性が低くなる」という大きな特徴を示しています。

治療を中断するとどうなるか

治療を開始したとしても、抗精神病薬の副作用などから「自分が抑えられている感じがする」「本来の力を発揮できない」と感じ、服薬をやめてしまう方も少なくありません。

しかし、服薬を中断すると、再び陽性症状や陰性症状が現れます。特に陰性症状は自覚しにくく、気づかないうちに引きこもりが進行し、徐々に人格水準が低下していきます。この繰り返しが続くと、やはり元の生活水準に戻ることは難しくなってしまいます。

したがって「治療を始めること」と同じくらい「治療を継続すること」が重要です。

誤診の可能性にも注意

統合失調症に似た症状を示す病気や状態も存在します。たとえば発達障害により視野が狭くなり、ストレスから一時的にドーパミンが過剰に分泌される場合などです。このようなケースでは、必ずしも人格水準が低下するとは限りません。

そのため、統合失調症と診断された場合でも、誤診の可能性がないかを慎重に見極めることが大切です。しかし、診断が正しい場合には「治療をしなければ人格水準は徐々に低下していく」というのが一般的な経過であるといえるでしょう。

まとめ

まとめ

統合失調症を治療せずに放置した場合、

2〜3割の方は陽性症状が強く現れ、暴言や暴力など目立つ行動に至る

7〜8割の方は陰性症状が主体となり、無気力・引きこもりが進行する

未治療期間や服薬中断が長引くほど、人格水準が低下し、回復が困難になる

という特徴があります。

統合失調症は、治療さえすれば必ず改善する病気ではありませんが、治療を続けることで生活の質を守り、人格水準の低下を防ぐことができます。副作用などで治療がつらく感じることもありますが、主治医と相談しながら薬の調整や支援を受けつつ、継続することが何より大切です。

「治療をしなければどうなるのか」という問いに対する答えは、「人格水準が低下し、元の生活に戻るのが難しくなる」ということに尽きます。だからこそ、できるだけ早く、そして途切れることなく治療を続けていくことが、将来の生活を守るために欠かせないのです。