今日は「グランダキシン(一般名:トフィソパム)」というお薬について、解説していきたいと思います。精神科領域だけでなく、内科でも処方されることのある薬剤ですので、患者さんやご家族にとっても知っておくと安心できる情報になるかと思います。

グランダキシン(トフィソパム)は、ベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬に分類されます。ベンゾジアゼピン系薬は、抗不安薬や睡眠薬として幅広く使用されており、その作用は脳の神経細胞にあるGABA受容体を介して発揮されます。
通常、GABAという神経伝達物質は脳の「ブレーキ役」として働いています。GABA受容体が刺激されると、クロールイオンが神経細胞内に流れ込み、細胞の電気的な活動が抑制され、結果として神経の働きが静まります。これにより、不安や緊張、興奮が和らいでいきます。
ベンゾジアゼピン系の薬は、このGABA受容体に結合してその作用を強めることで、抗不安効果や催眠効果を発揮するのです。

ベンゾジアゼピン系の薬には、作用する受容体の違いによって大きく二つのタイプに分けられます。
グランダキシンは、基本的にはオメガ2に作用するため抗不安薬に分類されます。ただし、抗不安作用そのものも比較的穏やかで、催眠作用(眠気を強く誘う作用)も弱い薬です。
そのため、「強力に不安を抑える」というよりも、「軽度の不安や神経の高ぶりを和らげる」目的で用いられることが多い薬といえるでしょう。

精神科での使用頻度はそれほど高くありませんが、内科の先生方がよく処方する薬として知られています。
たとえば、次のようなケースで使われます。
このような場合に、グランダキシンを用いると交感神経の緊張が少し抑えられ、自律神経の働きが整う効果が期待できます。
つまり、「軽い神経衰弱状態」や「神経過敏状態」に対して、強い精神科薬を使うほどではないけれど、何かサポートになる薬がほしい――そんなときに処方されやすい薬なのです。

グランダキシンには50mg錠があり、これが基本的な処方単位となります。
容量の調整幅は比較的少なく、非常にシンプルな使い方をされる薬だといえます。

ベンゾジアゼピン系の薬を使うときには、以下の3つの副作用リスクに注意する必要があります。
ところが、グランダキシンの場合は、もともとの作用が穏やかであるため、依存や耐性、離脱といった問題が少ないとされています。もちろんゼロではありませんが、一般的なベンゾジアゼピン薬に比べれば安心して使いやすい部類といえるでしょう。

グランダキシンは「積極的に使う薬」というよりも、「必要に応じて選ばれる薬」という位置づけになります。
特に次のような方に処方されることが多いです。
一方で、精神科で重度の不安障害やパニック障害を治療する場合には、より作用の強い薬や、抗うつ薬などを用いることが多く、グランダキシン単独で治療を進めるケースは少ないのが実情です。

精神科の臨床においては、グランダキシンを頻繁に処方する医師は多くありません。その理由は、やはり「効果が穏やかすぎる」ためです。精神科ではより明確な症状改善を求められることが多く、他の抗不安薬や抗うつ薬が優先されることが多いのです。
しかし、内科においては非常に役立つ薬といえます。内科医が患者さんの不安や自律神経の乱れに対応する際、精神科に紹介するほどではないが何とかしたいというニーズに応えられる薬が、まさにグランダキシンだからです。
そのため、実際には「精神科よりも内科で活躍している薬」というのが正確な表現になるかもしれません。
グランダキシン(トフィソパム)は、ベンゾジアゼピン系に属する抗不安薬でありながら、その作用は穏やかで、依存や離脱のリスクも少ない薬です。
精神科では使用頻度が少ないものの、日常臨床において一定の役割を果たしている薬であるといえるでしょう。
お薬の特徴を理解し、自分やご家族の治療に役立てていただければ幸いです。