主治医を変えたい!そんなときに知っていてほしいこと

主治医と合わないと感じたとき、変えてもいいのか?――転院について考える

こんにちは。今回は、「主治医とどうしても合わないけれど、変えてもよいのか?」というご相談を受けることが多いため、このテーマについて一緒に考えていきたいと思います。

精神科に限らず、医療現場では「主治医との相性の悩み」がよく聞かれます。結論からお伝えすると、「変えてもよい」です。ただし、その判断をするうえで知っておいてほしい現実や背景がありますので、以下で丁寧にお話ししていきます。

医師と患者の相性だけではない問題

患者さんから「主治医が話をあまり聞いてくれない」「すぐ診察が終わってしまう」といった不満の声をいただくことがあります。その多くは、医師個人の性格や相性の問題だけでなく、「診療にかけられる時間」が非常に限られていることが要因となっていることが少なくありません。

現在の日本の医療制度の中では、多くのクリニックや病院が保険診療で成り立っています。保険診療では1人の患者に割ける時間はおおよそ5~10分程度です。これは、医師が「儲けたいから」というより、医療機関を運営していくうえで必要な制限でもあります。医師だけでなく、看護師さん、受付のスタッフ、臨床心理士など、多くの人の人件費や運営コストが関わっているからです。

医師と患者の相性だけではない問題

特に精神科の診療は、患者さんの話をしっかり聴くことが非常に大切です。しかし、保険診療の枠内ではその十分な時間を確保するのが難しく、結果として「話を聞いてもらえなかった」という印象を持たれてしまうことがあります。

どのクリニックでも「やっていること」は基本的に同じ

精神科医は、ほぼ同じような教科書を使い、同じような過程を経て専門医・指定医の資格を取得しています。つまり、精神科医療のベースとなる治療方針や処方内容、アドバイスは全国の医師で大きく異なることは少ないのです。

たとえば、抑うつ症状がある場合は抗うつ薬を中心に、抗不安薬を併用する。幻覚や妄想がある場合は抗精神病薬を使う。双極性障害であれば気分安定薬をベースに調整するなど、症状ごとの基本的な治療指針は教科書に明記されており、医師はそれに基づいて治療を進めています。

つまり、病院やクリニックを変えたからといって、「まったく新しい画期的な治療」が待っているというケースは実は少ないのです。

では、何が「違い」を生み出すのか?

それでも「A医院ではうまくいかなかったけれど、B医院に変えたら症状が改善した」というケースは確かに存在します。こうした違いは、実際に行われている治療そのものよりも、

  • 医師の説明の仕方
  • 医師の雰囲気や人柄
  • 医師と患者との信頼関係
  • 患者が「この先生を信頼できる」と感じたかどうか

こういった要素が大きく影響しています。

同じ薬、同じアドバイスでも、「この先生の話なら納得できる」「このクリニックなら通いたい」と思えるかどうかで、患者さんの治療意欲や生活への取り組み方が変わり、結果的に治療効果も異なるように感じられることがあるのです。

転院を考えるときのポイント

もし今の主治医との相性に悩んでいる場合、以下のような点を参考にしてみてください。

1. 最低3ヶ月は通ってみる

初診からすぐに「合わない」と判断するのではなく、少なくとも3か月程度は通院し、治療方針や関係性を見極めてみましょう。最初はぎこちなくても、徐々に信頼関係が築ける場合もあります。

2. 紹介状をもらって転院する

転院を考えるときのポイント

どうしても合わないと感じた場合は、主治医に正直に気持ちを伝えて、紹介状を書いてもらいましょう。紹介状があると、新しい医師にもこれまでの治療経過が正確に伝わり、スムーズな診療につながります。

3. 治療内容の変化に期待しすぎない

転院すれば画期的な治療が受けられる、劇的に良くなるという期待を持ちすぎると、現実とのギャップでがっかりしてしまうかもしれません。治療そのものは大きく変わらなくても、納得感や満足感が上がる可能性があることに目を向けてみてください。

それでもどこも合わないと感じる場合

複数の医療機関に通ってみても、どこも「合わない」と感じる場合、自分自身が「保険診療」という制度と相性が悪い可能性もあります。保険診療では時間や内容に制限があるため、それにストレスを感じやすい方は、自費診療を検討するという選択肢もあります。

また、自分自身の認知の傾向や対人関係のパターンを見直すことで、新たな気づきや改善のヒントが得られることもあります。

精神科の治療は「4つの柱」

精神科で行われる治療やアドバイスの基本は、実は非常にシンプルで、以下の4つに集約されます。

  1. 薬物療法:症状に応じた薬の調整
  2. 服薬の習慣化:用法・用量を守って安定して飲む
  3. 生活習慣の改善:早寝早起き、適度な運動など
  4. 対人関係の整理とトレーニング:アサーションなどの対人スキルの練習

どのクリニックでも基本的にこの4本柱に沿って治療が進められているはずです。内容が劇的に異なることはまずありません。

最後に:変えてもいい。でも「どうして変えるのか」が大切

最後に:変えてもいい。でも「どうして変えるのか」が大切

主治医を変えることは、悪いことではありません。むしろ「この先生とはどうしても合わない」と感じて無理に通い続けることのほうが、治療にとってマイナスになることもあります。

ただし、転院をする前には、「なぜ変えたいのか」「自分は何を求めているのか」を一度整理してみましょう。そして、新しい医師に過度な期待をするのではなく、「納得感」「信頼感」を大切にすることをおすすめします。

私自身も、他の医師から紹介されて転院してこられた患者さんが、「前の先生とは合わなかったけれど、今はうまくいっている」と言ってくださることがあります。逆に、私との相性が合わず、他院に紹介して、そこでうまく治療が進んでいる方もいらっしゃいます。

大切なのは、「自分にとって最も治療に前向きになれる環境」を見つけることだと思います。

おわりに

どのクリニックも、医師も、保険診療の枠内でできる治療には限りがあります。しかし、その中でも「どこで、誰と、どう向き合うか」で、患者さん自身の感じ方や治療の進み方には大きな差が生まれます。

主治医を変えるのは「逃げ」ではありません。必要な「選択」です。
自分の気持ちを大切にしながら、最適な治療の形を探していっていただければと思います。