
発達障害を抱える方々が職場で直面しやすい悩みには、一定の傾向があります。私自身、多くの発達障害のある方々の就労支援や相談に関わる中で、頻繁に耳にする悩みがいくつかあります。今回は、特に多くの方から寄せられる「仕事上の悩みトップ3」と、その背景や対処の考え方について解説していきます。

発達障害のある方から多く聞かれる悩みのひとつが、「作業のスピードが周囲と比べて遅く、ついていけない」というものです。企業においては、生産性や納期の厳守が求められる場面が多く、一定のスピード感が前提とされる仕事が少なくありません。特にライン作業や工場など、工程が連動している現場では、ひとりの遅れが他の工程にも影響を与えかねず、大きなプレッシャーを感じやすい環境です。
この悩みの背景には、いくつかの要因があります。まず、手先の器用さや細かい動作の正確性が求められる職種において、発達障害の特性からそうした作業が苦手な方も少なくありません。また、「段取り」や「手順をイメージする力」が弱いことで、効率的に仕事を進められず、無駄な動作ややり直しが多くなってしまうこともあります。
対策としては、まず自分の得意・不得意を正しく把握することが大切です。可能であれば、作業工程を見える化したり、マニュアルを使って進め方を視覚的に理解する工夫をすると、作業のスピードが改善されるケースもあります。

次に多い悩みは、「仕事のミスが多い」というものです。これは特にADHD(注意欠如・多動症)の特性として代表的であり、多くの方が悩みとして挙げています。
ミスが発生する背景には、さまざまな原因があります。たとえば、以下のようなものが挙げられます:
このように、「ミス」と一言でいっても、その背景には認知や感覚、環境への適応の困難など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
対策としては、まず「ミスの傾向」を具体的に振り返り、どの場面でエラーが起こりやすいのかを可視化することが第一歩です。そして、作業のチェックリストを活用したり、上司や同僚と相談しながらタスクの進め方を見直すなど、自分一人で抱え込まない工夫が重要です。

そして、最も多い悩みが「職場の人間関係がうまくいかない」というものです。実際、離職理由の中でも「職場の雰囲気に馴染めなかった」「上司や同僚とうまくやれなかった」という声は非常に多く、業務そのものよりも対人関係のストレスで職場を離れる方も少なくありません。
背景にはいくつかの事情があります。
まず、先に述べた「仕事のミスや作業スピードの遅れ」が直接的に人間関係に悪影響を及ぼしている場合があります。周囲の目や上司からの注意が増え、自信を失ったり、職場での居場所がなくなってしまったと感じてしまうのです。
また、コミュニケーション自体が苦手で、職場の輪に入ることができず孤立してしまうケースもあります。雑談のタイミングがわからない、距離感をうまくつかめない、場の空気を読みにくいといった特性が原因で、意図せず失礼な発言や誤解を招く行動をしてしまうこともあります。
さらに、「暗黙のルール」や「職場の常識」といった、明文化されていない社会的な合意に気づきにくい点も、人間関係がうまくいかない理由のひとつです。
これらの仕事の悩みに共通して言えるのは、「問題を一人で抱え込まないこと」が非常に重要だということです。発達障害のある方は、「人に頼る」「相談する」という行動そのものが苦手であることも多く、その結果、問題が深刻化してしまうケースが少なくありません。
こうした課題に対しては、以下のような工夫が有効です。

自分自身で業務上の問題を解決することが理想ではありますが、すべてを一人で対応するのは非常に難しいことです。だからこそ、自分にとって働きやすい環境を整えるという視点も忘れてはなりません。
一般雇用の中で支援を得ることが難しいと感じる場合は、障害者雇用や、オープン就労(障害を開示した上での雇用)など、より自分に合った働き方を模索することも選択肢のひとつです。
また、企業側が相談しやすい体制や支援体制を整えてくれているかどうかも、働きやすさに直結します。
発達障害のある方が職場で悩みやすいトップ3は、次のとおりです。
こうした悩みは、本人の努力だけで解決するのが難しい場合も多いため、まずは「相談する」ことを恐れず、支援を得られる環境づくりが大切です。そして、必要であれば、より自分に合った働き方や職場環境を選ぶことも前向きな選択です。
自分にとって無理のない働き方を模索しながら、周囲との関係性や仕事の進め方を少しずつ整えていくことが、長く安定して働くための第一歩となります。