【筋電図】心電図の違いについて詳しく解説します!

筋電図(EMG)とは ― 仕組みと診断における役割

はじめに

「筋電図(きんでんず)」という言葉は、一般の方にはあまり耳慣れないかもしれません。それに比べて「心電図」は健康診断などでも頻繁に行われるため、聞き覚えのある方が多いでしょう。実は、心電図と筋電図は仕組みの上で共通点を持っています。なぜなら、心臓も筋肉の塊であり、筋肉が収縮する際に生じる電気的な変化を捉えているからです。

本記事では、まず筋肉の基本的な構造を振り返り、その上で筋電図がどのような原理で行われ、何が分かる検査なのかを丁寧に解説していきます。

筋肉の構造 ― 一本の「そうめん」から大きな筋肉へ

筋肉の構造 ― 一本の「そうめん」から大きな筋肉へ

筋肉は大きな塊のように見えますが、顕微鏡で見ていくと非常に細かい構造をしています。基本単位となるのは「筋繊維」と呼ばれる細長い細胞で、その形は「そうめん」に例えられることがよくあります。

この筋繊維が束になって「筋繊維束」を形成し、さらに複数の束が集まることで、一つの大きな筋肉が形作られます。たとえば肘を曲げ伸ばしするとき、実際には一本一本の筋繊維が収縮し、その合計として腕全体の筋肉が動いているのです。したがって、筋繊維レベルの仕組みを理解すれば、筋肉全体の動きも理解できることになります。

筋繊維が収縮する仕組み

筋繊維は「神経」からの指令によって動きます。神経は電線のように電気信号を伝える組織であり、筋肉はその信号を受けて収縮します。

筋繊維の内部と外部には電気的な差、すなわち「電位差」が存在しています。通常は、筋繊維の内側はマイナス、外側はプラスという状態が保たれており、この安定した状態を維持するために細胞はエネルギーを使っています。

神経から電気刺激が加わると、このプラスとマイナスが一瞬逆転します。これを「活動電位」と呼びます。この逆転が筋繊維の中央で起こり、そこから両端へと電気信号が伝わっていきます。その結果、筋繊維全体が収縮するのです。

筋電図の基本原理

筋電図の基本原理

筋肉が収縮する際には、無数の筋繊維で活動電位が発生します。つまり筋肉の中では、多くの場所で電気が流れているのです。これを体表に貼り付けた電極でとらえると、「ギザギザの波」として記録されます。これが「筋電図(Electromyography, EMG)」です。

実際には、個々の筋繊維から発生する電気信号はとても小さく、すべてを区別することはできません。しかし、複数の筋繊維の信号が重なり合うことで、大きな波として記録されます。波が大きくなるのは、たまたま同じタイミングで複数の筋繊維が放電した場合です。逆に、波が小さいのは放電が分散して起きた場合です。この仕組みを理解すると、筋電図の波形がなぜ一定ではなく、大小のギザギザを繰り返すのかが分かります。

筋電図で何が分かるのか

では、この筋電図の波を解析すると、どのような情報が得られるのでしょうか。

波の数が少ない場合

筋肉を動かす神経に障害がある可能性を示します。神経からの指令が十分に伝わらないため、筋繊維が収縮せず、放電の回数が減るのです。

波の高さが低い場合

筋肉そのものに障害がある可能性があります。神経からの信号は届いていても、筋肉自体がうまく収縮できないため、発生する電流の大きさが小さくなります。

このように、筋電図を調べることで「筋肉が原因なのか、それとも神経が原因なのか」を区別できるのです。たとえば肘を曲げにくいという症状がある場合でも、その原因が筋肉の病気なのか、神経の病気なのかは見た目だけでは分かりません。筋電図は、こうした診断の手がかりを与えてくれる非常に重要な検査です。

心電図との共通点

冒頭で触れた「心電図」も、実は原理は同じです。心臓の筋肉を構成する心筋細胞に流れる電気を合計し、その結果を波形として記録しているのが心電図です。心臓のリズムの乱れや筋肉の異常を読み取れるのは、電気的な活動を可視化しているからにほかなりません。

つまり、筋電図も心電図も「筋肉の活動を電気信号として捉える」という点で共通しています。筋電図を理解することは、心電図をより深く理解するための基礎にもなるのです。

筋電図の実際の検査方法

実際の検査では、筋肉の上に「電極」と呼ばれるシール状のパッチを貼り付けます。これが電流をキャッチするセンサーの役割を果たします。検査中には軽く筋肉を動かしたり力を入れたりして、その際に生じる電気信号を記録します。

得られた波形はギザギザとした線として表示されます。この波の数や高さを解析することで、医師は神経と筋肉のどちらに異常があるのかを推定します。

なお、より詳細な情報が必要な場合には「針筋電図」という方法を用いることもあります。これは細い針電極を筋肉に直接刺して電気活動を測定する方法で、より正確なデータが得られますが、多少の痛みを伴うため通常は必要に応じて実施されます。

診断における役割と重要性

筋電図は日常的に行う検査ではありませんが、診断に迷う場面で非常に有用です。たとえば以下のような場合です。

手足に力が入りにくいが、原因が不明なとき

神経の病気(末梢神経障害や神経根障害など)が疑われるとき

筋肉そのものの病気(筋ジストロフィーや筋炎など)が考えられるとき

このように、筋電図は神経疾患と筋疾患を区別する大きな助けとなり、治療方針を決める上で欠かせない検査です。

まとめ

まとめ

筋電図は、筋肉が収縮する際に発生する電気的な変化を記録する検査です。筋繊維の一本一本に生じた電気信号を合計した波形を捉えることで、筋肉や神経の状態を評価することができます。

波の数が減る場合には神経の異常、波の高さが低い場合には筋肉の異常が疑われるなど、診断において重要な情報を提供してくれます。心電図と同様に、筋電図も「筋肉の電気的な活動を可視化する」検査であり、その理解は医学の基本を押さえる上でも大切です。

普段はあまり意識されない筋電図ですが、症状の原因を突き止めるための確かな手がかりとなる検査であることを、ぜひ知っていただければと思います。