
関節リウマチという言葉を耳にしたことがある方は多いと思います。名前の通り、関節に痛みや腫れが起こり、進行すると関節が変形してしまう病気です。けれども「年齢とともに出てくる関節の老化のようなものだろう」と思っている方も少なくありません。実はそうではなく、関節リウマチは老化とは別に起こる「病気」のひとつなのです。
日本ではおよそ80万人ほどの方が関節リウマチに悩まされているといわれています。今回は、この病気の仕組みや特徴、治療の進歩について、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。
人間の体には「免疫」と呼ばれる防御システムがあります。これは、ばい菌やウイルスといった外からの侵入者をやっつけて体を守るための仕組みです。たとえば風邪をひいたときに体が熱を出したり、ばい菌を退治してくれるのもこの免疫のおかげです。
本来、免疫は「外から来た敵」だけを狙って攻撃するようにできています。自分自身の細胞を間違って攻撃しないように、体には区別する仕組みも備わっています。ところが、何らかのきっかけでその仕組みが狂ってしまい、本来攻撃する必要のない「自分自身の体」を敵だと勘違いしてしまうことがあります。
こうした状態を「自己免疫」と呼びます。つまり、体を守るはずの免疫が自分の体を傷つけてしまうのです。自己免疫によって起こる病気はいくつもありますが、その代表的なもののひとつが関節リウマチです。
関節リウマチでは、免疫の誤作動によって関節の中で炎症が起こります。特にダメージを受けやすいのが「骨」や「軟骨」、そして「滑膜(かつまく)」と呼ばれる関節を包む薄い膜です。
関節は、骨と骨がぶつからないように軟骨で覆われ、さらに関節液という潤滑油のような液体で守られています。このおかげで、肘や膝を曲げ伸ばししてもスムーズに動かせるのです。ところが関節リウマチになると、免疫細胞がこの滑膜や軟骨を攻撃し始めます。
関節の中はまるで戦場のようになり、腫れや強い痛みが出ます。炎症が続くと軟骨や骨が壊され、関節が変形してしまうこともあります。さらに関節だけでなく、目や皮膚など体のほかの部分にも影響が出ることがあります。

関節リウマチは、女性に多い病気です。男性と比べるとおよそ4倍もの女性が発症しています。発症する年齢は20代から50代と、いわゆる働き盛りの年代に多く見られます。もし単なる老化が原因であれば、高齢になるほど患者が増えるはずですが、そうではありません。ここからも「老化とは違う病気」だということがわかります。
関節リウマチは全身のどの関節にも起こる可能性があります。ある人は両手の指の関節が強く侵され、別の人は膝や足首にだけ症状が出るということもあります。全身の多くの関節が変形してしまう重いケースもあれば、数か所だけで長年とどまるケースもあり、進み方は人によって大きく異なります。
また、何年も症状が続く方がいる一方で、不思議とある時期を境に症状が落ち着いてしまう方もいます。つまり、同じ病気であっても現れ方は千差万別だということです。
かつて関節リウマチの治療といえば、痛み止めや炎症を抑える薬が中心でした。これらは確かに腫れや痛みを和らげてくれますが、関節そのものの破壊や変形を防ぐことはできませんでした。
その後、「免疫の働きを抑える薬」が登場します。これは体の過剰な免疫反応を弱め、関節の破壊をある程度防ぐことができるようになりました。さらに最近では「生物学的製剤」と呼ばれる新しい薬が開発され、治療は大きく進歩しました。
生物学的製剤は、免疫の暴走を引き起こしている特定の物質だけをピンポイントで抑える薬です。これによって、以前なら防げなかった関節の変形を大幅に減らすことができるようになりました。注射や点滴、さらには飲み薬など種類も増え、患者さん一人ひとりに合わせた治療を選べる時代になってきています。
もちろん、すべての患者さんで完全に進行を止められるわけではありません。中には関節が変形してしまう方もいます。その場合には、手術で関節の機能を取り戻す方法も取られています。

関節リウマチは、決して「年齢のせい」ではなく、体の免疫が誤って自分を攻撃してしまうことで起こる病気です。関節に痛みや腫れが出るだけでなく、放っておくと変形につながることもあります。
ですが、治療法はここ数十年で大きく進歩し、以前と比べると症状を抑えられる可能性が格段に高まりました。大切なのは、早めに異変に気づいて専門の医師に相談することです。
関節が痛むのは「年だから仕方ない」と思い込まずに、一度専門的な診察を受けてみることをおすすめします。正しい知識と適切な治療があれば、関節リウマチと向き合いながらも、より良い生活を送ることができるはずです。