
近年、発達障害を抱える方の就労は社会全体で大きな関心事となっています。就労移行支援や障害者雇用制度の整備が進み、以前に比べれば働く場の選択肢は広がってきました。しかしその一方で、「仕事が続かない」「職場に定着できない」と悩む声が後を絶ちません。本記事では、発達障害の方が仕事を続けにくい背景と、その改善に必要な要素について解説していきます。

発達障害とは、生まれつき脳の一部の機能に偏りがあることによって、生活の中で困難さや生きづらさを感じやすい状態を指します。代表的なものとして以下が挙げられます。
ADHD(注意欠如・多動症):注意の持続が難しい、衝動的に行動してしまうなどの特性。
ASD(自閉スペクトラム症):コミュニケーションの難しさやこだわりの強さが見られる特性。
LD(学習障害):読み書きや計算など特定の分野に著しい困難がある特性。
これらはそれぞれ異なる特徴を持ち、仕事においても困りごとの内容や支援の仕方が変わってきます。

厚生労働省の「障害者の就業状況等に関する調査研究」によると、発達障害のある方の**1年後の職場定着率は71.5%**とされています。精神障害全体の49.3%と比べると高いものの、一般雇用の新卒定着率(高卒で約85%、大卒で約90%)と比較すると、障害者雇用全体の定着率は依然として低いのが現状です。
特に働き方の形態によっても差があります。
障害者雇用:定着率70.4%
一般オープン(障害を開示して一般雇用に就く):定着率49.9%
一般クローズ(障害を非開示で一般雇用に就く):定着率30.8%
つまり、障害を開示せずに働くほど定着率は下がる傾向が見られます。

「障害者雇用実態調査結果」によれば、発達障害を含む精神障害の方が離職する主な理由は以下の通りです。
職場の雰囲気や人間関係の不調和(33.8%)
賃金や労働条件への不満(29.7%)
疲れやすさ、体力・意欲の低下(28.4%)
仕事内容が合わなかった(28.4%)
作業効率への不適応(25.7%)
症状の悪化・再発(25.7%)
とりわけ「人間関係」に関する悩みは最も多く、仕事がうまくいかないことが人間関係の悪化に波及するケースも少なくありません。
障害を開示しつつ一般雇用に就く「一般オープン」の場合でも、定着率は50%にとどまります。その背景には次のような要因があります。
採用担当者が障害に理解を示しても、具体的な配慮方法までは浸透していない場合が多い。
面接時に説明を受けても、実際の職場で発生する困りごととの間にギャップが生まれる。
「性格の問題」と捉えられてしまい、支援や調整がなされないケースがある。
一方、障害者雇用では制度上の配慮が前提となるため、比較的安定しやすい傾向にあります。

発達障害の方が職場に長く定着するためには、以下の点が重要です。
自分の得意・不得意を理解し、適性に合った仕事を選ぶことが最優先です。特に障害者雇用では、企業が実習を設けている場合も多いため、入社前に実際の業務を体験してミスマッチを防ぐことが効果的です。
障害を開示する場合には、自分の特性と必要な配慮を具体的に伝えることが大切です。「何が苦手で、どのようなサポートがあれば働きやすいのか」を明確にすることで、トラブルを未然に防げます。
就労移行支援を経て就職すると、6か月間の定着支援を受けられます。この半年は離職率が大きく下がる時期であり、支援の有無が定着に直結します。さらに不安が残る場合は「就労定着支援」や「障害者就業・生活支援センター」「ジョブコーチ支援」など、長期的に利用できる制度も検討できます。
制度や配慮は当然必要ですが、「配慮してもらって当たり前」という姿勢だけでは人間関係に軋轢が生じやすくなります。自分にできる範囲で会社に貢献しようとする意識、感謝の気持ちを持つことが、結果的に安定した職場環境を築く土台となります。
発達障害を持つ方が仕事を続けにくい背景には、人間関係や仕事内容とのミスマッチ、理解不足など複合的な要因があります。しかし、業務の適正なマッチング、障害特性の正しい伝達、定着支援の活用、そして「会社に貢献する意識」を持つことによって、その課題は大きく改善できます。
社会全体が多様な働き方を認める時代において、発達障害のある方が安心して働き続けられる環境を整えていくことは、本人だけでなく企業や社会にとっても大きな価値をもたらします。