
腰痛は、日本人の多くが一度は経験する身近な症状です。特に働き盛りの年代や高齢者にとっては、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。では、もし自分が腰痛になったら、どのような段取りで治療を進めていけばよいのでしょうか。本記事では、「腰痛の原因」「診断の流れ」「治療の考え方」についてわかりやすく整理していきます。
腰痛と一口にいっても、その原因は多岐にわたります。ほとんどは軽症で自然に回復しますが、なかには命に関わる重大な病気が隠れていることもあります。特に注意が必要なのは、がんの骨転移や尿管結石、感染や骨折などです。これらは頻度としては少ないものの、見逃してはいけません。
そのため、腰痛を自覚したときは、まず医療機関を受診して基本的な検査を受けることをおすすめします。レントゲン撮影や必要に応じてMRIなどを行い、重大な病気が潜んでいないかを確認するのが第一歩です。

腰痛の原因は大きく4つに分けられます。
非特異的腰痛(約85%)
もっとも多いタイプで、痛みの原因を特定できない腰痛です。筋肉や関節、椎間板などが関わっていると推測されますが、画像検査をしても明確な異常が見つからないことが多いです。
神経の圧迫による腰痛(約10%)
いわゆる「根性痛」と呼ばれるもので、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が代表例です。坐骨神経痛のようにお尻や足にしびれや痛みが広がるのが特徴です。
重大な脊髄や骨の病気(約1%)
腫瘍や感染、骨折などが含まれます。頻度は少ないですが、早期発見と治療が不可欠です。
内臓由来の腰痛(約2%)
腎臓や消化器系などの内臓の病気が原因で腰に痛みが出る場合もあります。
このように、腰痛のほとんどは心配のいらないタイプですが、稀に重大な病気が潜むため、最初の診察でしっかり除外することが重要です。
突然腰が動かせないほど痛む「ぎっくり腰(急性腰痛症)」は、多くの人が経験する代表的な腰痛です。実はこのぎっくり腰の90%以上は、特別な治療をしなくても1か月以内に自然に良くなります。
ポイントは「痛みの強い1か月をどう乗り切るか」
急性期はとにかく痛みが強いため、以下の方法で日常生活を工夫することが大切です。
この時期を過ぎると、多くの場合は痛みが軽快してきます。慢性腰痛になるかどうかは、この急性期の対応とはあまり関係がありません。
残念ながら痛みが長引くこともあります。その際には、腰椎すべり症や腰椎変性側弯症といった病気が関わっていないかを確認します。ただし、骨がずれていたり曲がっていたりしても、それが直接腰痛の原因とは限りません。
腰痛治療で誤解されやすいのが「骨のずれや曲がりがあるから手術が必要」という考え方です。実際には、手術の目的は「骨をまっすぐに戻すこと」ではなく、「腰痛を軽くすること」です。痛みが軽い場合は手術の対象にはなりません。
また、骨のずれや曲がりが進んだからといって、必ずしも腰痛が悪化するとは限りません。むしろ痛みが軽くなるケースもあるのです。数年単位で痛みが続き、明らかに生活に支障がある場合に初めて手術が検討されます。
腰痛と上手に付き合うためには、普段の生活習慣も大切です。
正しい姿勢を心がける
長時間のデスクワークでは背もたれに深く腰掛け、足裏を床にしっかりつけましょう。スマホを見るときの前かがみ姿勢も要注意です。
適度に体を動かす
完全な安静は逆効果になることがあります。軽いストレッチやウォーキングなど、無理のない範囲で動きましょう。
体幹を鍛える
腹筋や背筋をゆるやかに鍛えると腰を支える力が高まり、再発予防につながります。
体重管理も大切
体重の増加は腰に大きな負担をかけます。バランスの良い食生活を心がけましょう。
不安なときは我慢せず受診
強い痛みが長引く、しびれや歩行障害が出る、排尿排便に異常がある場合は早めに医師に相談しましょう。

腰痛は非常にありふれた症状ですが、その原因や経過は実にさまざまです。
大切なのは、焦らずに腰痛と向き合い、必要以上に悲観しないことです。腰痛はたとえ長引いたとしても、適切に対応していけば多くの場合コントロールすることができます。もし腰痛に悩まされたときは、医師と相談しながら一歩ずつ前に進んでいきましょう。