人の体には、意識して動かす仕組みと、無意識のうちに働く仕組みの両方が備わっています。その中でも「反射」と呼ばれる働きは、脳で考えるよりも早く体を守ったり、バランスをとったりするために欠かせない重要な機能です。今回は、医療や理科の授業などでもよく耳にする「腱反射(けんはんしゃ)」を中心に、反射の仕組みや神経の役割について丁寧にご紹介します。

まず「反射」とは何かを整理しておきましょう。
反射とは、外からの刺激に対して、脳で考えるよりも早く体が自動的に反応する仕組みのことです。代表的な例が「熱いフライパンに触れてすぐに手を引っ込める動作」です。普段、私たちが手や足を動かすときには「脳が命令を出して筋肉を動かす」という手順を踏みます。しかし、反射のときには脳を経由せず、脊髄のレベルで瞬時に反応が起こります。
これは、命令を脳まで送って判断するよりもはるかに早く、体を守るために必要だからです。もしフライパンに触れてから「熱いな、手を離そう」と脳で考えていたら、その間に皮膚は大きく損傷してしまうでしょう。反射は、こうした危険から身を守るための緊急回避システムともいえるのです。

反射を理解するうえで欠かせないのが「神経の仕組み」です。人間の体には大きく分けて2つの神経系統があります。
普段の動作では、知覚神経が情報を脳に送り、脳が判断して運動神経を通じて筋肉に命令を下す、という流れが繰り返されています。しかし反射の場合、この流れの一部がショートカットされ、脳を介さずに「知覚神経 → 脊髄 → 運動神経 → 筋肉」という回路で即座に反応が起こります。これが反射の仕組みです。

反射の中でも最も有名なのが「膝蓋腱反射」です。健康診断などで膝の下を小さなハンマーで軽く叩かれ、足がピョンと伸びる検査を受けた経験のある方も多いでしょう。
この膝蓋腱反射は、以下のような流れで起こります。
これは「筋肉が急に伸ばされると、そのままでは断裂の危険があるため、縮めて守ろう」という防御反応といえます。
膝蓋腱反射では、さらに高度な調整も同時に行われています。大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)が縮むとき、逆に太ももの裏側にある大腿二頭筋は緩まなければなりません。もし両方の筋肉が同時に縮んでしまったら、膝は動かなくなってしまうからです。
このように、片方の筋肉が縮むと同時に反対側の筋肉を緩める仕組みを1a抑制反射と呼びます。つまり膝蓋腱反射では、
という二つの反応が同時に行われ、結果としてスムーズに足が伸びるのです。この一連の動きは、ほんの一瞬のうちに自動的に行われます。
腱反射は、単なる生理的な現象にとどまらず、医学的な診察においても非常に重要です。病院で膝やアキレス腱を叩かれるのは、この反射の働きに異常がないかを確認するためです。
このように腱反射の有無や強さを調べることで、神経や筋肉の状態を推測できるため、神経内科や整形外科で広く利用されています。膝以外の腱反射
腱反射は膝だけにあるわけではありません。代表的なものには以下のような反射があります。
これらもすべて同じ原理で働いており、筋肉や神経の健康状態を調べる検査として活用されています。

腱反射とは、外からの刺激に対して脳を介さず、脊髄を通じて筋肉が瞬時に反応する仕組みです。
腱反射の仕組みを理解すると、普段何気なく行われている体の動きが、実はとても精密で巧妙なシステムの上に成り立っていることがわかります。こうした反射は、人間の体がいかに無意識のうちに自分を守る工夫をしているかを示す、まさに自然の知恵といえるでしょう。