本日のテーマは「神経とビタミン」です。人間の体には複雑で精緻な神経ネットワークが張り巡らされており、脳から指先、足先に至るまで情報が瞬時に伝わっています。その神経の働きを円滑に保つためには、実は多くの栄養素が関わっています。特に「ビタミン」は神経の構造や働きを支えるうえで欠かせない存在です。今回は、神経の基本構造を簡単に確認したうえで、神経と深い関わりを持つビタミンの役割について詳しく解説していきたいと思います。

神経は、脳や脊髄から全身に張り巡らされている情報伝達の回路です。その単位は「神経細胞(ニューロン)」と呼ばれ、細長い突起である「軸索」を通じて電気信号を伝えています。複数の神経線維は束となり、さらにそれらが集まって大きな神経を形成しています。
脳から手先へ信号が伝わるときには、一本の長大な神経がそのまま伸びているわけではなく、複数の神経がリレーのように情報を受け渡しています。その際に重要なのが「神経伝達物質」です。これは化学物質の一種で、神経と神経のすき間を橋渡しし、電気信号を次の神経へと伝える役割を担っています。
さらに、軸索の外側には「ミエリン鞘(みえりんしょう)」と呼ばれる絶縁体のような構造があります。これは軸索をまるでビニールテープのように巻きついて覆っており、信号伝達を飛躍的に高速化する働きを持ちます。ミエリン鞘が損傷すると情報伝達が遅くなったり、正確に伝わらなかったりするため、神経疾患の一因ともなります。
このように、神経は電気配線に例えられるような仕組みを持ちながらも、極めて繊細で栄養状態に左右されやすいシステムなのです。

ビタミンは人間の体に不可欠な栄養素でありながら、体内で十分に合成できないため、食事やサプリメントからの摂取が欠かせません。大きく分けると、
に分類されます。
この中で神経の健康維持に特に重要なのが ビタミンB群 です。中でも「ビタミンB1」「ビタミンB6」「ビタミンB12」は神経に深く関わっているため、以下で個別に詳しく見ていきましょう。
ビタミンB1(チアミン)は「疲労回復のビタミン」として知られていますが、神経にとっても重要な働きをしています。
神経細胞は常に活動しており、膨大なエネルギーを消費します。B1は糖質(炭水化物)をエネルギーに変える過程で補酵素として働き、神経の働きを支えます。
神経は酸化ストレスや老化によって傷つきやすい組織です。B1には抗酸化作用があり、神経の損傷を防ぎます。
末梢神経障害などで起こる痛みやしびれの感覚を緩和する効果も報告されています。
ビタミンB6(ピリドキシン)はアミノ酸代謝に関与するだけでなく、神経においても多様な役割を果たします。
特に抑制性の神経伝達物質「GABA」の生成に必要であり、神経の興奮を抑え、心身の安定に寄与します。
神経伝達をスムーズにするミエリン鞘の形成に関わり、神経全体の保護にも役立ちます。
不足すると末梢神経障害や精神的な不安定を引き起こすことがあるため、適切な摂取が求められます。
ビタミンB12(コバラミン)は神経にとって最も重要なビタミンの一つです。
B12は核酸合成に関与し、新しい神経細胞を作り出す働きを助けます。損傷した神経の修復や再生に不可欠です。
B12はミエリン鞘を再構築する力が強く、神経伝達のスピードと精度を高めます。
従来は末梢神経への作用が中心と考えられてきましたが、近年は脳神経系にも有効である可能性が注目されています。
B12は動物性食品に多く含まれ、植物性食品にはほとんど含まれません。
日本人の食生活では比較的不足しにくい栄養素ですが、菜食主義の方や高齢者では不足することもあります。その場合はサプリメントでの補給も有効です。
ビタミンには過剰摂取によるリスクがあるものもあります。例えば脂溶性ビタミンは体内に蓄積されやすく、過剰症を引き起こすことがあります。しかしB12を含む水溶性ビタミンは、必要以上に摂取しても尿から排泄されるため、基本的には害がありません。サプリメントでの摂取も比較的安全と言えます。

神経は複雑で繊細な仕組みを持つシステムであり、適切な栄養によってその働きが支えられています。特にビタミンB群、なかでもB1・B6・B12は神経のエネルギー代謝、情報伝達、損傷からの保護や再生に欠かせない栄養素です。
これらを日々の食事からバランスよく摂ることが、神経の健康を保ち、末梢神経障害や脳機能の低下を防ぐことにつながります。特にB12は動物性食品にしか含まれないため、食事スタイルによっては意識的な摂取が必要です。
ビタミンは小さな分子ですが、その働きは私たちの神経系にとって計り知れないほど大きいものです。神経の健やかな働きを維持するために、日々の食生活を見直してみることをおすすめします。