女性の心身の健康に大きな影響を及ぼす要因の1つとして、生理に関連する精神的な不調が挙げられます。特に、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)は、多くの女性が日常生活に支障をきたすほどの症状を経験するため、社会的な理解や適切な治療の普及が求められています。
本記事では、生理の仕組みからPMS・PMDDの特徴、治療法、そして生活への影響について丁寧に解説します。

まず、生理(月経)の仕組みを簡単に整理しておきます。
女性の体は、妊娠に備えておよそ28日周期でホルモンの変化を繰り返しています。生理が終わると子宮内膜がリセットされ、排卵に向けて再び厚くなっていきます。排卵が行われ、受精しなかった卵子は黄体へと変化し、この黄体期が約2週間続きます。その後、妊娠が成立しなければ子宮内膜が剥がれ落ちて出血が起こり、再び生理が始まります。
この周期のうち、特に排卵後から生理までの黄体期に心身の不調が強く現れるのが、PMSやPMDDの特徴です。
PMSとは、生理前に起こる身体的・精神的な不調の総称です。その中でも精神的症状が強く、日常生活に深刻な影響を与える場合はPMDDと診断されます。
症状としては、腹部の張りや倦怠感など身体的なものもありますが、精神的な側面に注目すると、以下のような特徴が目立ちます。
特に「周囲の人にイライラをぶつけてしまう」ことが、本人にとっても人間関係においても大きな困りごとになります。

PMSやPMDDに伴う抑うつは、いわゆるうつ病の症状に似ています。心のエネルギーをガソリンタンクに例えると、うつ病には大きく分けて2つのタイプがあります。
認知行動療法やアサーションなどは後者に有効ですが、PMS・PMDDは前者に近く、生物学的な要因によって「エネルギーそのものが少なくなる」状態が特徴的です。そのため、薬物療法が第一選択とされることが多いのです。
PMS・PMDDの治療は、生活習慣の見直しだけで改善することは難しい場合が多く、医学的なアプローチが有効です。代表的な方法を見ていきましょう。
排卵を抑制し、生理自体を軽くすることで症状を和らげる効果が期待できます。ただし、副作用として抑うつ傾向が現れる場合があり、全ての人に適しているわけではありません。
イライラや興奮が極めて強い場合には、抗精神病薬が使われることもあります。ドパミンを抑えることでプロラクチンが上昇し、生理が軽くなるまたは一時的に止まることがあります。ただし、「生理が来ない状態」自体が不快に感じられる人もいるため、慎重な判断が必要です。
PMS・PMDDに最も一般的に用いられるのがSSRIを中心とした抗うつ薬です。通常のうつ病よりも効果が出やすく、生理前の黄体期だけ服用しても症状が改善するケースが多いのが特徴です。
また、「症状が出始めてから飲んでも効きやすい」点は大きな利点で、他の精神疾患に対する治療薬の使い方とは異なっています。
代表的な薬剤には以下があります。
初めての治療では、副作用とのバランスを考慮し、ジェイゾロフトから始めるケースが多いとされています。

PMSやPMDDの影響で「また次の生理前に不調になるのではないか」と強い不安を抱き、生理後も心身の不調が続くことがあります。このような場合、睡眠薬や抗不安薬が併用されることもあります。
代表例としては、以下のような薬剤があります。
これらはあくまで二次的な症状に対する対処であり、全員が使用するわけではありません。

PMS・PMDDは、生理前の黄体期にイライラや落ち込み、不安などの精神症状が強く現れる疾患です。特にPMDDは日常生活や人間関係に大きな影響を及ぼすため、早期の理解と治療が大切です。
治療法としては、ピルや抗精神病薬、そしてSSRIをはじめとした抗うつ薬があり、それぞれの症状や体質に合わせて選択されます。SSRIは特に効果が出やすく、生理前の一定期間だけ内服する方法も有効です。
「気の持ちよう」や「我慢」で済ませてしまうのではなく、医学的に確立された治療法を知り、医師と相談することが重要です。生理に伴う精神的な不調は、多くの女性に共通する現象であり、決して特別な弱さではありません。正しい理解と適切なサポートを得ることで、生活の質を大きく改善することが可能です。