
「筋肉」というと、多くの人は腕や脚の力こぶをイメージするのではないでしょうか。しかし実際には、筋肉は全身のいたるところに存在し、意識できる動きから無意識の生命活動まで幅広く関わっています。
今回は、筋肉を大きく二つに分ける「横紋筋」と「平滑筋」について解説していきます。ただ知識を並べるだけではなく、日常生活の中で体験したことと結びつけながら見ていきましょう。
人の体に存在する筋肉は、大きく分けて以下の二種類です。
この違いは単なる形態上の特徴にとどまらず、「自分の意思で動かせるかどうか」「疲れやすいかどうか」といった性質にも深く関わっています。

骨格筋は、骨に付いて体を動かすための筋肉です。脳からの命令が運動神経を通じて伝わることで収縮し、随意的に動かせることから「随意筋」と呼ばれます。
例えば「歩く」「物を持ち上げる」「ジャンプする」といった日常的な動作は、すべて骨格筋の働きによるものです。
私自身、学生の頃に部活動で腕立て伏せをやりすぎ、次の日に腕が上がらなくなったことがあります。箸を持つのも一苦労で、「筋肉痛ってこういうことか」と痛感しました。これは骨格筋が激しく働き、疲労してしまった典型的な例です。骨格筋は瞬発的に大きな力を発揮できますが、その分、疲れやすいという特徴を持っています。
心筋は心臓にしか存在しない特別な筋肉です。見た目は横紋筋ですが、骨格筋と違い自分の意思では動かせません。そのため「不随意筋」に分類されます。
心筋は一生休むことなく拍動を繰り返し、血液を全身に送り出しています。その持久力は他の筋肉と比べて群を抜いています。
誰しも試験や発表の直前に「心臓がドキドキする」のを感じたことがあるはずです。これは心筋が自律神経の働きで収縮回数を増やした結果です。意識して止めたり速めたりできないのは、心筋が自分の意思とは関係なく働く筋肉だからです。

平滑筋は「横紋」がなく、顕微鏡で見ると滑らかに見える筋肉です。胃や腸、血管、気管支、膀胱、子宮といった内臓器官に分布しています。
平滑筋は「不随意筋」であり、意識して動かすことはできません。そのため、私たちが眠っている間も働き続けています。
大事な試験や人前での発表の直前に、急にお腹が痛くなった経験はありませんか?これはストレスで自律神経が乱れ、腸の平滑筋が強く収縮したために起きる現象です。普段は気づきにくいですが、平滑筋もまた私たちの感情や環境の影響を受けて働いているのです。
さらに平滑筋は、骨格筋と比べてとても疲れにくいという性質があります。消化や血液循環といった機能は休みなく続ける必要があるため、持久力に優れた構造になっているのです。
ここで両者の違いを表でまとめます。
| 種類 | 構造 | 主な部位 | 随意性 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 骨格筋(横紋筋) | 縞模様あり | 手足・背中など | 随意 | 強い力・速い動きが可能だが疲れやすい |
| 心筋(横紋筋) | 縞模様あり | 心臓 | 不随意 | 疲れにくく一生動き続ける |
| 平滑筋 | 縞模様なし | 胃腸・血管・膀胱・子宮など | 不随意 | 疲労しにくく長時間働ける |
この比較からも、筋肉の種類によって性質が大きく異なることがわかります。
「横紋筋」という名前の由来は、顕微鏡で見ると筋肉の中に「しま模様」が見えることから来ています。この模様は「アクチン」と「ミオシン」という二種類のタンパク質が規則的に並んでいるために生じます。
私が初めて顕微鏡で筋肉を観察したとき、思った以上にはっきりと模様が見えて驚きました。「筋肉って本当に縞々なんだ!」と感動した記憶があります。これこそが、筋肉が収縮する仕組みの鍵なのです。
アクチンとミオシンはお互いが滑り込むように動き、筋肉を縮めます。その配列が繰り返されることで光の反射が変化し、肉眼でも「筋張った形」として感じられるのです。

普段は意識しない心臓の鼓動や消化の動きも、筋肉が絶えず働いてくれているからこそ成り立っています。身近なエピソードと結びつけて考えると、横紋筋と平滑筋の違いがより実感しやすくなるのではないでしょうか。