腰痛と心の話

腰痛と心の話

腰痛はとても身近な症状です。多くの人が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。立ち上がるときにズキッとしたり、長時間座っていると重だるさを感じたりと、そのつらさは日常生活に大きな影響を与えます。

「腰が痛いのだから、原因は腰にあるはず」と考えるのが自然です。しかし、実際には腰痛の多くは、検査をしても原因がはっきりしないことがわかっています。そして最近の研究では、「心の状態」が腰痛に深く関係していることが明らかになってきました。

ここでは、腰の仕組みと腰痛の原因、検査の限界、そして心の影響について、できるだけわかりやすくお話ししていきます。

腰のつくりと腰痛のいろいろな原因

まず、腰のまわりのつくりを簡単に見てみましょう。

  • 皮膚のすぐ下には、広背筋(こうはいきん)という大きな筋肉があります。
  • その下には、姿勢を支えるために働く背筋が走っています。
  • 骨と骨の間には、クッションのような役割をする椎間板(ついかんばん)があります。
  • さらに骨の中央には、脊柱管(せきちゅうかん)というトンネルがあり、その中を神経が通っています。

腰のまわりはこのように複雑なつくりをしているため、筋肉のこり、椎間板の変化、神経の圧迫、骨のゆがみなど、痛みの原因はさまざまです。

検査でわかること・わからないこと

検査でわかること・わからないこと

腰痛の原因を調べるために、レントゲンやMRIなどの検査が行われることがあります。けれども、これらの検査には限界があります。

  • レントゲンは骨の形を映す検査です。骨折や大きなゆがみを見つけることはできますが、筋肉や神経の状態まではわかりません。
  • MRIは椎間板や骨の中身の変化を詳しく映すことができます。ただし、そこに映る変化が必ずしも「痛みの原因」とは限らないのです。

実際に、腰痛のない人でもMRIを撮ると椎間板の変性やヘルニアが見つかることがあります。一方で、強い腰痛がある人でも検査では異常が見つからないことも少なくありません。

つまり、検査の結果と痛みの強さは必ずしも一致しないのです。

「原因が特定できない腰痛」が大半

「原因が特定できない腰痛」が大半

医学的には、腰痛は大きく二つに分けられます。

  • ヘルニアや骨折、感染症など原因がはっきりわかるもの
  • そして、原因を特定できないもの

実は、腰痛の約85%は原因をはっきり特定できない腰痛なのです。

それでは、なぜ原因がはっきりしないのに強い痛みが出るのでしょうか。ここで関わってくるのが「脳」と「心の状態」です。

脳と痛みの感じ方

最近の研究では、一部の腰痛患者さんの脳の血流や働き方が変化していることがわかってきました。

痛みというのは、体のどこかで感じた刺激がそのまま伝わっているだけではありません。脳の中で「痛い」と認識されることで初めて痛みになります。そのため、同じ体の状態でも、脳の働き方によって痛みの強さが変わるのです。

心の状態が腰痛に与える影響

心の状態が腰痛に与える影響

腰痛には、恐怖、不安、悲しみといった気持ちが深く影響します。

  • 「また痛くなるのでは」という恐怖
  • 「この痛みはもう治らないのでは」という不安

こうした気持ちは筋肉のこわばりや自律神経の乱れにつながり、痛みを強くしたり、治りにくくしたりします。

さらに、心のストレスは「腰痛がない人に痛みを引き起こすきっかけ」になることもあります。つまり、心の状態は腰痛の悪化だけでなく、発症にも関わっているのです。

腰痛は自然に治ることが多いが…

多くの腰痛は、特別な治療をしなくても2か月ほどで自然に軽くなることが知られています。ところが、強い不安やストレスがあると、その回復が遅れてしまい、慢性化して長く続くことがあります。

つまり、心の状態によって治るスピードが変わるのです。

腰痛の治療 ― 体と心の両方から

腰痛の治療にはいろいろな方法があります。

  • 牽引(けんいん)療法:腰をやさしく引っ張って負担を減らす
  • 装具療法:コルセットなどで腰を安定させる
  • 温熱療法:腰を温めて血流を良くし、筋肉の緊張をほぐす
  • 運動療法:ストレッチや体操で腰まわりを強くする

これらに加えて、最近注目されているのが心へのアプローチです。カウンセリングや認知行動療法といった心理療法を取り入れると、「痛みに対する過度な不安や恐怖」を和らげることができ、治りを早めることが期待できます。

つまり、腰痛の治療では体のケアと心のケアの両方が大切なのです。

まとめ ― 腰痛は「心と体のつながり」で考える

腰痛というと「腰の問題」と思いがちですが、実際には心の状態が大きく関係しています。

  • 検査をしても原因が見つからない腰痛はとても多い
  • 脳の働き方や気持ちの状態が痛みに影響する
  • 恐怖や不安は痛みを強め、回復を遅らせる
  • 治療は体と心の両方から取り組むことが大切

このように、腰痛は体だけでなく心との関わりで生まれる症状です。痛みを感じたときには、無理をせず体をいたわることはもちろんですが、「心の緊張をやわらげる工夫」をしてみることも、回復への大切な一歩になるでしょう。