私たちの体を支える骨。その骨と骨の間をつなぎ、関節の動きを滑らかにする重要な組織が「軟骨」です。日常生活の中で「膝の軟骨がすり減る」といった言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。しかし、軟骨は一種類だけではなく、実は大きく分けて三つの種類が存在します。
今回は、それぞれの軟骨の特徴や構造、そして人間の体における役割について丁寧にご紹介していきます。

まず、軟骨は弾力性のある結合組織の一種で、骨ほど硬くはないものの、しなやかさや柔軟性を備えています。衝撃を吸収したり、関節の動きをスムーズにするなど、人体に欠かせない働きを担っています。
軟骨は大きく以下の3種類に分けられます。
このように、一口に「軟骨」といっても、部位や役割に応じて異なる性質を持つ組織が存在しているのです。

まずは最も一般的な「硝子軟骨」について詳しく見てみましょう。
関節を構成する骨の表面には、厚さおよそ5ミリから1センチ程度の硝子軟骨が覆っています。この層が「関節軟骨」と呼ばれる部分で、骨同士の摩擦を防ぎ、関節の動きを滑らかにする役割を果たします。
さらに関節全体は「関節包」と呼ばれる袋状の膜に包まれており、その内部には「関節液」が存在します。膝に水がたまる、という表現は、この関節液が増えた状態を指しています。関節液は関節の潤滑油として働き、硝子軟骨の表面を常に湿らせることで摩擦を最小限に抑えています。
硝子軟骨の内部構造を顕微鏡で観察すると、「軟骨細胞」と呼ばれる細胞が点在し、その周囲を「軟骨基質」が取り囲んでいます。軟骨基質は、軟骨細胞から分泌された成分が集まったもので、主に以下のような成分で構成されています。
これらの成分は健康食品などでも耳にする名前ですが、実際に私たちの体の中で軟骨のしなやかさや弾力を支えている重要な物質なのです。
次に「繊維軟骨」について見ていきましょう。代表的な存在は膝の半月板です。半月板は英字の「C」のような形をしており、骨と骨の間に挟まってクッションの役割を果たしています。ジャンプや走行といった衝撃を吸収し、膝関節を守るうえで欠かせない存在です。
硝子軟骨との違いは、その構造にあります。硝子軟骨がⅡ型コラーゲンを主成分とするのに対し、繊維軟骨ではⅠ型コラーゲンが中心となっています。このⅠ型コラーゲンは強度が高く、硬い性質を持っているため、繊維軟骨はより丈夫で重圧に耐えられる構造になっています。
また、含まれる水分量も硝子軟骨より少なく、より強靭なつくりとなっています。そのため、衝撃吸収や体重の分散といった「力に耐える」役割に特化しているのが特徴です。
三つ目の「弾性軟骨」は、耳介や喉頭蓋に多く存在します。耳を触ると、ある程度の硬さを持ちながらも、押せばしなやかに変形し、手を離すと元の形に戻ります。まさに弾力性のある軟骨の代表です。
弾性軟骨は、基本的な成分は硝子軟骨と同じですが、そこに「弾性線維」と呼ばれる特殊な繊維が多く含まれています。この繊維があることで、柔らかさと形の保持という相反する性質を同時に実現しているのです。
耳や喉といった部位は、形を維持しつつ柔軟に動く必要があるため、この弾性軟骨が最適な構造となっています。

ここまで種類ごとの違いを見てきましたが、軟骨全体に共通する特徴も存在します。大きなポイントは次の三つです。
軟骨は単なる「関節のクッション」ではなく、硝子軟骨・繊維軟骨・弾性軟骨という三種類に分かれ、それぞれの部位に適した性質を持っています。
このように、多様な性質を持つ軟骨が私たちの体を支えているのです。
一方で、血流が乏しく再生が難しいという弱点もあるため、軟骨を守る生活習慣や研究の進展が今後ますます重要になってくるでしょう。
日常的には意識することの少ない軟骨ですが、改めてその奥深さを知ることで、体の仕組みへの理解が一層深まるのではないでしょうか。