医療と介護は、どちらも人の健康や生活を支える大切な制度ですが、その目的や役割には大きな違いがあります。医療は主に「病気やけがを治すこと」に焦点を当てた仕組みであり、病院や診療所などで医師を中心に行われます。一方で介護は、病気やけがの治療そのものではなく、加齢や障害などによって身体が不自由になった方々が、できる限り自分らしく生活を続けられるように支援する仕組みです。つまり、医療が「治す」ための行為であるのに対し、介護は「支える」ための行為と言えるでしょう。
この記事では、介護制度の仕組みやサービスの種類、公的・民間の介護施設について詳しくご紹介します。
介護保険制度では、介護が必要となった高齢者や障害者の状態を「要支援1~2」「要介護1~5」という7段階に分けています。数字が小さいほど軽度であり、数字が大きいほど重度で、寝たきりに近い状態を指します。
要支援
比較的軽度の状態で、自立した生活は概ね可能ですが、放っておくと要介護に移行する可能性がある方が対象です。この段階では「介護予防」が重視され、日常生活に支障が出ないようサポートを受けながら自立を保ちます。
要介護
日常生活において介助が必要な状態です。要介護1から徐々に重くなり、要介護5になるとほぼ寝たきりの状態になります。この段階では、生活のさまざまな場面で介護士や看護師の支援を受けることになります。
国は介護サービスを受ける際の費用を一部負担しており、介護度に応じておおよそ月5万円から30万円程度が支給されます。これにより、利用者の経済的な負担を軽減しながら、必要な介護を受けられる仕組みが整っています。
介護予防を目的とした代表的な取り組みが「デイサービス」です。利用者は自宅から施設へ通い、体操や運動、趣味活動などを通じて心身を活性化させます。看護師や介護士、生活相談員が中心となり、楽しみながら健康を維持することを目指します。
一方で「デイケア」と呼ばれる仕組みもあります。これは医療機関が主体となり、医師やリハビリ専門職が関わるリハビリ中心のサービスです。デイサービスが介護に位置づけられるのに対し、デイケアは医療の一環といえます。数は少ないものの、身体機能の改善を目的とした重要な役割を担っています。

介護保険法に基づく公的施設には、主に以下の3種類があります。
特別養護老人ホーム(特養)
要介護3以上の高齢者が対象。
社会福祉法人や地方公共団体が運営。
入居希望者は多く、待機者が多数いることが社会問題となっています。
介護老人保健施設(老健)
医療と介護、リハビリを組み合わせた中間施設。
在宅復帰を目指すリハビリを行い、自宅生活への移行を支援します。
介護医療院
医療的ケアが必要な重度の高齢者や認知症高齢者が対象。
長期療養や終末期のケアを担います。
介護と医療の両面からサポートを受けられる施設です。

民間の施設は多様化しており、入居者のニーズや状態に応じて選択肢が広がっています。
介護付き有料老人ホーム
食事や入浴、排泄の介助に加え、レクリエーションや外出活動も提供。介護度が上昇した場合には退去が必要になるケースもあります。
住宅型有料老人ホーム
生活支援や見守りサービスが中心で、必要に応じて外部の介護サービスを利用します。比較的自立した生活が可能な方に向いています。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
バリアフリー構造の住宅に、食事提供や安否確認などのサービスが付いた形態。介護というよりは「高齢者が安心して暮らせる住まい」という位置づけです。
実際に介護サービスを利用する方々の声を拾うと、その価値と課題の両方が浮かび上がってきます。
80代女性・要介護2/デイサービス利用
「自宅にいると一日中テレビばかり。でもデイサービスに行けば友達と話せて笑える。体操もあるから、少しは元気になった気がします。」
70代男性・要支援1/サ高住入居
「一人暮らしだと倒れた時が心配だった。ここではスタッフが毎日声をかけてくれるから安心。食事も助かる。」
家族の声(50代女性/母が要介護4)
「在宅介護は限界があり、特養に入居できて本当に助かりました。ただ、入居までに2年近く待ったのは大変でした。」
これらの声からは、介護サービスが心身の支えとなる一方で、施設不足や待機問題が深刻であることがうかがえます。
介護制度は充実しているように見えて、現場では多くの課題を抱えています。
人材不足
介護士や看護師の不足は深刻で、特に地方では採用が難しい状況が続いています。
待機者問題
特養など人気の公的施設は入居待ちが長期化し、必要な人がすぐに入れない現実があります。
家族の負担
在宅介護では身体的・精神的負担が大きく、介護離職に至る人も少なくありません。
地域格差
都市部と地方では介護施設の数やサービスの質に差があり、選択肢が限られる地域もあります。
こうした課題に対して、国や自治体、そして民間が取り組むべき方向性も見えてきています。
人材確保
外国人介護士の受け入れや、介護職の待遇改善が進められています。ICTやロボット技術の導入により、業務効率化も期待されています。
地域包括ケアシステムの推進
医療と介護を一体的に提供し、住み慣れた地域で最期まで暮らせる体制づくりが進められています。
多様な住まい方の支援
サ高住や住宅型ホームなど、施設と在宅の中間的な住まいの整備が進んでいます。
家族支援の強化
介護休業制度の利用促進や、家族への相談支援体制の拡充も重要です。
日本は急速な高齢化社会を迎えており、介護のニーズは年々高まっています。しかし、特養や老健などの公的施設は不足しており、待機者問題は解決していません。さらに介護士や看護師といった人材不足も深刻化しています。
その一方で、民間施設や地域のデイサービス、在宅介護支援など、多様なサービスが拡充され、利用者や家族の選択肢は広がっています。今後は「医療と介護の連携」「予防重視の取り組み」「ICTの活用による効率化」などが、介護制度の持続性を支えるカギとなるでしょう。

医療と介護は似ているようで役割が大きく異なり、介護は「生活を支える仕組み」として欠かせない存在です。要支援から要介護までの段階に応じて、多様なサービスが提供され、公的・民間の施設や在宅支援を通じて高齢者の暮らしを支えています。
介護を必要とする人にとって大切なのは、「安心して自分らしい生活を続けられること」。そのために社会全体で支える仕組みが整えられているのです。