私たちの身体を支える骨は、年齢や生活習慣、運動の仕方などによって少しずつ変化していきます。その変化の一つとして「骨棘(こつきょく)」と呼ばれる現象があります。文字通り「骨のとげ」と書きますが、その名前から「とても痛そう」「危険なものなのでは」といったイメージを持つ方も少なくありません。
しかし実際には、骨棘そのものは痛みを伴わないことが多く、むしろ「年齢や負担の結果として現れる骨の変化の一つ」と捉えるのが正しい理解です。
本記事では、骨棘がどのような場所にできるのか、なぜ生じるのか、そして痛みとの関係について、丁寧に解説していきます。

骨棘(こつきょく)とは、骨の表面に“とげ”のように突き出した部分が形成される状態を指します。レントゲン写真で観察すると、本来は滑らかに見える骨の端に、小さな突起物が写し出されるのです。
骨棘は決して珍しいものではなく、中高年以降の方のレントゲンではしばしば見られます。首(頸椎)や膝、踵(かかと)など、日常的に負担がかかる場所でよく見られるのが特徴です。

まず代表的な例が「頸椎(けいつい)」です。頸椎とは首の骨のことで、7つの椎骨が積み重なるように並び、頭を支えています。
若いうちは骨の形が整っており、横から見ると四角い形に近い輪郭をしています。しかし、年齢を重ねるにつれて椎骨の縁が少しずつ変形し、横に突き出すような部分が現れてきます。これが頸椎に生じる骨棘です。
特にデスクワークが多く、首に長時間負担をかける方に多く見られます。とはいえ、この骨棘自体が首の痛みを直接引き起こすわけではない点に注意が必要です。

骨棘は首だけでなく、膝関節にもよく生じます。膝は体重を支えながら曲げ伸ばしを繰り返す関節であり、非常に大きな負担がかかる場所です。
膝関節では、特に体重がかかりやすい内側に近い部分に骨棘が出やすい傾向があります。これは直接的に体重がかかる部分ではなく、そのすぐ横に骨の突起が生じるという点が特徴です。つまり、力が集中する部位の“近く”に骨棘が出るのです。
もう一つ有名なのが「踵骨棘(しょうこつこつきょく)」です。踵の裏側、足底にできる骨棘で、レントゲン写真では棘のような突起がはっきりと確認できます。
足は本来、アーチ状の構造をしています。このアーチを支えているのが「足底筋膜(そくていきんまく)」と呼ばれる強い組織です。足底筋膜は弓の弦のようにピーンと張り、踵と前足部を結んでいます。
この足底筋膜が繰り返し引っ張られることで、その付着部である踵の骨に負担がかかり、結果として骨棘が形成されます。同様に、アキレス腱の付着部でも引っ張りの力が働くため、骨棘が生じることがあります。
骨棘ができる仕組みには、大きく分けて2種類あります。
つまり、「圧力による骨棘」と「牽引による骨棘」の2パターンがあるのです。
「骨にとげがある」と聞くと、多くの方は「そのとげが刺さって痛いのでは」と想像されるかもしれません。しかし、骨棘そのものは痛みを生じないのが一般的です。
たとえば踵の場合、足底に痛みを訴える方がレントゲンを撮ると、たまたま骨棘が写っていることがあります。このとき患者さんは「このとげが痛みの原因ですか?」と質問されるのですが、実際にはそうではありません。
痛みの主な原因は、骨棘ではなく、足底筋膜や腱にかかる負担による炎症です。つまり、骨棘は「結果として現れた構造的な変化」であり、痛みの直接的な発生源ではないのです。
このため、骨棘を手術で取り除く必要は基本的にありません。むしろ、靴の中敷きを工夫したり、ストレッチや炎症を抑える治療を行うことで症状が改善するケースが多くあります。

最後に、骨棘に関するポイントを整理しておきましょう。
骨棘は、加齢や負担の積み重ねによって誰にでも起こり得る変化であり、特別に恐れるものではありません。むしろ「骨が身体にかかる力に適応した結果」とも言えます。
もしレントゲンで骨棘が見つかったとしても、痛みがなければ気にする必要はありませんし、痛みがある場合でも、その原因が別の組織にある可能性が高いことを知っておくことが大切です。
骨棘は「骨のとげ」という名前から、どうしても痛みや不安と結びつけられがちです。しかし実際には、棘そのものは痛みを伴わず、日常生活に支障をきたさないことがほとんどです。
大切なのは、骨棘という現象を正しく理解し、必要以上に恐れないこと。そしてもし痛みがある場合は「棘のせいではないかもしれない」と視野を広く持ち、適切な治療を受けることです。
年齢とともに誰にでも現れる骨の変化のひとつとして、骨棘を正しく理解していただければと思います。