私たちが日常生活を送る中で、突然のケガや慢性的な痛みに悩まされることは少なくありません。特に骨や関節に関わる整形外科のトラブルは、誰にでも起こり得るものです。しかし、そのような症状が出たときに「すぐ大病院に行くべきなのか」「まずは近くのクリニックに行くべきなのか」と迷う方は多いのではないでしょうか。ここでは、大病院を受診するべき場合と、地域のクリニックを利用したほうが効率的な場合について整理し、日本の医療システムの仕組みを踏まえながら解説します。

整形外科で扱う症状の中でも、事故や転倒による骨折、出血を伴う外傷など、急を要するケースがあります。この場合は大きく2つに分けて考えると分かりやすいでしょう。
(1)自力では動けず、人の助けを借りないと移動できない場合
自分一人では歩けず、人に抱えられたり肩を貸してもらわなければ動けないほどの状態であれば、迷わず救急車を呼ぶべきです。救急病院には24時間体制で医師が待機していますが、必ずしも整形外科医が当直しているとは限りません。多くの場合、外科系あるいは内科系の当直医が対応しており、その中に整形外科医が含まれているかどうかは病院ごとに異なります。
整形外科医が不在の場合、救急対応として止血や傷口の縫合といった応急処置は受けられますが、骨折そのものの治療方針まで決められないことも少なくありません。それでもまず命や機能を守るためには救急搬送が必要です。
(2)人の助けを借りれば何とか移動できる場合
たとえ骨折や強い痛みがあっても、他人の支えがあれば自力でクリニックまで行ける場合は、まず近隣の整形外科クリニックを受診するのが効率的です。そこで診察や画像検査を受け、手術や高度な治療が必要と判断された場合に、大病院を紹介してもらう流れになります。
「二度手間になるのでは」と心配される方もいますが、実際にはこれが最も無駄のない受診方法です。クリニックで状況を見極めてもらい、必要があれば適切な病院へスムーズに紹介してもらえるためです。

慢性的な腰痛や膝の痛み、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)といった症状は、多くの方が経験するものですが、これらは基本的に緊急性を要しません。そのため、まずは地域の整形外科クリニックで診察を受けることが推奨されます。
近隣のクリニックでも、整形外科の医師は専門的な診断・治療を行うことができます。必要な検査や一般的な治療(薬物療法、リハビリ、注射など)は十分対応可能です。こうした身近なクリニックを最初に受診することが効率的である背景には、「病診連携」という日本独自の医療システムがあります。

病診連携とは、大病院(病院)と地域のクリニック(診療所)が連携し、それぞれの役割を分担する仕組みです。分かりやすく言えば「地域医療のネットワーク」であり、日本全国に広がっています。
この仕組みにより、患者さんはまず地域のクリニックで診察を受け、クリニックで対応困難な症例のみを大病院に紹介してもらう流れになります。大病院は専門的治療や手術といった高度医療に集中でき、クリニックは日常的な診療を担うことで効率的な医療が提供されているのです。
ただし、大病院であってもそれぞれ得意分野があります。特殊な治療が必要な場合には、その分野に特化した専門病院へ直接紹介してもらえることもあります。地域のクリニックの医師はその情報を熟知しているため、適切な病院へスムーズに繋いでくれるのです。

大病院で手術を受けた後の流れについても理解しておくと安心です。大病院は「急性期病院」と呼ばれ、主に手術や集中治療など短期的かつ集中的な医療を担っています。そのため、入院期間は比較的短く設定されており、骨が完全に癒合するまで長期間入院することは難しいのが実情です。
そこで登場するのが「回復期リハビリテーション病院」です。大病院と連携するこれらの病院では、手術後の患者さんが日常生活に戻れるよう、集中的なリハビリが行われます。朝から夕方までリハビリに専念できる環境が整っており、歩行訓練や筋力強化などを徹底的に行います。最終的に自宅で生活できるレベルまで回復した段階で、退院となります。
このように、大病院から回復期病院、そして自宅へと戻るまでの流れが全国的に整備されており、患者さんが安心して治療と社会復帰を進められるようになっています。
整形外科のトラブルに直面した際、大病院に行くべきか、それとも地域のクリニックに行くべきかを正しく判断することは、効率的かつ安心できる医療を受けるために重要です。
そして、クリニックと大病院を結ぶ病診連携の仕組みを理解することで、無駄のない受診が可能となります。さらに、手術後には回復期リハビリ病院へと繋がるシステムも整っており、治療から社会復帰まで一貫した流れが確立されています。
「とりあえず大病院へ」と考えるのではなく、まずは地域の医療資源を活用し、必要に応じて大病院や専門病院に紹介してもらう。この流れこそが、現代日本の医療システムを最大限に活かす賢い受診方法といえるでしょう。