ばね指の話

指がカクンと引っかかる「ばね指」とは?

指がカクンと引っかかる「ばね指」とは?

皆さんは「ばね指」という言葉を聞いたことがありますか?
あまり耳慣れない名前かもしれませんが、実は身近に起こる指のトラブルのひとつです。特に手をよく使う方や中高年の方に起こりやすいと言われています。今回は、この「ばね指」について、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

指はどうやって動いているの?

まずは人間の指がどうやって動いているのかを簡単に整理しましょう。

人間の体は骨が動くことで姿勢を変えたり手足を動かしたりしています。その骨を動かすためには筋肉が必要です。筋肉が縮んだり伸びたりすることで骨が引っ張られて動きます。

では筋肉と骨はどうやってつながっているのでしょうか。そこで登場するのが「腱(けん)」です。腱は硬いひもやロープのような組織で、筋肉と骨をつないでいます。たとえば腕の力こぶを想像してください。ダンベルを持ち上げるとき、力こぶが盛り上がりますよね。これは筋肉が縮んでいる状態です。その縮む力を骨に伝えているのが腱なのです。

実は、指を動かす筋肉は指そのものにはありません。腕のやや下の部分にあって、そこから細長い腱が指先まで伸びて、骨を引っ張ることで指を動かしているのです。これはまるで操り人形と同じ仕組みです。糸を引っ張ると人形の腕や足が動きますよね。この糸が腱の役割を果たしていると考えるとイメージしやすいでしょう。

腱を守る「鞘(さや)」の存在

指の動きに欠かせないもう一つの存在が「鞘(さや)」です。腱はただ骨の上を滑っているだけではなく、ところどころで筒のような鞘に包まれています。この鞘があるおかげで、腱は骨に沿うように滑らかに動くことができます。

釣りをされる方なら、釣り竿の糸を通すリングを思い浮かべてください。糸を竿の途中の輪っかに通すことで、竿に沿って糸がきれいに動きます。もし輪っかがなければ糸はだらんと垂れ下がり、うまく竿に沿って動きません。指の腱と鞘の関係もこれとよく似ています。

この鞘があるからこそ、腱は骨に寄り添いながらスムーズに動き、指が自在に曲げ伸ばしできるわけです。

ばね指で起こること

ばね指で起こること

さて、ここからが本題です。ばね指とは、この鞘にトラブルが起きた状態を指します。

鞘は本来、腱が通るためのトンネルのような役割を果たしています。しかし、何らかのきっかけで鞘が厚くなり、トンネルが狭くなってしまうことがあります。そうすると中を通る腱がうまく滑らず、引っかかってしまうのです。

指を曲げるときには腱が引っ張られて動きますが、その途中で引っかかると「カクン」と止まってしまい、なかなか伸ばせなくなります。そして、ある瞬間に力が抜けるようにパチンと伸びる――これが「ばね指」という名前の由来です。まるで指にバネが入っているかのように動くことから、このように呼ばれているのです。

特徴的なのは、指を深く曲げた状態から少し伸ばそうとしたときに引っかかるという点です。完全に曲げたところから自力で伸ばそうとすると動かなくなるのですが、もう一方の手で少し補助してやると、突然カクンと外れて伸びることがあります。これがばね指特有の動きです。

どの指に起こるの?

ばね指はどの指にも起こる可能性があります。親指から小指まで、すべての指の付け根近くにそれぞれ鞘があり、その部分で起こるのです。逆に、手の甲側の腱には鞘がないため、甲側ではばね指は起こりません。必ず手のひら側に限られるのです。

また、起こりやすい場所も決まっており、指の股から少し手のひら側に入ったあたりが典型的なポイントです。そこを押すと痛みを感じることもあります。

どうして起こるの?

原因は腱と鞘の間で起こる摩擦です。手を使うたびに腱が鞘の中を滑りますが、そこで負担がかかると炎症が起き、鞘が厚くなってトンネルが狭くなります。これがばね指の基本的な仕組みです。

最初は痛みが強く、物を握ったり手を使うのがつらい時期があります。その後、痛みは落ち着いてくることもありますが、代わりに指が引っかかる感覚だけが残ることがあります。さらに時間が経つと、その引っかかりすらなくなり、元通り動かせるようになる場合もあります。

ばね指は自然に治るの?

実は、ばね指の多くは自然に治ってしまうことが知られています。全体の9割以上の人は数か月ほどで症状が和らぎ、やがて通常通り指を動かせるようになります。

ただし、その間は痛みや不便さを抱えることになるため、生活に支障を感じる方も少なくありません。そのような場合には、痛みを和らげる注射や、腱の動きを助けるリハビリが行われることもあります。

一方で、残り1割ほどの人はなかなか自然に治らず、症状が長引くことがあります。その場合には手術が検討されます。

手術といっても大げさではない

手術といっても大げさではない

「手術」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、ばね指の手術は比較的簡単です。指の付け根を1〜2センチほど切り、狭くなった鞘の部分を少し切り開いて広げるだけです。時間にして15分程度で終わり、入院の必要もありません。

鞘を広げても、最終的には自然に再生して元通りになりますし、指の動きに影響が残ることもほとんどありません。ですから、手術になった場合でも過度に不安を抱く必要はないでしょう。

まとめ

ばね指とは、指を動かすための「腱」とそれを包む「鞘」に起こるトラブルです。

  • 指を深く曲げたところから伸ばそうとすると引っかかる
  • 力を入れると「カクン」とばねのように外れて一気に伸びる
  • 痛みは初期に強く、その後は引っかかり感だけが残ることが多い
  • 9割以上は自然に治るが、治らない場合は簡単な手術で改善できる

身近な人や自分自身に起こることもある症状です。もし「最近指がカクンと引っかかるな」と思ったら、それがばね指かもしれません。多くは自然に治りますが、無理に手を使いすぎず、必要に応じて医師に相談することも大切です。

ばね指は怖い病気ではなく、体が自分を守ろうとする中で起こるちょっとしたトラブルのようなもの。仕組みを知っておくだけでも安心して向き合うことができるでしょう。