犬の嗅覚で「乳癌」を正確に診断:乳がん探知犬の研究結果

犬の嗅覚で乳がんを見つけるというお話

犬の嗅覚で乳がんを見つけるというお話

みなさんは「がん探知犬」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
犬の嗅覚が人間よりもはるかに優れていることは広く知られています。散歩の途中で地面のわずかな匂いを嗅ぎ分けたり、落ち葉の下に隠れたおやつをすぐに見つけたりする姿は、犬を飼った経験のある方ならご存じかと思います。そんな犬の驚異的な嗅覚を、人間の病気の発見に役立てようとする取り組みが世界各地で行われてきました。その一つが「がん探知犬」です。

がん探知犬とは何か

がん探知犬とは何か

がん探知犬とは、人の体から発せられる特有の匂いを嗅ぎ分けて、病気の可能性を知らせてくれるよう訓練された犬のことです。具体的には、尿や吐いた息の中に含まれる「がん特有の匂い」を識別できるように育てられます。こうして訓練を受けた犬は、匂いの違いを敏感に感じ取り、がんの早期発見に役立てられてきました。

少し前にテレビや新聞でも取り上げられ、話題になったことがあります。山形県館山市にある「セントシュガージャパン」という施設では、佐藤さんというトレーナーが中心となり、実際にがん探知犬の育成を行っています。現在、日本国内で活動しているがん探知犬はわずか数頭に限られていますが、その働きは大きな注目を集めています。

驚きのニュース「乳がんを100%見分けた」

先日、このがん探知犬に関して非常に驚くべきニュースが報じられました。なんと、犬が尿の匂いだけで「乳がん」を100%の精度で見分けることに成功したというのです。今までは「がん全般を嗅ぎ分けられる」とされていましたが、今回は乳がんに特化した成果が報告されました。まさに「乳がん探知犬」と呼べる存在です。

この成果は2021年6月、海外の学術誌に発表されました。そこで報告された実験の概要を簡単に紹介しましょう。

実験の内容

実験に使われたのは、9歳になる雌のラブラドール・レトリバーでした。対象となったのは200人分の尿のサンプルです。その内訳は、乳がんと診断された40人(早い段階のものも含まれていました)、乳がん以外のがんを持つ142人(胃や子宮、大腸、卵巣など様々)、そして健康な18人でした。

訓練の流れはこうです。まず犬に乳がん患者の尿を嗅がせ、乳がんの匂いを覚えさせます。その後、複数のサンプルを並べた箱の前を通らせます。乳がんの匂いを感じなければ通り過ぎ、もし乳がんの匂いを感知した場合には、その場でお座りをして知らせる、という仕組みです。

この方法で行われた試験は40回。しかも研究者やトレーナー自身もどのサンプルが正解かわからない「二重盲検」という厳密な方法でした。その結果、犬は40回すべてで乳がん患者のサンプルを正確に選び出したのです。つまり成功率は100%。他のがんとの違いも正しく嗅ぎ分けることができました。

この成果から、「乳がんには他のがんとは異なる特有の匂い物質が存在する」ことが証明されたと言えます。

今後の可能性

もちろん、現段階では犬が中心となって働いていますが、研究者たちはいずれ機械やセンサーでこの匂い物質を検出できるようにしたいと考えています。もし人間の息や尿からごく早い段階で乳がんを発見できる技術が確立されれば、負担の少ない検査法として広く使えるようになるでしょう。

実際に受けられる「がん探知犬検査」

実際に受けられる「がん探知犬検査」

実は、このがん探知犬による検査はすでに一部で利用できます。全国およそ40か所の医療機関と提携しており、希望すれば検査を受けることが可能です。また「ドッグラボ」という団体のホームページからも申し込みができ、息を袋にためて郵送するだけで検査が受けられる仕組みも用意されています。

料金は1回38,000円とやや高めですが、年に1回の定期契約にすると割引になるそうです。検査結果は「がんの可能性があるかどうか」を知らせてくれます。対象は肺や胃、大腸、肝臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮、卵巣、白血病など幅広い種類で、乳がんも含まれています。ただし、どの部位のがんなのかまではわかりません。「がんの可能性あり」と出た場合には、必ず病院で詳しい検査を受ける必要があります。

メリットと注意点

がん探知犬による検査は、手軽で痛みもなく、精度も高いという点で魅力的です。定期的な健康チェックの入り口として活用できれば、多くの人の命を救える可能性があります。

ただし注意点もあります。もし検査で「がんの可能性あり」と出ても、その後の精密検査で何も見つからない場合、不安な気持ちを抱え続けることになってしまいます。逆に「がんの可能性なし」と出ても、100%安心できるわけではありません。あくまで補助的な方法であることを理解して利用する必要があります。

まとめ

犬の嗅覚は、人間の想像をはるかに超える力を秘めています。がん探知犬が乳がんを100%の精度で見分けたというニュースは、医療の未来を感じさせる大きな一歩です。今はまだ犬に頼る段階ですが、将来的には犬の鼻に代わる機械やセンサーが開発され、誰もが気軽に受けられる検査法になるかもしれません。

がんは早く見つければ見つけるほど治療の選択肢が広がります。定期検診やセルフチェックに加えて、このような新しい技術が広がっていくことで、多くの人の安心と健康が守られていくことを願いたいと思います。