【体幹筋】 体感を鍛える筋肉の場所を解説

はじめに

人間の体には数え切れないほど多くの筋肉が存在します。日常生活の動きからスポーツパフォーマンス、さらには健康維持に至るまで、筋肉の働きは欠かせません。これまでさまざまな筋肉や筋トレ方法について解説されてきましたが、今回は特に注目度の高い「体幹筋」について丁寧にご紹介していきたいと思います。

最近では、テレビや雑誌、インターネット上で「体幹を鍛える」「体幹トレーニング」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし実際には、「体幹筋」という名前の筋肉は存在しません。この点が意外に知られておらず、多くの方が誤解しがちな部分です。では「体幹」とは何を指し、どの筋肉を鍛えることが体幹トレーニングになるのでしょうか。本記事では、人体の構造を踏まえながら、体幹筋の正しい理解を深めていきます。

人体の断面から見た筋肉と内臓の位置関係

人体の断面から見た筋肉と内臓の位置関係

まず、人間の胴体部分を断面で見てみましょう。体の前面には腹筋群があり、背面には背筋群が位置しています。その間には内臓が収まっています。内臓の断面図を見ると、腸はドーナツ状の輪切りのように映り、中央には動脈や静脈が小さな丸い断面として確認できます。そのすぐ後ろには腰椎(腰の骨)があり、骨格を支えています。

ここで多くの方が「内臓の中に体幹筋があるのではないか」とイメージするかもしれません。しかし実際には、内臓の中に「体幹筋」と呼べるような筋肉は存在しないのです。内臓を通って走っている筋肉は「腸腰筋(ちょうようきん)」だけです。

腸腰筋とは何か

腸腰筋は、大腰筋と腸骨筋から構成され、骨盤の奥を走る重要な筋肉です。腸腰筋の下端は大腿骨に付着しており、主な役割は股関節を曲げること、すなわち脚を持ち上げる動作を助けることです。そのため腸腰筋は「歩く・走る・階段を上る」といった日常動作に欠かせない筋肉です。

ただし、腸腰筋は体幹を安定させるための筋肉ではありません。あくまで股関節の運動に関わる筋肉であり、「体をしっかり支える筋肉」というイメージとは少し異なります。この点を誤解しないようにすることが大切です。

本当の意味での「体幹」とは

本当の意味での「体幹」とは

それでは「体幹」とは何を指すのでしょうか。一般的に体幹という言葉は、内臓の奥にある特別な筋肉を意味するのではなく、腹筋群と背筋群の総称を表しています。

腹筋群

腹筋と聞くと「シックスパック」で知られる腹直筋を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし腹筋群はそれだけではありません。以下の4つの筋肉から構成されています。

  • 腹直筋:お腹の正面に縦に走る筋肉。体を前に曲げる動作に関与。
  • 外腹斜筋:体の側面にある筋肉。体をひねったり、横に倒す動作を担当。
  • 内腹斜筋:外腹斜筋の内側にある筋肉。同じくひねる動作に関与。
  • 腹横筋:お腹をコルセットのように覆う深層の筋肉。内臓を支え、姿勢を安定させる働きがある。

背筋群

一方、背中側にはいくつかの筋肉が層をなして存在し、総称して「背筋」と呼ばれます。背筋群は姿勢の保持、背骨の安定、体を後ろに反らす動作などに関与します。代表的なものには脊柱起立筋群があります。

この腹筋群と背筋群こそが、実際に「体幹を支える筋肉」として機能しているのです。

体幹トレーニングの本質

体幹トレーニングの本質

「体幹トレーニング」とは、特別な筋肉を鍛えることではなく、腹筋群と背筋群をバランス良く鍛え、体を安定させる力を高めるトレーニングを意味します。例えばプランク、腹筋ローラー、バックエクステンションといった種目は代表的な体幹トレーニングです。

体幹を鍛えることによって、次のような効果が期待できます。

  • 姿勢が安定し、腰痛予防につながる
  • スポーツでのパフォーマンス向上(体の軸がブレにくくなる)
  • 呼吸や内臓機能のサポート
  • 日常生活動作の効率化

つまり体幹トレーニングは、健康づくりにも競技力向上にも欠かせない基盤づくりだと言えるでしょう。

日本文化における「体幹」という言葉の背景

日本では「体幹」という言葉に特別な意味合いが込められてきました。実際、体幹という概念は古武術などの中で2000年以上前から使われており、「体の中心を安定させること」が武術の極意と考えられてきました。

また「丹田(たんでん)」という言葉もよく知られています。丹田はおへその下あたりを指し、人間のエネルギーの中心とされてきました。この丹田を意識する考え方は、呼吸法や瞑想、武術などに取り入れられています。

このように、日本人は古来から「体の中心=体幹」を大切にしてきた歴史があり、その精神が現代の体幹トレーニングという言葉にもつながっているのです。

まとめ

ここまで解説してきたように、実際には「体幹筋」という名前の筋肉は存在しません。内臓の奥に特別な筋肉があるわけではなく、体を支えるのは腹筋群と背筋群です。そして、これらを総合して鍛えることが「体幹トレーニング」と呼ばれているのです。

体幹を強化することは、姿勢や動作の安定、健康維持に直結します。さらに日本の文化的背景を踏まえると、「体幹を整える」という考え方は古くから人々の生活や精神性に根付いていたこともわかります。

現代においても、体幹を意識したトレーニングは、健康を守り、生活を豊かにし、スポーツのパフォーマンスを高めるための大きな鍵となります。これから筋トレを始める方も、すでに取り組んでいる方も、「体幹」という言葉の本当の意味を理解したうえで、バランスよく鍛えていくことをおすすめします。