肋骨の痛みの話

肋骨の痛みについて

肋骨の痛みについて

今回は「肋骨の痛み」をテーマに取り上げます。外来診療をしていると「胸が痛い」と訴える方が少なくありません。胸の痛みというと、まず多くの方が心臓の病気を連想され、不安を抱いて受診されることが多いのですが、実際には肋骨が原因となっているケースも意外と多くみられます。

胸部にはいくつかの重要な臓器や組織が収まっています。代表的なのは 心臓・肺・食道・肋骨 の4つです。心臓は生命に直結する臓器であるため、胸痛があると「心臓の病気ではないか」と考えるのは自然なことです。しかし、胸の痛みがすべて心臓から来ているわけではなく、肋骨の異常で痛みを感じていることもあります。今回は、その「肋骨由来の痛み」に焦点を当てて解説していきます。

肋骨が原因かどうかの見分け方

胸の痛みの原因が心臓や肺、食道なのか、それとも肋骨なのか。これは診察によってある程度判断することができます。特徴的なのは「圧痛」です。

肋骨の異常による痛みでは、医師が患部を押さえることで痛みが再現されやすくなります。これに対して、心臓や肺の痛みでは押しても痛みが強くなることはあまりありません。この違いを確認することで、肋骨が原因なのかどうかを見分けられるのです。

肋骨に痛みが生じる代表的な原因

肋骨に痛みが生じる代表的な原因

肋骨の痛みにはいくつかの要因があります。主なものを3つご紹介します。

1)肋骨骨折・肋軟骨骨折

肋骨は胸郭を形づくり、後方から前方にかけて弓状に並んでいます。前方の一部は「肋軟骨」という柔らかい組織でできており、それ以外は骨で構成されています。

肋骨骨折というと、転倒や事故で胸を強打して起こるイメージが強いかもしれません。しかし実際には、強い咳やくしゃみだけでも骨折することがあります。 咳やくしゃみの際には肋間筋が急激に収縮し、その力で肋骨に大きな負荷がかかるためです。骨がもともと弱っている方や細身の女性などでは、外傷がなくても骨折を起こすことがあります。

治療の流れ

骨折直後の3週間ほどは強い痛みが続きます。この期間は、折れた側の腕の使用をなるべく控えることが勧められます。日常生活でも、ヤカンや洗面器を持つときには反対の手を使うといった工夫が必要です。

また、痛みを和らげる目的で「バストバンド」と呼ばれる固定具を胸に巻くことがあります。これは胸部の動きを制限し、呼吸で骨が大きく動かないようにして痛みを軽減する方法です。骨の癒合にはおよそ2か月を要しますが、3週間を過ぎれば痛みはかなり落ち着いてきます。完治までの間は、激しい運動や強い衝撃を受ける行為は控えることが望ましいでしょう。

2)肋軟骨の骨化

次に挙げられるのは「肋軟骨の骨化」です。これは中高年の方に多くみられる現象で、年齢とともに肋軟骨が骨へと変化していく過程で痛みが出るものです。

この痛みは、外傷がなくても自然に生じます。数か月続くこともありますが、最終的には自然に治まるのが特徴です。治療は湿布や鎮痛薬で症状を和らげながら経過を観察する形になります。骨折ではないため、体の動きを特に制限する必要はありません。

3)肋軟骨炎(ティーツェ病)

比較的珍しい原因として「肋軟骨炎(ティーツェ病)」があります。肋軟骨に原因不明の炎症が起きるもので、特に30~50代の女性に多く見られます。

炎症のために局所が腫れたり痛んだりしますが、数週間から数か月のうちに自然に改善することがほとんどです。胸の痛みがあると心臓疾患を疑って来院される方も多いのですが、この病気は生命に関わることはありません。治療は消炎鎮痛薬の使用や安静が中心で、経過とともに症状は軽快していきます。

おわりに

おわりに

胸の痛みはとても不安を招く症状ですが、その原因はさまざまです。特に肋骨由来の痛みは、押すと痛みが強くなる「圧痛」があることで比較的容易に見分けることができます。

・肋骨骨折・肋軟骨骨折:外傷だけでなく咳やくしゃみでも起こる

・肋軟骨の骨化:中高年に多く、時間とともに自然に軽快する

・肋軟骨炎(ティーツェ病):原因不明の炎症だが一時的で自然に治まる

強い痛みや長引く症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診することが重要です。胸の痛みの背景を理解しておくことで、過度に不安にならず、適切に対応できるようになるでしょう。